3月30日まで日本橋の三井ホールで開催されている「江戸桜ルネッサンス」という展示会で使われている映像を制作しました。
久しぶりに一般公開されるものを制作したので、せっかくなのでCG的なメイキングなど書いておこうかなと。
展示物はこちら。
僕が制作したのはメインの映像と左右の障子に写る映像。それから天井部から投影している映像。
全部でプロジェクタ5チャンネル分です。
3dsMAXでの桜吹雪素材と樹木の制作、AfterEffectsでの仕上げなど紹介していきます。
技術的に何も大した事はやっていませんが、これからCGをやりたい人などの参考になれば。
CG好きな人向けに書くので、専門用語などはご容赦ください。
では順を追って制作していきます。
制作に使用したツールは、
3dsMAX(+V-Ray)、AfterEffects(+trapcodeプラグイン)、PhotoShop
です。
まずは3dsMAXで桜吹雪の素材を制作します。
花びら単体の3Dオブジェクトがこちら。
AfterEffectsだけでも花吹雪の映像を作れるとは思いますが、MAXを使用したのはこのような「反った」形状を動かせるから。
僕が単にMAXのほうが使い慣れているからというのもありますが、MAXのほうが花びらの動きをよりレスポンスよく確認できるかと思います。
この花びらオブジェクトをパーティクルで散らします。
パーティクルの種類は「パーティクルクラウド」で、インスタンス化ジオメトリに先ほどの花びらオブジェクトを設定。
パーティクルのパラメータはこんな感じ。
下方向に初速を与え、エミッタ自体はカメラの視野外に。
システム単位は「1.0センチメートル」です。
そして、スペースワープの「Wind」をバインドして舞い散っている動きを付けます。
強度とタービュランスをいい感じになるよう調整。
パーティクルに球状ダイナフレクタをバインドしているのは、「はぐれ花びら」がカメラの直近を通過するのを避けるためで、カメラ位置とダイナフレクタをリンクしています。今回はカメラが移動しないのであまり必要性はなかったかも。
以上をレンダリングしたのがこちら。
ループに関しては、この時点では映像全体の長さの指定が確定していなかったので、MAXのパーティクルをループさせる手法はやめて、素材だけ作ってあとでAfterEffectsで調整できるようにしました。
具体的には、60秒ほどの素材(パーティクルの発生終了時間+パーティクルの寿命時間)を作って、パーティクルの発生開始や終了前後でパーティクル密度が均一になるようにオーバーラップさせます。こうすることで延々と途切れない花吹雪映像が出来るので、あとは映像全体の尺が決まった時点で、「時間的にシームレス」になるよう加工します。
が、後で分かった事ですが今回は映像全体がループしてなくてもよいということになったので、時間的にシームレスにする処理はしていません。
制作を進めていく途中で仕様が決まるもしくは追加されるというのは、制作する側からするとほんとに避けたいものですが、実際はよくある話。
自分の首を絞めない為にも出来る限り予測して柔軟に対応できるようにするしかありませんね。
次に、桜の樹木の制作です。
まずは元になった3次元モデルがこちら。手持ちの樹木モデルを使用しました。
一旦このモデルで制作を進めたのですが、
・もっと満開な感じが欲しい
とのことで、少しモディファイします。
まず、幹以外の細かい枝と花びらを丸ごとコピー。
そして回転させて再度合体!
これで花びら密度は2倍!
このままだと枝の根元が幹に接してないなど不自然な部分が出てくるので、そのへんは個別にミリミリ調整。
これがけっこう手間ですが、カメラが至近距離まで寄る事はないので大体で。
ポリゴン数としては約370万ポリゴン。無駄に多すぎかも。
ライティングは、V-RayのAmbientLightと、標準のスポットライトを一灯だけ。
GI(グローバルイルミネーション)なしでシンプルにレンダリング。
以上をレンダリングしたのがこちら。
60秒でゆっくり一回転するようになっています。
これで桜吹雪と樹木の素材が揃ったので、ここからAfterEffectsでキラキラ感などを味付けしていきます。
まずは桜吹雪から。
trapcodeのStarglowでキラキラさせます。ベタなエフェクトすぎて本職AfterEffects使いの人はあまり使わないという噂は聞きますが。
常に光った状態よりもたまにキラリンと光る方が効果的だと思うので、スレッショルドのパラメータを調整してハイライトが入ったときだけエフェクトがかかるようにします。
また、少し花びらの量が少ない気がしたので、MAXで花びらの大きさを小さくした別素材を作って重ねています。
調整レイヤーで彩度も上げています。
イベント会場のプロジェクタでは細かい花びらはほとんど見えてませんけどね。。。
次に樹木も少し味付けします。
同じくtrapcodeのStarglowでハイライト部分のみグロー効果を。
最後にグラデーションを付けた背景を用意して、桜吹雪と樹木を加算モードで合成。
「加算」で重ねることで樹木にも背景のグラデーションが活きていい感じの色合いになります。
逆に言うと、全体的にいい感じになるようにグラデーションも調整します。
「とりあえず2分のループ」ということだったので、あとは樹木のシルエットが浮き出てくる部分や暗くなって消える部分を追加して、ひとまず完成です。
展示会オープン後にご要望があったので「樹木のシルエットが光の粒になって消える」シーケンスを追加したバージョンにアップデートしましたが、それはまたの機会に。。。
以上、特に本職のAfterEffects使いの人に見られると何じゃこりゃという部分もあるかもしれませんが、自分の覚え書きも兼ねて書いてみました。
こういうCGとかやってみたいと思っている人の参考になれば幸いであります。