世界卓球は今回で100周年。イギリスのロンドンで始まり、今回、ロンドンに帰った。
そのロンドンっ子たちを釘付けにしたのが橋本帆乃香だった。 女子団体決勝、日本VS中国。その第3試合での橋本のプレーに目を丸くしていたのだった。
カットプレー・スタイル。ドライブ・スタイル全盛のなか、数少なくなったプレースタイル。コートからはるかに離れて、コート下の位置からすくい上げるようにさばく、打球はふわりと浮かぶように山なりの軌道を描き、確実に相手コートに弾む。正確無比のコントロール、ドライブ攻撃に慣れた目からすれば打球速度はじれったいほどにゆっくりだ。相手は顔を真っ赤にしてしだいに苛立ちをつのらせていく。
コノヤローコノヤローと強く返すが、相手はのらりくらりだ。そのうち、焦って、墓穴を掘るかのように自滅する。ミスをしてポイントを奪われるのだ。長いラリーの末にそういう取られ方をすれば、心のダメージは大きすぎる。立ち直れないまま、ゲームが終了していく。終わった後は空虚感しか残らない。誰もがカットマンとの勝負を嫌がる。
橋本はこのタイプで勝負するが、橋本はそれだけではない。相手に隙あれば、一気に前へ出てカウンターをしかけた。橋本ストライクと名付けられた超攻撃モードは相手をさらに追い詰める。カットマンの中で、この点が鋭いのは橋本くらいしかいないという。
さらに、橋本にはもうひとつ奥の手があった。サーブである。多彩な攻めで、テニスやバレーボールで言うサービスエースを、肝心かなめで繰り出した。それで、相手に流れかけたいわゆる試合の流れを取り戻した。
橋本はさらにさらに、海外選手41連勝という輝かしい実績の持ち主だった。この実績は大きい。なぜなら、劣勢になっても自分を見失わない自信を保てるようになったからだ。実際、負けていても、橋本は常に落ち着いていていつのまにか逆転していた。
まさにダークホース・橋本帆乃香。今大会、最も活躍した選手と言える。
決勝戦は早田ひなと張本美和を中心にしたオーダーだった。結果的に負けたのだが、もしかしたら橋本中心のオーダーだったら勝敗はどうなったかわからない。
卓球はデータ戦だ。特に中国は負けてしまった相手へのリベンジに執念を燃やす。あらゆるデータをたたきこんで試合に臨む。
ということは、逆に、あまり戦っていない相手には弱いということだ。橋本と面手凛を中心としたオーダー、例えば、第1試合・面手凛、第2試合・橋本帆乃香、第3試合・張本美和、第4試合・面手凛、第5試合・橋本帆乃香だったら、もしかしたら中国に勝てていたかもしれない。
監督も・・・たぶん一瞬はそう思っただろう。が、そうしなかった。なぜなら、早田と張本の打倒・中国への激しい思い、執念を知っているからだ。この決勝の場だけを目指して2年間、苦労を重ねてきた2人である。そんな2人を決勝の場で使わない・・・なんてありえなかったし、2人が納得しないだろう。
まさに心中する思いでオーダーを決めたと思う。
世界卓球での打倒中国はまた2年後へお預けとなった。2年後、自分はもうこの舞台に居ないかもしれないと早田は言った。みうみま世代が引っ張ってきた女子団体。代わった新しい世代がこれから活躍していけば、大きな夢の達成は近いことだろう。歴史は徐々に動くのだ