あヴぁんだんど 2015.02.11 @ 新宿Marz


セットリスト:

1.あヴぁんだんど
2.文鳥
3.電波ジャック(パスピエカバー)
4.DBxPG
5.ミッドナイト清純異性交遊(大森靖子カバー)
6.てのひら


客電が落ちるとメンバー登場、それぞれのお顔がテーマカラーと共にプリントされた白地のTシャツをまとって。紫が東雲好さん、水色が星なゆたさん、ピンクが南実あんずさん、イエローが小日向夏季さん、赤が宇佐蔵べにさんです(以下、各自をファーストネームでお呼びすることといたします)。べにさんはスカートにTシャツをインしているため一人だけ別のTシャツのように見えましたが後のMCの際にお顔のTシャツと判明します。裾をアウトするとスカートに合わないのだとか。そのスカートも赤、ランドセルも赤、ソックスも赤、室内履きにも差し色に赤、ツインテール。好さんはブラウンのショート、なゆたさんは金髪を頭頂部でまとめて、あんずさんは軽く縦ロールを掛けたロングに小さな髪飾り、夏季さんもショートですが黒髪。
このグループに於いてランドセルはべにさんのトレードマークなのですがなぜか今日はなゆたさんもランドセルを背負って登場、べにさんの赤に対してこちらは黒です。一曲目の「あヴぁんだんど」がなゆたさんの「サンキュー」で終わると「黒べに、黒べに」と叫んでいたところをランドセルのキャラクターを取られた!とべにさんが受けますがこのお二人は仲良しみたいですね。パフォーマンスのずっと後の方になりますが、ダウンしてステージにあおむけに寝たべにさんになゆたさんがペットボトルの水を口に含んで吹きかけて目を覚まそうとするシーンがありましたけれどそんな情景も仲の良さを示すものだったのでしょう。結局なゆたさんは踊りにくいと言ってステージ途中からはランドセル無しになりますがその際に上手の方にランドセルを投げてしまいますけれど、どうも「投げる」のがこの方のキャラクターのようです。


一曲目が終わったところでメンバーが自己紹介。夏季さんはいつもは静岡県出身とおっしゃるようですが今日は出身地のアナウンスなしでした。この方はいつも笑顔なのですが実は大変にクールな自己認識をお持ちなのではないかと思っております。あんずさんの自己紹介は長身かつ美形なこの方が案外三枚目なのかもしれないと感じさせてくれます。


本番前にちょっとしたトークショーがありあヴぁんだんどからは好さんとなゆたさんが登場していました。好さんが最近家さがしに凝っていてメゾネットタイプの家が見つかると嬉しいとお話しされ、そのほかバイト探しにも凝っていて「時給1000円以上、まかないあり」などなどといった条件で探しいるとお話しされていましたが、家さがしもバイトさがしも良いのが見つかるとお気に入り登録するけれどそれまでとか。このトークショーではなゆたさんが途中で退場しましたがグループのメンヘラ担当であるらしきキャラクターを演じておられるのかなと思いました。好さんがごく庶民的なショップで購入したというシューズで登場したところなゆたさんはソックスだけの姿であったのもメンヘラ演出の一環だったのでしょうか。
二曲目「文鳥」ではそのなゆたさんが自己嫌悪を歌う一節があるのですけれども設定されたキャラクターを越えてご自身にも響くフレーズなのかもしれませんね。好さんがエアギター、つづいてあんずさんもエアギター(エアベース?)。


今日のあヴぁんだんどは30分ステージと長いためオリジナルに加えてカバーがセットリストに含まれます。その一曲目「電波ジャック」はパスピエのカバー。カバーではありますがあヴぁんだんどによく合っています。


引き続く四曲目「DBxPG」、小柄な好さんとグループ一の長身であるあんずさんがそれぞれ少女と少年に扮するごとき冒頭まもないパートから引き続く詩のような情景を舞台の上に現すのはべにさんの振り付けです。


