主人公・翔子は、幼い娘を事故で失い、

夫とも別れ、ひとりで暮らしていた。 


ある日、テレビから流れるニュースに翔子は釘付けになる。 

義理の兄が、2人の人間を殺してホルマリン漬けにしていた罪で逮捕されたのだ。 

既に他界した姉との間には、

ひとり息子の良世がいた。 


良世を引き取ることになった翔子だったが、 

話すことや触れることを拒むような良世の態度や 理解不能な残虐さに、

疑心暗鬼に囚われていく。 


良世は人々が口にする「悪魔の子」なのか。 

良世の中にも義兄と同じ悪魔の血が流れているのか。 

翔子は良世を思う気持ちと恐ろしい気持ちの間で揺れ動く。 


というお話。 


重かったねー 

翔子と一緒に、私もグラグラしたねー 

こうではないのか? 

いや、こうかな? 

とかっていろんなパターンを考えながら読んで、 

最後にそうか……ってなる。 


 いろんな意味での、愛の物語だなと思います。


窪美澄さんは「トリニティ」が大好き。

なぜかは分からんけど最後は涙が止まらなかった作品。

3人の女たちが激変する時代をもがき苦しみながらも生き抜く物語でした。

今回の作品も、ちょっとトリニティと似たタイプ。 

トリニティほど心には刺さらなかったけど。笑 


 戦争を生き抜き、子供を失い、今はマタニティスイミングの指導員をしている晶子、

有名な母親に対して複雑な思いを抱いて育ち、ひとりで出産しようと決めた真菜を軸に、 

晶子の親友・千代子や真菜の親友・絵莉花も含め、 

懸命に生きる女たちが描かれます。 


 晶子の言葉。 

「私たちが家族だけの家をほしがった。誰にも干渉されずに子どもを育てたかった」

「自分たちが喜んで手に入れたものの先に、カプセルみたいな密室で、たった一人で育児して苦しんでる母親がいる」 

「何気なく選んだことが未来を決めちゃう」 


 子育てだけに限らず、全部そうよなぁ。 

こうなりたいと思ってやる時って、いい所にしか目がいかない。 

でも物事には必ずいい点と悪い点があって、何かを選ぶことは、このデメリットも受け入れる覚悟が必要。 

個人の選択としては私はいつもそれを念頭においていて、 

何か方向転換をしようとする時は、

必ず今のいい点と新しい方向の悪い点を特に考えて決めることにしてる。 


 でも個人の判断だけでは決められないこともある。 

望んでいないのに変わった時代に翻弄される人もいる。 

そう思うと、晶子がお節介好きの性格でよかったなぁと思ったわね。笑


読書感想続けて誉田哲也さんの作品を。

でも私の「誉田哲也」とは違うタイプだった。

姫川シリーズやジウシリーズの印象が強いもんで。

あ、この作品が嫌ということではなくてね。


今回の物語は、傷害致死の容疑で逮捕された雪美が

「女の人の声が聞こえる」と言い出したことから始まります。

果たしてこれは、精神鑑定案件なのか?と頭を抱える刑事の竹脇だったが、

最終的には正当防衛に落ち着いた。

しかし被害者の行動に納得がいかなかった竹脇は、

菊田(姫川シリーズの菊田の奥さん!)とともに被害者の素性や行動を調べ始める。


そうこうするうちに、

14年前に起こった未解決事件が浮上してくる。

ふたつの事件にはどんなつながりがあるのか……。というお話。


竹脇目線や雪美目線、そして雪美に話し掛ける女目線から描かれているので

同じシーンでも、この人はこんなん思ってたんや、でもこの人はこんなん考えてんねんな、なんて、

両側から分かって面白かった。

こんな風にみんな伝えることができたら、事件解決は早いのになぁ。笑


それにしても、最後の土堂さんにはビックリしたわ。笑


とりあえず、誉田さんにしてはサクッと読める作品です。