顔認証データに関して日経新聞にジュンク堂書店が再び登場 | なか2656のブログ

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1.日経新聞にジュンク堂書店が再び登場
本日の日経新聞に、2017年の改正個人情報保護法の施行を踏まえ、ジュンク堂書店が防犯カメラで客の顔の画像だけでなく顔認証データも取得している問題などが再び取り上げられていました。

・「顔は個人情報」対応急ぐ 改正法来年に施行 客に告知/匿名化、自主ルール|日本経済新聞



前回、日経新聞がジュンク堂書店のこの防犯カメラの顔認証データの件を大きく取り上げたのは2015年11月ですから、およそ10か月ぶりでしょうか。

■前回のブログ記事
・ジュンク堂書店が防犯カメラで来店者の顔認証データを撮っていることについて

その際の日経の記事は、ジュンク堂書店を、最新のテクノロジーを駆使して日本社会を改革していく“イノベーター”と手放しでべた褒めでした。

ところが平成27年の個人情報保護法改正に伴い、顔認証データなど個人識別符号にあたり個人情報に該当することが明確化されました(改正法2条1項2号、同条2項1号)。

そのため、個人情報の利用目的の通知の観点から、防犯カメラは「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合」に限っては顧客に事前の通知などは不要ですが、防犯カメラで顔の画像だけでなく顔認証データまで取得していることは「取得の状況からみて利用目的が明らかである」とはいえないので、ジュンク堂書店には、「顔認証データも取得している」旨の貼り紙などが必要となります(現行法18条4項4号)。

しかし、今回の日経の記事においても、ジュンク堂書店は、店内に「監視カメラ作動中」と掲示して客に告知しているだけだそうです。

そのうえで日経新聞の記事は、情報化推進国民会議本委員で個人情報保護法・マイナンバー法に詳しい、影島広泰弁護士の、「防犯カメラで収集したデータの利用目的を店頭で告知するなどの対応が求められる」とのコメントを掲載し、ジュンク堂書店の経営陣にとどめを刺しています。

いやー。約10か月前は時代の改革の旗手としてジュンク堂書店を紙面で褒めちぎっていたのに、新聞紙・マスコミとは何とも残酷なものです。あるいは、マスコミの定見なき梯子外しとでもいいましょうか。

2.業界団体の自主ルール
ところで、この記事の最後の部分には、(匿名加工情報の)「匿名化の詳細な方法は業界団体の自主ルールに委ねられる。」と説明されています。しかしこれは、「個人情報保護委員会規則による」の間違いではないでしょうか(改正法36条)。

また、防犯カメラや顔認証データに関しては、記事によると、顔認証カメラメーカーなどで構成する「日本万引防止システム協会」が自主ルールを作成中であるそうです。これもやや残念な思いです。

本来は、事業者vs消費者・国民と権利関係が激突するこのような場面については、国会が法律などを中立的な立場で作り、紛争の解決を図るべきだったと思います。最低でも、行政庁である個人情報保護委員会が防犯カメラ等に関するガイドライン・指針などを作成すれば、それは消費者側にとって大きく前進であったはずです。

しかし残念ながら今回も国や行政庁が防犯カメラ等のガイドラインや指針などを全国的に作るという話にはならなかったようです。

そのため、この「日本万引防止システム協会」の自主ルールの成立をまずは待ち、消費者側・国民側はその開示を受け、言うべき意見は言うしかないと思われます。

2017年からは立入検査権など強い権限を有する個人情報保護委員会も本稼働します。もし「日本万引防止システム協会」や、ジュンク堂書店を始めとする全国の小売店等が個人情報保護に関して誠実な対応をしないのなら、消費者・国民としては個人情報保護委員会に申出を行うこともひとつの方策であろうと思われます。

平成27年改正個人情報保護法のしくみ



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