【社労士天声凡語】今年の最低賃金決定のミカタ(全体編)
こんにちは。今年度の最低賃金が出揃いました。正式には、地方審議会からの答申が出た段階なのですが、ここから動くことはまずありませんので、事実上の決定といっていいと思います。全国の加重平均は1,121円で、昨年の1,055円から66円もの引上げとなり、目安とされた63円・64円を上回ることとなりました。厚労省ホームページに掲載された一覧表を見ながら、気が付いたことをまとめてみます。第1は、全国の最低賃金が出揃う時期が昨年より1週間くらい遅れたことです。そもそも中央審議会が目安を示したのが遅かったため仕方がないということもありますが、今年も近隣の様子を見て「後出しジャンケン」を狙う県が多かったというのが理由の一つだと思います。これに伴って、実施時期が遅くなっています。例年は10月がお決まりですが、今年は20県しかなく、11月に13県、12月に8県、1月に4県、3月に2県となっており、最も遅いのは3月31日になります。第2は、全国すべてで1,000円を上回ったことです。昨年段階では31県が1,000円未満でしたが、今回の引上げで1,000円を突破することになります。政府は2020年代に1,500円という高い目標を掲げていますので、道のりはまだ遠いですが、少しずつ近づいてきた気がします。第3は、目安を上乗せするところが39県に上ったことです。昨年は27県でしたので、目安を上回るのが当たり前になった感があります。近隣との競争のためという名目で理解できないわけではありませんが、これでは中央審議会がエビデンスに基づいて示したとされる目安の信頼性はどこに行ったのかという気がします。最低賃金の大幅な引上げはその近辺で働く労働者にとっては嬉しいことに違いありませんが、一方、中小零細企業の事業主にとっては極めて厳しい対応を迫られることになります。実施時期に合わせて、事業者に対する支援策を早急に打ち出してほしいと願っています。今回もお付き合いいただきありがとうございました。次回の更新でお会いできたら嬉しいです。