【初読】 手塚治虫『マンガの描き方 似顔絵から長編まで』 光文社知恵の森文庫
本日はこちらの作品を読んでみることに。
漫画の神様・手塚治虫先生による漫画の描き方講座です。
小学三年生の時、なