春の宵は、千金に値する。 【一茶庵稽古追想】 | なごみカルチャー

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ご存じ、清少納言の「枕の草子」は、四季の、それぞれの特徴を一言で表している。
それは、春なら「あけぼの」、夏は「夜」、秋は「夕暮れ」、そして冬は「早朝」というように。
一方、中国では北宋時代の著名な詩人である蘇軾(そしょく)は、春は「夜」としている。春の夜は、ひとときでも千金の値があると思えるほどすばらしい、と「春夜」という詩を残し、それが後世に伝え継がれている。
春の夜は、楽しくもあり、寂しくもある。詩ではもの悲しい季節として、秋もさることながら春の宵は「寂寂」とした情感を醸し出す。
その代表詩が、ご存知の「春夜」である。



春宵一刻値千金
花有清香月有陰
歌管樓臺聲細細
鞦韆院落夜沈沈

現代訳では、
春の夜は、ひとときでも千金の値があると思えるほどすばらしい
花は清らかに香り、月はおぼろにかすんでいる
歌声や楽器の音が鳴り響いていた楼閣も、今はかすかに聞こえるばかり
ぶらんこのある中庭では、夜が静かにふけてゆく



春の夜は、管弦を聴き、花や月を愛でていると寂寂なる感情が湧き出てくる。
それが春の宵の千金なのかもしれない。
そんな想像を巡らしながら、玉露の味を楽しんだ。