自爆営業についてー郵便局、コンビニ、東芝での自社株購入強要など | なか2656のブログ

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ある会社の社員が、法律などをできるだけわかりやすく書いたブログです

1.はじめに
つい先日のネット記事に、東芝経営陣が従業員に自社株を購入するよう指示し、従業員が反発しているとの興味深い記事がありました。

・東芝が自社株購入呼び掛け上場廃止の恐れ、社員反発|共同通信



これは日本郵便(郵便局)やコンビニなどで問題となっている「自爆営業」を連想させるものがあります。

2.自爆営業について
一般論として、売上目標という意味にとどまるのであれば、ノルマを課すこと自体は業務命令の範囲内として許容されます。

しかし、商品の売上ノルマを課した上で、売れ残った商品を労働者に自腹で購入させる「自爆営業」は、業務命令権の逸脱・濫用として違法となります。(今泉義竜「恵方巻は「違法巻」?販売ノルマや自腹買い取りに悲鳴の声、法的問題を分析」弁護士ドットコム)

3.賃金の全額払いの原則との関係
自爆営業は、従業員に支払われるはずの給料の一部で会社の商品等を実質的に購入させていることであり、これは賃金の全額払いの原則(労働基準法24条)の趣旨に反しています。また、その態様が悪質な場合には、強要罪(刑法223条)に該当するおそれがあります。(今泉・前掲、菅野和夫『労働法 第11版』434頁)。

4.パワハラとの関係
なお、このように部下の職責・能力から遂行が不可能な業務を課し、部下がそれを遂行できなかったときにそれに対して厳しい指導を行うことは、パワハラにも該当します。この点を認めた裁判例も存在します(国・諌早労基署長(ダイハツ長崎販売)事件・長崎地裁平成22年10月26日判決)。(岡芹健夫・帯刀康一「判例・事例から学ぶパワーハラスメントと業務上の注意・指導の境界線」『労務事情』1275号6頁)

5.従業員側の対応
従業員側は、このような違法な業務命令に従う必要はありません。また、このような使用者側の違法な業務命令は不法行為(民法709条)に該当する可能性もあります。

現実的な問題としては、このような違法な業務命令に対しては、従業員側は労働組合に相談して使用者側と対応すべきと思われます。(朝日新聞「働く人の法律相談」弁護士チーム『会社で起きている事の7割は法律違反』74頁)

■参考文献
・今泉義竜「恵方巻は「違法巻」?販売ノルマや自腹買い取りに悲鳴の声、法的問題を分析」弁護士ドットコム
・菅野和夫『労働法 第11版』434頁
・岡芹健夫・帯刀康一「判例・事例から学ぶパワーハラスメントと業務上の注意・指導の境界線」『労務事情』1275号6頁
・朝日新聞「働く人の法律相談」弁護士チーム『会社で起きている事の7割は法律違反』74頁
・山内 一浩「最新労働法解説 営業経費の取扱いと自爆営業の実態 : 営業に関連する経費は一体誰がどのように負担するのか」『労働法学研究会報』

労働法 第11版補正版 (法律学講座双書)



会社で起きている事の7割は法律違反 (朝日新書)





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