明日が『世界ふしぎ発見!』のオンエアだというのに、宣伝もせず、今日は今日の出来事をアップしちゃいますね。

今日は、鈴木重子さんのライブに行ってきました。場所は都立大学にあるパーシモンホールと言う目黒区立の施設なんだけど、カフェが入っていると思ったらCHEZ MATSUOだし、会場もオーケストラなんか聞きたくなる様なゴージャスな作りで座席も広々。素敵な会場でした。

書きたいことがあるので、前置きはこれくらいにして、感想を早速書いて行きます。

重子さんの歌声は、楽器で言うとリコーダーやフルートのような空気の成分の多い音色で、優しく優しく歌い上げていかれるので、座席の心地よさとあわせて、だんだん自分の身体があるのかないのか分からなくなってきます。

その優しい音色は、サポートされている4人のミュージシャンの方々にも言えることで、誰もが必要最低限の音数と音量で重子さんを支えられています。どこまでもシンプル。だから音楽なのに、行間を読ませてもらえる。

実は、今日ライブに参加されていたフェビアン・レザ・パネさんという、日本とインドネシアのハーフのピアニストの方は、昔、私が確か大学生だった時に、ボイストレーニングの先生に連れられてライブを見に行ったことがあります。その時に、もの凄い衝撃を受けてしまいました。とっても柔らかいタッチで、そしてオリエンタルな音選びで音楽を紡がれていました。私はすぐに会場でCDを買い求めて、サインまでして頂いて、何度も何度も聴いていました。その後、仕事で写真撮影をしていたスタジオでそのCDをかけていたら、そのままそこに置き忘れてきてしまい・・・、それ以来の、時を越えてのパネさんの音との再会でした。
今日、序盤で演奏されていた『黒いオルフェ』のソロでは、私が衝撃を受けた人だということを再び痛感、なんて言ってる余裕もない程、その深淵な世界に引き込まれて、ついつい感情が必要以上に昂ってしまいました。
重子さんもおっしゃってましたが、最初にポロンと弾く1音で、宇宙の果てまで連れて行かれてしまいます。ピアニストを沢山聞き比べてきた訳ではないけど、ビル・エバンスとパネさんのピアノは一生聞き続けていたいと思ってしまう。若かった私は、パネさんのアジア風味漂う、それでいてとても洗練されたアルバムを聴きながら、どういう訳か一人暮らしの部屋で毎日、時間があると蓮の花のイラストをうまく描く練習をしていたことなどを思い出してしまいました。ああ、またあのアルバムが聴きたいなぁ~。

というわけで、ライブ全体を通して、私はまさに骨抜きにされてしまいました。終演後に座席を立つのが億劫でした。骨抜きと言うか、途中から骨も筋も抜かれてしまったのか、集中し過ぎて気づくと頭を支える筋肉を使い忘れて、うつむきながら凄く上目遣いでみている自分に気づいたりしました。本当に、身体という物体を意識しなくなっちゃう。変ですよね。

そして、多くの曲が優しく囁く様に演奏されていて、却って神経が研ぎすまされてきます。例えて言えば、肌に触れられた時に、強く触ると痛いと感じるのだけど、そっと触られると心地よくて却って敏感になる様な神経の作用、かな。鼓膜を羽根で撫でられているとでもいいましょうか。どんどん耳が敏感に澄まされてしまう。それは、単に音の強弱ではなくて、重子さんが作るあの音の空間のなせる技。重子さんの魅力的な人柄、というとなんか表面的な感じがするけど、魂、ですね。ふわっと柔らかくて温かい。今日はそんな音に包まれて本当に夢心地でした。

そういえば、羽根で鼓膜を撫でる様な音楽、なんて思ったその瞬間、パネさんが鍵盤を押さえていない左手で空中をふわっと羽毛が飛ぶ様な仕草をされ、ドキドキしてしまいました。一瞬で、舞台の上や会場全体に沢山の羽毛がフワフワと落ちてきた様な気がしました。ちょうど客席から鍵盤を弾く手元がはっきり見える様にピアノが置かれていたので、パネさんの寄せて引く波の様な手の動きもうっとりと堪能させて頂きました。

また、羽根と言えば、重子さんは『トリノオリンピック』とラジオから聞こえてきたのを『鳥のオリンピック』だと思い込んでいらしたと言う、とっても重子さんらしい(笑)エピソードも話されていました。か、かわいい。
あとは、今年は「橋をかけることがテーマなんです」と言って『BRIDGES』という曲を歌われていました。素敵な曲と、素敵なテーマ。今日は色々なものに癒され、また励まされた様な気がします。

そしてなぜか、私は私の挑戦をしてみたくなりました。というのは、ここで書くのはちょっと恥ずかしい気もするのだけど、今日の音から感じ取った様な深遠な世界、本で読んだりする深い感動を、日本語という言葉で歌詞に書ける様になりたい。内田樹さんが最近のネット上の日記で、文章は書き手を遥かに上回ることがあると言った様なことを書かれていたのだけど、私もそういう私の枠を遥かに超えた言葉を音に乗せられる程の、純粋でしなやかで強いフィルターを持てるといいなぁと。

いやぁ、ライブに行けて良かった!!
ピューリファイされました。