もう一年くらい前なのですが、
「100,000年後の安全」というDVDを観ました。
フィンランドに造られた放射性廃棄物の最終処理施設についてのドキュメンタリー映画です。
去年の震災を受けて緊急上映&DVD発売されたらしいので知ってる人も多いかも?
僕はそんなことは知らずにたまたまTSUTAYAで「10万年後」というSFチックな題名に惹かれて手に取ったのですが、その後いつ見てもほとんどレンタルされずに残っているのが印象的で、もっとみんな観たらいいのにと思っていたので紹介させてもらいます。
原発の是非を問うという視点で語られることの多いこのドキュメンタリー、
内容からしてそれは当然なのですが、別にそれをここに書きたい訳じゃなく、
僕が興味を惹かれたのは「10万年後まで意思を残せるのかどうか」というテーマでした。
舞台となるフィンランドの処理施設「オンカロ」。
その目的は、放射性廃棄物にフタをして閉じ込め、10万年後まで誰の目にも触れないようにすること。
同様の処理施設は世界中に、もちろん日本にもありますが、
「10万年の耐久性」を謳っているのは世界初なので注目されたわけです。
人間の作った建造物がどのくらいの期間、その形を保てるのか。
エジプトのピラミッドで今のところ4000年とか5000年?
現代科学の粋を集めたプロジェクトでしょうから、それよりは保つのかな、多分。
地殻変動の影響を受けにくいように、過去数億年間動いていない地殻の上に建造したとか。
日本じゃ無理でしょうね。
映画の中では、処理施設の内部映像が多く使われています。
幾何学的に整った、冷たい、そして美しい構造物の映像とともに、
何人かの関係者のインタビューが流れ、プロジェクトの意義、技術などが紹介されます。
そしてインタビュアーはこんな質問を。
「プロジェクトについては分かりました。あなた個人は、これが10万年後も今のまま残っていると思いますか?」
関係者にとっては答えにくいこの質問。
「それは、、、、正直分かりませんね。。。」
率直に答える現場に近いであろう人物。
「残ってるに決まってるだろう。何なんだね、キミは!」
逆ギレする人物。
答え方は様々ですが、少なくともこういうインタビューがドキュメンタリーになるというのが日本ではあり得ないなと感じました。
そして興味深いのはここから。
仮に建造物自体は10万年残ったとして、その時の周りの状況はどうなっているか?
我々の子孫がそこにいるのか?
人類は滅びて別の何かがいるのか??
人類であるかどうかは、もはやあまり問題ではなく、その時その場にいる知的生命体に対して、
「ここには危険な物が埋まってるから触らないでね」という意思を伝えることは可能なのか??
今の我々以上に知識の進んだ相手なら、何が埋まっているか理解して、
「なんちゅう迷惑なものを作ってくれたんだ」と怒りながらその場を立ち去るでしょう。
でもそうとは限らないわけで。
何かが隠されているとなると、人類もしくは同等の好奇心を持った生命体なら、その時代の技術を駆使して必死に掘り起こそうとするに違いない。
そういう相手にどうやって「近づくことすら危険だ」ということを伝えるのか。
看板なんて残らない。
10万年残るデジタルメディアなんて無い。
もし残っても再生する物があるかどうか分からない。
そもそも文字が伝わらないかも知れない。
そんな議論が交わされた挙げ句、
石碑に絵文字を刻むという方法になります。
現代の英知を集めたはずのプロジェクトなのに、一番原始的な手段になるという皮肉。
5000年前と同じ。
意思を残すのは物を残すより遥かに難しいと感じます。
オンカロには今後100年間に産み出される廃棄物を順次埋設していき、
100年後に完全に密閉される計画だとか。
その後10万年に渡り、誰の目にも触れること無く存在を消すのがオンカロの役割。
「オンカロ」には「隠れた場所」という意味があるとか。
10万年どころか、100年後もどうなっているやら分からないと思うのは僕だけじゃないはず。