『小学館の図鑑NEOアート 図解 はじめての絵画』 | 本の虫凪子の徘徊記録

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【初読】  『小学館の図鑑NEOアート 図解 はじめての絵画』 小学館

 

本日はこちらを。

NEOシリーズの新作、今年の二月が初版です。

楽しいですよね、NEO。私は「星と星座」、「地球」、「恐竜」、「魚」、それから「くらべる図鑑」が特に好きです。今でも時々眺めています。

 

こちらは「絵画」を集めた図鑑です。

それでは早速、内容について。

 

以下、内容についての記載あり。未読の方はご注意ください。

 

古今東西の国宝から現代アートまで、様々な絵画が紹介されています。西洋の油彩画、天井画、日本画、浮世絵や曼荼羅。人物画、宗教画、静物絵画や架空の事象を描いたものなど。
個人的に好きなブリューゲル一族の作品も紹介されていて嬉しかったです。
あとエッシャーもいくつかありました。エッシャー大好き。

よくある図鑑のように絵画をただきっちりとと並べて紹介するのではなく、読み手が楽しめるように色々と工夫がされています。
例えば第1章では、描かれた年代も地域も違う絵画の中から、同じカテゴリのものが描かれている絵を抜き出して、違いを比べたりしています。
「みんなの帽子コレクション」のページでは、ゴッホの描いた麦わら帽子(『麦わら帽子の自画像』)に、ルーベンスの描いたビーバーの帽子(『シュザンヌ・ランデンの肖像』)、日本画に描かれている冠(『伝源頼朝像』)などが見開きでまとめられています。
同じように「地獄」カテゴリでは『地獄草紙』の雲火霧とボッティチェリの『神曲』の地獄図が並んでいたり。
こうして見ると、東西の文化や価値観の違いがよく分かって面白いです。

それから、「太陽」カテゴリの、作者ごとに異なる太陽の表現比較も興味深いものでした。
太陽そのものを描かず、逆光の影の濃さで光の強さをあらわしたミレーの『晩鐘』。
これは本物を一度見てみたいものです。
隣のムンクの『太陽』は日本に来たときに見に行きましたが、本当に眩しく感じるくらい迫力があったのを覚えています。

第2章では、絵画で「どう表現しているのか」について、より分析的に紹介されています。
画家や絵師ごとの色の塗り方や構図、光の表現方法をはじめ、音や感情、動きなどの目に見えないものをどう絵画に落とし込むかなど、画家たちの創意工夫が見えてわくわくします。
「文字」を使った表現を紹介しているページでは、憧れの『ケルズの書』のモノグラムが載っていてテンション上がりました。三大ケルト装飾写本、絶対に死ぬまでには見に行きたい。
ちなみにその隣には、ほぼ文字だけで描かれた加藤信清『五百羅漢図』が並んでいました。拡大で見るとちょっとぞわっとしますね。信仰心が深すぎて狂気に片足突っ込んでます。

第3章も表現についてが主ですが、より詳しく、画家についても触れながら紹介されていています。
そして第4章では画材や画法について。
チューブ入り絵の具の歴史や製造工程まで学べます。
また、ここでは絵画だけでなく、切り絵や布として織られた絵なども取り上げられていました。

最後の第5章は鑑賞方法や美術館についてで、その他にも絵にまつわる職種などが紹介されていました。恥ずかしながら、アートセラピストなるお仕事をはじめて知りました。へええ。

じっくり読んで楽しく、何度も読み返して更に楽しいタイプの図鑑ですね。
ほぼ絵ですが、内容にはかなりボリュームがあります。世界の名画の大きさ比較などもありますし、「くらべる図鑑」と雰囲気が少し似ているかもしれません。
個人的に一番印象に残っているのは、3章で紹介されていたフェルメール『窓辺で手紙を読む女』でしょうか。去年上野に来たときに見に行ったので記憶に新しい。
ちなみに、こちらの本ではキューピット復元後の絵が載っていましたが、私はどちらかというと消されていたときの方が好みです。あの不自然な空白が想像力をかき立てられて良かったのにな、なんて思ってしまったり。

美術好きにはたまらない一冊でした。
楽しかったです。
それでは今日はこの辺で。