ロケ往復の飛行機内などで最近読んだ本を、自分の備忘も兼ねてご紹介。


九月が永遠に続けば (新潮文庫)
沼田まほかる


沼田まほかるさん、まだ2作品しか読んでないですがすっかりファンです。前回読んだのは短編集の『痺れる』。エッジの効きまくった闇とか絶望とか、グサグサ胸に刺さってくる痛さが本当に鮮烈でした。
そして、今回行きの機内で読んだのがこの長編『9月が永遠に続けば』。いやー、止まらなかったです。飛行機の中で1ページ目を開いてから、ほぼそのまま最後まで読みきってしまいました。でも、個人的には『痺れる』での衝撃が忘れられず、その影を求めて他の作品も読んでしまいそうです。
ちなみに読んだ本は、今回お世話になった現地コーディネーターさんに差し上げてきました。コーディネーターさんたちって、日本語に餓えてらっしゃる方が多いんですよねぇ。喜んで献上。


羆嵐 (新潮文庫)
吉村昭


帰りの飛行機で読んだのがこちら、昭和52年に発表された『熊嵐』。大正4年、北海道の小さな村落で実際に起こった6名の死者を出した羆(ひぐま)の襲来をもとに書かれた小説。この本を私に薦めてくれたのは、カメラマンのTさん。随分前に買っていたのに積読(つんどく)状態でしたが、装丁からしてコレです。読んだらもうホント背筋が凍りそうでした。
Tさんからこの本を薦めてもらう時に、羆の「戻り足」という習性について聞いていました。人が羆をしとめようと雪上の足跡を追って行くと、ある場所でパタリと足跡が消えているというもの。なんと、羆が自分のつけた足跡をまったく同じように踏んで戻り、追っ手の目をくらますんだそう。それで、あれ?と思って振り向くと・・・そこには・・・。怖すぎます。
そんな、羆と人との駆け引き、死闘、と書こうかと思ったけど、ちょっと違う。羆と言う自然の強大な力の前にただ立ち尽くすしかない人間という生き物の小ささを痛感。
帰りの飛行機では、映画『スノーホワイト』『プロメテウス』『ダークシャドウ(ティム・バートンとジョニー・デップ♪)』なども鑑賞したのですが、魔女や地球外生命体やバンパイヤよりも断然羆の方が恐ろしかったです。暗い機内で、本の中に登場する村人とともに息を殺して、羆のいる暗闇に目を凝らしていました。


街場の文体論
内田樹


あと、以前紹介していた内田樹さんの『街場の文体論』。
やっぱり作詞家や文章を書く人間、はたまたレポーターとして、出会えてよかったなと思う本でした。表意文字と表音文字で記述される、世界でも稀な日本語と言う言語の中で生まれ育った事を嬉しく思いましたし、改めてもっと日本語に身を浸して行きたいなと思いました。
特にそう感じたのは、これまたジョニー・デップが登場してくるのですが、『パイレーツ・オブ・カリビアン』の一場面を引用した部分。檻の中に閉じ込められた人たちが、檻ごと移動するというメタファー。檻の中にいてそこから抜け出せない、けれども、檻の形や特性がわかっていれば、檻ごと動かして移動していく事ができるというもの。
同様に、生まれ落ちたときから日本語と言う檻の中にいる私たちも、その檻を熟知する事でそのまま違う場所へ行ける。生き生きとした表現ができる。
多くの事を「ヤバイ」とか「ビミョー」という表現ですませてしまうのは、その檻をいかに小さく把握しているかと言う事。もっと違う表現もたくさんあるし、それらを知った上で使う「ヤバイ」や「ビミョー」にはまた違った魅力が出てくるのかも。
そんな風に日本語の中でもっともっと自由になれたら良いなと思いました。

てな訳で、最近の読書感想文(?)でした。
はー、書いた書いた!(笑
ここまで読んでくれた皆様方、おつかれさま!