4月21日、密かに行ってみたいと思っていた場所へ行ってきました。渋谷、セルリアンタワー能楽堂。伝統芸能を上演するための舞台が都会の真ん中の高層ビルの中に作られているというのが意外で、ずっと興味津々だったのです。


そんな場所で開催されたのが『KYOGEN LOUNGE Vol.38』。
狂言方の大藏基誠(オオクラ モトナリ)さんが主宰されている、パーティ感覚で狂言を楽しんで欲しいというイベント。若い世代や狂言初心者にもフレンドリー。しかも、狂言はもちろん、美味しいお料理とお酒も味わえるというので、一粒で三度おいしいイベントなのです。

マネージャーのYさんと待ち合わせ、受付を終えて中へ入ると、そこは長い廊下のようなホワイエのような空間。奥に早速、お酒とお料理のカウンターを見つけた私は小躍り。ドレスアップした人の姿も多く、開演時間まではそれぞれにおしゃべりや食事を楽しめて、まさにパーティのよう。

喉が渇いていた私は、このイベントの趣旨を身を以て体験せねばと、スコッチウィスキーOld Parr(オールドバー)のカウンターへ。
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まずは気分をすっきりとさせたくてソーダ割りをいただきました。このウィスキー、初めて飲みましたが口当たりが良くて、ソーダ割りでもまろやか。スイスイと飲めてしまい危険。一時シングルモルトは色々と飲み比べていたことがあったのだけど、あちらはそれぞれのウィスキーの個性をガッチリ受け止める感じで飲んでいたのに対し、ブレンデッドのオールドパーは寛容にこちらの何かを受け止めてくれる感じ。大人な味、大人の味だ。おいしい。

そして、なんとお料理を提供しているのは老舗料亭の金田中。政治家が密談(←あ、個人的なイメージね)したり文学賞の選考会(←こちらは事実)が行われたりしている、あの金田中。なおかつ興味を引くのは、この日上演される狂言の演目『梟』から料理長がインスパイアを受けて考案する、ここでしか供されない特別な一皿一皿であること。
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私がいただいたのは「ふくろうホウホウ 朴葉味噌焼 牛肉 竹の子 青唐辛子」と甘味の「苺の峰岡豆腐 薄蜜」。ほのかに朴葉の香り漂うお肉は切ないほど柔らかく、しっかりとした味噌味にますますお酒が進んでしまうという…ああ、危険。というか、この写真、お酒がすでに…(苦笑。

こうして、開演前から少々いい気分になって、能楽堂の中へ。
屋内の屋根、不思議な明るさの能舞台に、胸が高鳴ります。

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ほどなく、大藏基誠さんご本人と従兄弟で同じく狂言方の大蔵教義‬さんが舞台上に。でも、狂言の装束を身につけていらっしゃらない。基誠さんのおしゃれヘアもそのまま。すると、お二人は息のあった絶妙の間で、狂言を楽しむためのあれこれを解説。まるで漫才を見ているようで、私にはお二人の間にスタンドマイクが一本立っているのがうっすら見えました(笑。いみじくも「狂言っていうのは今でいうコントみたいなもの」と教義‬さんがおっしゃっていましたが、なるほど、狂言師というのは笑いの芸をする人たちなのだなと、お二人の漫才風の姿を見て妙に納得。その後、演劇の俳優さんの演目に絡めた寸劇も挟んで、狂言『梟』が上演されました。

このストーリーについては割愛しますが、以前も狂言を見て思ったように、狂言は見る前に想像しているよりもずっと分かりやすいし、ずっと笑わせてもらえるものなんだなと実感。そしてその言葉で、何の装置もない舞台の上に色々な世界を出現させていくのが魔法のよう。私の中の、言葉が好き、という気持ちをぐいぐい刺激してくれます。

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ちなみに、大蔵基誠さんに関しては、プリンスという言葉が似合うように思いました。長い手足は舞台上で存在感を放ち、お顔には常に口角が上がっているような笑顔のニュアンスが感じられ、華やか。一方の大蔵教義‬さんはもうちょっと職人肌の印象。漫才MCでも狂言の演目の中でも相性のいいお二人なんだろうなと感じました。って、全くの素人意見ですが(汗。

最後に、能舞台というと、神や霊があちらの世界からこちらの世界へとやってくる空間である橋掛かりと、神の依り代である松の木が描かれている鏡板について、以前話を見聞きしたことがあったので、やはり神聖な場所とのイメージがあり、心のどこかにはちょっと上演前にお酒を飲んでいいものか迷う気持ちがなきにしもあらず…だったのですが、KYOGEN LOUNGEに関してはOK、ですね。あり。むしろお清めのお神酒と思っていいのかもしれません(笑。
都会の生活でついてしまった心の垢を落とし、まっさらな心でまっすぐに味わうのがKYOGEN LOUNGEの正しい楽しみ方のように感じました。実際に私は、凝り固まった頭や肩にじわりと温かい血液が送られ、身も心もほんの少し軽くなったところで、心地よく狂言を楽しむことができた気がします。うむ、いいイベント。なるほど、38回も続いてるわけですね。これからも続いていくものと思われますので、渋谷に足を運ぶことのできる方には是非ともお勧めしたいイベントです。

KYOGEN LOUNGEに関する情報は大蔵基誠さん公式サイトで。
http://www.motonari.jp/lounge

ちなみに私の狂言デビューはこんなでした。
http://ameblo.jp/nahoko/entry-10287919733.html
こちらに出てくる野村万作さん、野村萬斎さん親子は和泉流。KYOGEN LOUNGEの大藏基誠さん、大蔵教義さんらは大蔵流で、狂言の二大流派なのだそう。

終演後には、大蔵基誠さん、オールドパーカウンターのママ(笑)こと加藤さんと記念撮影。はー、楽しかったー。
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