「やぁ、おかあさんのご様子は?どうです?」
「ああ、今はよく眠っておる。あみさんがそばについておる。」
それは、昨日のことだった。
「てんさん、いらっしゃい。はるも。」
いつものように、てんさんとはるは連れ立って店にやってきた。
「みなとさん、食事会を頼めるかの。」
「えぇ、お仲間と?もちろんですよ。」
「人間用もお願いできるかの。」
「もちろん、もちろん!誰が食べてもおいしいご飯をつくるのがおれのモットーですから!・・・で、人間?」
「かあさんじゃ。先日、出発して、そろそろ、こちらでの手続きが終わる頃かな。」
「おかあさんですか。」
てんさん、はるも、おれと同じ「ホゴケン」だった。
てんさん、はるの言う「かあさん」は、「アズカリサン」のことだった。
「かあさん」は、おれたちのような、たくさんのホゴケンを助け出したり、お世話をしてきたりしたのだそうだ。あみさんだけが、本当の子として「かあさん」と暮らしていた。
「でも、ボクたちにとっては、本当のかあさんだったんだよぅ。早く会いたい・・・。」
「早く」と言って、はるは下を向いてしまった。こちらに来るということは、地上ではお別れがあったということだから、なんとも複雑だ。
「わかりました。歓迎、とは言えないけれど、あたたかい会にしましょうよ。おれも腕を振るいますよ。それから・・・。
今日も、“あれ”ですよ。ごちそうと一緒に、金平糖の準備もしています。」
「あれじゃな。」
「あれだね。かあさんも手伝ってくれると思う!」
さあ、準備はできた。
ごちそうのあとは、地上のみんなに、素敵な天体ショーをお見せするよ。
たくさんの金平糖をお空に投げて、みんなの願い事をかなえるよ。
向こうに、てんさんやはる、あみさんたちに囲まれて、「かあさん」がやって来るのが見える。
「かあさん」は笑顔だ。
おわり