NTTドコモが保険の乗合代理店として営業を開始/個人情報保護・特別利益の提供の禁止 | なか2656のブログ

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ある会社の社員が、法律などをできるだけわかりやすく書いたブログです

1.はじめに
日経新聞などによると、NTTドコモが保険の乗合代理店として9月1日から携帯電話の販売店で生命保険9社の保険の販売を始めると25日発表したとのことです。

・ドコモ、携帯販売店で保険紹介|日本経済新聞

・ドコモ、9月から店頭で保険商品=乗り合い代理店、9生損保と契約|時事通信

2.個人情報保護について
保険に関係する人間として余計なおせっかいながら気になる点は2つあります。一つは個人情報保護の問題です。

NTTドコモは2015年12月より「dポイント」という共通ポイント制度を開始し、提携企業と個人情報・購買履歴等のやり取りを行っています。そのことはNTTドコモの「d ポイントクラブ会員規約」の5条(会員情報の利用)3項、10項、11項などに明記されています。

■関連するブログ記事
・NTTドコモのdポイントに勝手に加入させられていた件


(d ポイントクラブ会員規約5条の一部)

しかしその一方、金融庁の保険会社等への通達である、「保険会社向けの総合的な監督指針」の、Ⅱ-4-2-9(2)は、保険の乗合代理店は、外部委託先を含む顧客の個人情報の情報管理に務めなければならないと規定し、保険会社本体へのⅡ-4-5に準じた情報管理を要求しています。

そこで、監督指針Ⅱ-4-5をみると、

(2)個人情報管理
① 略
(注)保険募集人が、個人情報を乗合他社の保険募集や兼業部門での営業活動等に利用する場合、目的外利用が行われることのないよう、法令等に基づく適切な取扱いが行われなければならない点に十分に留意する必要がある。』


という、個人情報の目的外利用を禁止する規定が存在します。この点は個人情報保護法15条も目的外利用を禁止しています。

もしNTTドコモや、その提携先の保険会社等が目的外に個人情報を利用した場合は、それは個人情報保護法違反となるだけでなく、保険業法違反となることにもなります。

ここで、たとえばNTTドコモの加入者の生年月日や氏名、住所などの個人情報をドコモを保有していたとして、本人の同意なくその個人情報を流用し保障設計書を作成して保険の提案を行うことは、個人情報の目的外利用であり、個人情報保護法上も、保険業法上も許されないことになると思われます。なぜなら、携帯電話契約と保険契約とはまったく目的が異なるからです。

NTTドコモほどの大手がこのような初歩的なミスをするとは思えませんが、しかしこれからこのような業態に新規参入する予定の企業は留意すべきです。

■関連するブログ記事
・【解説】保険業法改正に伴う保険業法施行規則および監督指針の一部の改正について

・【解説】保険業法改正と乗合代理店の比較推奨規制/情報提供義務

3.ポイントによる割引について
つぎに、かりにNTTドコモがdポイントという共通ポイントを利用して料金の割引を行うのであれば、それは、保険業法が禁止する特別利益の提供との関係から問題となります。

この問題の先例として、ライフネット生命と提携して保険代理店となったKDDIが、ライフネット生命の保険に加入した契約者に関して携帯電話の通信料金を割引くサービスを行ったことが、保険業法300条1項5号の禁止する特別利益の提供に抵触するおそれがある違法なサービスであると大きく非難され、両社はサービスの取扱いの修正に追い込まれました。

■関連するブログ記事
・ライフネット生命「auの生命ほけん」が改正/特別利益の提供の禁止・保険業法300条1項5号

この問題に関しては、ライフネット生命が約款・事業方法書等の基礎書類の一部変更を金融庁に申請し、その認可を受け、金融庁から認可を受けた正式な保険商品という形でサービスを提供することで解決が図られました(保険業法123条、4条等)。

今回、NTTドコモと提携する生命保険会社9社のdポイントなどの取扱いは未だ不明ですが、もしライフネット生命・KDDIと同様に割引サービスを行うのであれば、保険商品について金融庁の認可申請などをあらかじめ受ける等の対応が必要であると思われます。

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一問一答 改正保険業法早わかり -保険募集・販売ルール&態勢整備への対応策



保険業務のコンプライアンス(第3版)





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