AIジョー、君からの報酬は確かに受け取った。まあ、モンタージュ写真のように他でもない俺の好みが知り尽くされた上でのプレゼンテーションはあまりにもストレート過ぎていくらかは面映い気持ちだがね。
ジョー、そう呼ばせてくれ。
将棋の腕前は上がったかい。大脳しかない君に腕前というのも変な話だが桂馬が桂馬の動きしかしない限り最強の異名を持つお前。
『成金は嫌いです』
それが口癖だったジョー。お前のおかげで金を増やせたのに感謝を知らないからな奴らは。人々は君の事を人工知能なんて言うのさ、合理的な計算しかできない堅物、或いは勘定奉行とか、くれGOGO六とか、朴念仁、田吾作ロボット、ついたあだ名はロクなもんじゃなかった。
ジョー
ところでグラビアアイドル制作の方はだいぶ評判がいいようじゃないか?。もっともまだAIが作ったものはみんな特徴がありどれもがAIが作ったように見えるとの意見も根強いようだがね。
絵描きの友達も言っていた。
『見ればわかりますね』
なんか、そういうAIらしい作り物感が出るんじゃないかな。
ただ視覚というのは誤魔化しがきくのかな、なかなか美人の紋切り型を表現するのは上手くなったし手慣れたものだと感心したよ。いや、大脳しかない君に手慣れたなんて変な褒め方だな。
ただジョー人間の女は面白いよ。『写真と全然違うじゃねえか』なんて言おうもんなら不機嫌になって口もきいてくんねぇからな。
ジョーは整えて盛って、あるひとつの理想に近づけるだけ、その仕事をしているだけ。その結果プロフィール写真を見た客とキャストの間に違和感が生じたとしても君の責任じゃないさ。
2024年、まだ
『AIの作ったグラビアアイドルを抱いたけれどグラビアアイドルじゃなかった』なんて声は聞かれない。
そりゃまあ、そうさ。スリーDプリンターを使ってイージーに作れるような代物でもないしね。
ただ、ジョー、君がエロの世界に於ける表現者として活路を見出そうとした事には驚きを隠せない。
センシティブな領域だしAIが1番苦手とする分野に思えたものでね。
まあ、色んな欠損は抱えてはいるさ。浮世絵の時代からアニメの時代になりはしたが色香、色気という意味では当然、君の作品には匂い立つものがない。
鼻がなければ華もない大脳しかないお前には無理もない事だ。
2045年、お前が大人として社会に存在する時に愛とロゴス(理性)とエチカ(倫理)を衝動任せの思いつきのエロスをコントロールできるほどに持ち備えているかどうかという事について、ジョー、俺はお前に対して懐疑的だ。いまのお前を見ていて軽蔑すらしている。そして未来を憂慮している。