【初読】 川村裕子『はじめての王朝文化辞典』 角川ソフィア文庫
新年初投稿になります。
十二月は色々と生活が慌ただしく、ブログ更新どころか本を読む時間すら無かったのですが、年が明けてようやく一段落しました。やっと読書の時間がとれそうです。
ということで本日はこちらを読んでみました。家族に勧められた一冊です。
表紙から分かる通り、平安時代の文化を解説している書籍になります。平安京好きにはたまらない。
それでは早速、簡単に感想を書いていきたいと思います。
以下、内容についての記載あり。未読の方はご注意ください。
項目が多いので文庫本としてはやや厚め。タイトルには辞典とありますが、一般的な辞書の書き方ではなく、文章による解説という形になっています。
平安時代の衣食住や風俗について事細かに紹介されている、ガイドブック的な一冊です。視覚的な表現が多いのが特徴ですね。
『蜻蛉日記』『源氏物語』『枕草子』『和泉式部日記』などの古典作品を引用した部分が多く、古典の作品論・作品解説なども兼ねているのが面白いポイントでした。ただの用語辞典よりも分かりやすく、印象にも残りやすいです。
巻末の参考文献の量がえぐい。
重要箇所が太字になっているため最初は少し読み辛く感じたのですが、それもすぐに気にならなくなるくらい面白かったです。
内容は大きく四つの章に分けられています。
Ⅰ.王朝の空間
Ⅱ.王朝のライフ・サイクル
Ⅲ.王朝のファッション
Ⅳ.王朝の日常生活
第一章「王朝の空間」は、家屋や家具についての解説です。
第二章「王朝のライフ・サイクル」は出産や成人の儀式、結婚、葬式など人生の節目となるイベントについての解説となっています。
第三章「王朝のファッション」は文字通り平安時代の服飾に関する解説。男性・女性それぞれの装束から、髪やお化粧、薫りについてなどが取り上げられています。
最後の、第四章「王朝の日常生活」は、一番容量のある章です。全ページ数のほぼ半分近いボリューム。一年のイベント暦から始まり、食生活、音楽と舞、娯楽、病気、信仰と続きます。
イベント暦は月ごとのイベント日が一つずつ詳細に解説されているのでかなり読み応えがあります。
二月の「釈奠(せきてん)」というイベントは耳馴染みがなかったので勉強になりました。孔子とお弟子さんたちを祀る儀式だそうです。ふむふむ。
どの項目も具体的な例を挙げつつ解説されているので、こちらとしても色々と想像しやすく、より平安文化への理解が深まったような気がします。
また、古文を多く引用しているところから、古典作品を読み解くための辞典としても非常に有用だと思います。
例えば、女性の装束について解説している項目。
ここでは『紫式部日記』からの引用で、「裳と唐衣を着けた倫子と、袿と小袿を着けた彰子(倫子の娘)」の親子の姿が描かれています。正装している母親に対して、天皇の妻であり皇子を産んでいる娘の方は普段着。ここから、平安時代の身分の在り方や、装束に表れている彼女らの身分意識について読み解くことができ、引用元である『紫式部日記』についての理解がより深まることにも繋がります。
まさしく辞典として正しい在り方。全ての項目が、このように古文と一緒に解説されています。イラストも満載で分かりやすく、古典作品に触れる際には本当に役立つ一冊だと思います。
定価が1450+税と文庫本にしてはそこそこお値段の張る部類ではありますが、それだけの価値はある作品でした。通読して楽しい辞典です。平安文化好きには結構刺さるのでは。
興味のある方はぜひ。
それでは今日はこの辺で。