大好きな垣谷美雨さん。 

ともすれば重くなりそうなテーマなのに、 

いつもちょっと笑える楽しい描き方をしてくれる。 

でもちゃんと読めば考えさせられる。 

そんな垣谷さんの作品がほんとに好き。 


さて今回の主人公は久美子という32歳の女子。

派遣切りにあった日に長年付き合っていた彼氏に振られ、 

一緒に住んでいたマンションも出ていかないといけなくなる。 

仕事も彼氏も住むところも一気に失った久美子。 

無職では住むところも借りられない。 

正社員時代にしていた貯金も派遣になってから目減りしている。 

頼れる親はいない。 

 八方塞がりの久美子だったが、 

偶然見たテレビがきっかけで農業をすることを決意。 

大学時代の先輩のツテで田舎の安いアパートを借り、 

農業大学で学び、 

ついにひとり農業デビュー! 

となるはずだったが…… 


 というお話。 


 次々と問題が起こるんだけど、 

いろんな人に助けられて乗り越えていく。 


こういうのを読んで「助けてくれる人がいたからやん」と思うこともできるけど、 

助けてくれる人が現れるのは、

やっぱり久美子の人柄なんやと思うのよ。 


仕事と彼氏と住むところを失って大ピンチになって、 

ある意味開き直ったせいか 

飾らないほんとの姿が前に出てきて、 

そのほんとの姿が人を惹きつけるものだった。 

いい人で、正直で、真面目で、素直で。 

だからみんな、久美子を好きになって助けようと思っちゃう。 

それってすごい宝やなと思うのよね。 


 人が助けてくれるかどうかではなくて、 

助けてあげたいと思ってもらえる自分かどうか。 

これが大事よねー 

そういう人になりたいなぁ。



主人公・翔子は、幼い娘を事故で失い、

夫とも別れ、ひとりで暮らしていた。 


ある日、テレビから流れるニュースに翔子は釘付けになる。 

義理の兄が、2人の人間を殺してホルマリン漬けにしていた罪で逮捕されたのだ。 

既に他界した姉との間には、

ひとり息子の良世がいた。 


良世を引き取ることになった翔子だったが、 

話すことや触れることを拒むような良世の態度や 理解不能な残虐さに、

疑心暗鬼に囚われていく。 


良世は人々が口にする「悪魔の子」なのか。 

良世の中にも義兄と同じ悪魔の血が流れているのか。 

翔子は良世を思う気持ちと恐ろしい気持ちの間で揺れ動く。 


というお話。 


重かったねー 

翔子と一緒に、私もグラグラしたねー 

こうではないのか? 

いや、こうかな? 

とかっていろんなパターンを考えながら読んで、 

最後にそうか……ってなる。 


 いろんな意味での、愛の物語だなと思います。


窪美澄さんは「トリニティ」が大好き。

なぜかは分からんけど最後は涙が止まらなかった作品。

3人の女たちが激変する時代をもがき苦しみながらも生き抜く物語でした。

今回の作品も、ちょっとトリニティと似たタイプ。 

トリニティほど心には刺さらなかったけど。笑 


 戦争を生き抜き、子供を失い、今はマタニティスイミングの指導員をしている晶子、

有名な母親に対して複雑な思いを抱いて育ち、ひとりで出産しようと決めた真菜を軸に、 

晶子の親友・千代子や真菜の親友・絵莉花も含め、 

懸命に生きる女たちが描かれます。 


 晶子の言葉。 

「私たちが家族だけの家をほしがった。誰にも干渉されずに子どもを育てたかった」

「自分たちが喜んで手に入れたものの先に、カプセルみたいな密室で、たった一人で育児して苦しんでる母親がいる」 

「何気なく選んだことが未来を決めちゃう」 


 子育てだけに限らず、全部そうよなぁ。 

こうなりたいと思ってやる時って、いい所にしか目がいかない。 

でも物事には必ずいい点と悪い点があって、何かを選ぶことは、このデメリットも受け入れる覚悟が必要。 

個人の選択としては私はいつもそれを念頭においていて、 

何か方向転換をしようとする時は、

必ず今のいい点と新しい方向の悪い点を特に考えて決めることにしてる。 


 でも個人の判断だけでは決められないこともある。 

望んでいないのに変わった時代に翻弄される人もいる。 

そう思うと、晶子がお節介好きの性格でよかったなぁと思ったわね。笑