べにさんはあヴぁんだんどのすべての振り付けを担当されているということですが、この方の振り付けがとても良いです。
若い方を褒めるにあたってはごくごく慎重でなければならないと思っています。なぜなら、ミスリードになることが少なからずあり、その場合、大げさでなくその方の人生を傾けてしまう可能性があるからです。
それでもあえて彼女の振り付けへの称賛をここに記そうと思ったのは、彼女の振りつけにドラマがあること、そして、それ以上に、振り付けにいやらしさが無いことが素晴らしいと感じたからです。すなわち、褒められたことを彼女が意識してしまって「これでどうだ」と出してきたならそれは間違いなくいやらしさを伴う振り付けであるだろうということで、要は、褒めることをしても原理的にミスリードたり得ないと判断するからです。意地悪なようですけれども。
彼女が振り付けをこれからも続けるのなら、いやらしくならない振り付けを追及していって欲しいと思います。
そしてこの一文が彼女の人生を歪めてしまわないことを切に願います。


さて、この曲には前かがみになる振りがあるのですがどうもそのせいでべにさんのツインテールがほどけてしまったようです。べにさん、前髪は揃えているのですがまとめていた髪をふり乱した様子を見てなゆたさんが「美少女!」と叫ぶとべにさんがにらみながら「言うな!」と、このお二人は本当に仲が良いんでしょうね。この曲で夏季さんは他のメンバーを台にして馬飛びを披露、身体能力の高さを示します。


ここでMC、つぎ何やろうかとメンバー、夏季さんの「『電波ジャック』やっちゃったし」という発言の後、V字型にフォーメーションを取るメンバー、始まった五曲目「ミッドナイト清純異性交遊」は大森靖子さんのカバー。オリジナル曲で固めることが出来なかったころによく演じていたようですね。メンバーがフロアに突入したかと思うとフロアのオタク諸氏と共に床に寝転びます。若い女性がファンとはいえ汗だくになった非特定の男子と密着してフロアに寝転ぶのですからアイドルって本当にハードなお仕事ですね。二階から拝見していたので見えにくかったのですが一人立って英雄のように歌っていたのはあんずさんかな。曲が終わるとメンバーはそれぞれステージに戻りますがべにさんだけしばらくフロアに寝たままです。頭でも打ったのかと心配しながら眺めていましたがどうやら極度の疲労のためすぐには動けなかったようです。なにしろ今日三回目のステージですからねえ。


六曲目「てのひら」はオリジナルです。あヴぁんだんどのオリジナル曲はどの曲も良いのですがこれもとても良い曲です。若いスタッフの作曲になるもので前記したごとくこれまた褒めることには慎重にならなくてはいけないところですが。ステージのラスト向けに盛り上がる要素を織り込んだ職人の技が味わえます。
べにさんとなゆたさんに抱えられた夏季さんがボーカルをとるのを後ろに回って支えるあんずさん、捧げる客席のオタク諸氏、客席をもりあげる好さん。引き続いて屋台崩しを模したごとくに床に崩れ落ち横たわる四人のメンバーを足元に一人屹立して歌う好さん。あヴぁんだんどのライブにおけるもっとも美しい瞬間が連続します。


曲が終わってべにさんが泣いていますがどうやらなゆたさんがお客さんの前に出て来られたのを喜んでいたようです。なゆたさんはキャラクターそのまま、前に出るのはあまり得意な方ではないのを克服されたのが嬉しかったということなのでしょうね。



あヴぁんだんど、メンバーそれぞれのキャラ立ちということでは決して格別なもののあるグループではありません。失礼を百も承知で申せば、デビューがなかなか決まらなかったというグループ名の由来がもろに納得できてしまうところはあります。
しかしながら、ピンでは苦しいであろうひとりひとりが集まってステージに立ったそのとき、単なる個の集合を越えたケミストリーが生まれるのではないか、もしかしたらこの五人に於いてはそれが可能なのかもしれない、そんなことを思わせてくれたライブでした。おそらく彼女たちの数多いステージの中でも屈指の出来であったことでしょう。


夢を見てはいけないのかもしれない。けれど、もしかしたらもしかするかもしれない。そんなグループ、あヴぁんだんどのライブレポートでした。