今日はいよいよオンエアです!!
皆さん9時にはテレビの前に集合ですよぉ♪

さて、ヒマラヤの景色の変化ですが、まずトレッキングの出発点のルクラでは、私が訪れた3月でも、人によっては半袖で過ごすことも出来るくらい温かかったですし、飛行場から見渡すヒマラヤの山々も緑に溢れていました。

1日目のサプライズはなんと行っても夜、星空。はいっ、とっても綺麗でした。東京で見るオリオン座は7つの星と3ツ星の下に小さな星やら星雲が2~3見えますが、初日宿泊したパグディンのロッジではオリオン座の中だけで実に16もの星を数えることが出来ました! 天の川も確認!! 夜は冷えて、みんなでストーブにあたっていたのだけど、寝る前にどうしてもまた見に行きたくなってしまって、歯を磨きながら外にぽーっと立っていました。これまでの人生で一番ロマンティックな歯磨きです(笑。

2日目のナムチェまでの道のりは、トレッキングの全貌を平面地図でしか把握していなかった私には、想像を絶する遠さと標高差。何度も心臓破りの階段やスロープに出くわし、これから1週間つづくトレッキング生活に相当の不安を覚える中、突如、木々の間にエベレストが姿を現します。近くにいたドイツのトレッカーたちはパシパシと写真を撮っていましたが、私はまだヒマラヤの大自然の中にいる実感が持てない中、東京での運動不足についてなんて考えていたので、唐突に現れたエベレストの神々しい姿に、心をサーッと清められた様な気がしました。ちょっとだけ放心状態。それでも、エベレストもヒマラヤもあまりに美しすぎて、東京や雑多なカトマンズから来たばかりの私の心には、どこかスムーズに入ってこない様な気がしていました。

高度順応日を挟んで、タンボチェ、ディンボチェ、ロブジェと登っていくのですが、歩いている間、余裕のある時はスタッフと冗談を言い合ったりしていましたが、余裕がない時はただひたすら自分自身と会話をします。頭痛はひどくなっていないか、お腹の調子は悪くなっていないか、気力を保てているかといった健康管理に関することや、気が付けば自分の人生のあり方についてなんかを考えていたり。
普段、偏頭痛持ちの私は、その時々の頭痛の原因が上手く掴めません。タンボチェからはテント生活が始まっていたので、夜中は氷点下10度に近い気温の中、日中と同じ様な服装をして寝袋で湯たんぽを抱いて寝ます。寒いとそれだけでも頭痛がするので、寝る時にもニット帽を外せませんし、寒さに風邪をひいてしまいかねないので、頭痛の原因は風邪かもしれない。高度が上がったことによる高山病の初期症状かもしれないし、はたまた自分の元々持ってる偏頭痛かもしれない。と言う具合に、頭痛ひとつとっても自分の状態を見極めるのに手こずります。更に私は、どうやら疲労が胃腸にきてしまったらしく、途中からはお腹を壊しっぱなし・・・。
でも、山を登っていくことでダメダメになっていく頼りない自分を感じる一方で、氷河の水が溶けて流れ出した美しく青い河や、山脈の重なる稜線、緑の木々、そして夢の中の出来事の様に突然降り始めた風花などのヒマラヤの自然が、段々目の前にあるリアルなものとして感じられる様になっていきました。もう人ごとではなく、素直に心を癒されます。疲労も感動も同じくらい積っていく日々でした。
また、山登りの基本ルールに、カーブの内側を通らないと言うのがあります。これは、まずゆっくり歩くということと、少しでも高度を上げる速度を落とすということ、そして足腰にかかる負荷を少しでも減らして疲労少なく歩く為です。このルールひとつとってみても、なんだか人生の教訓の様に思われてきます。先を急がない、とか、とにかく一歩一歩進めていくことが大事なんだ、とか、どんな環境でもゆっくりと進めば人は自然と順応していくのだ、とか。エベレストはインド大陸がユーラシア大陸にぶつかったことで押し上げられて出来ていますが、それが今でもつづいていて、少しずつ少しずつ、エベレストは今も高くなっていることなんかも、とても教訓めいています。あの世界一高い山エベレストが今も1cm、1cmの積み重なっていっているのです。そんなことを考えていると、自分の人生のちっぽけさや儚さを感じる様になります。また、大きな宇宙の中の地球の、自然現象のひとつとして自分が生きていることを、面白くありがたく思ったりもします。そんな時に見る、チベット仏教のカラフルな旗タルチョは、まさに先人の知恵を感じさせます。

そして、いよいよカラパタールを目指す日、足もとのモレーンの岩、クーンブ氷河やヌプツェの勇姿、どれをみてもモノクロ映画の様な静かな色彩の中を歩きます。というのは、高度が高くなるに連れ、植物の生きる条件も厳しくなり、緑はほとんどなくなってしまうからです。そんな場所でも逞しく生きているのはコケなどの地面や岩の表面に張り付いた植物。それでも花を咲かせているものがあったりして、可愛らしく自分をアピールしているのはすごいなぁと思ってしまいます。
私は、カラパタールの頂上に近づくに連れ、息切れも激しく足下もふらつきますが、チベット仏教の石積みチョルテンの中を歩いていると、どこか巡礼の旅をしているかの様な気分になりました。そんなこと、したことがないのに。自分の追いつめられた心と身体の状態や、その景色の厳粛さに、そんな気持ちが呼び覚まされたのでしょう。
そうやって、あまりに体力のない自分に情けない気持ちになりながらも、なんとかカラパタールまでたどり着けたのは、最終的には、ヒマラヤの偉大な自然と、そこに根付いているチベット系の文化があったから。シェルパのみんなの研ぎすまされた感覚や優しさを含めて、きっと私1人なんかじゃ到底登れなかったと思います。カラパタールの黒い丘の上では、あらゆるものへの感謝の気持ちがあふれてきました。

本当に素敵な日々だったなぁ。今思い出しても、というか、今思い出すからかな。間近に見るエベレストの姿は、とても神秘的でした。雲の形もどんどん変わっていくし。もっとたくさん写真を撮っておけば良かった・・・。ついつい私は、写真を撮る冷静さよりも、景色とともにぼーっとする自分の心を眺めるのを優先してしまうんです。

というわけで、今日の放送、心の準備はできました?
あとは、ハンカチを用意して、しかと楽しんで下さいね!!
私も、今日はおうちでごはん作って、ビールとハンカチ(とワイン)を並べてオンエア鑑賞しようと思います。では、後ほど♪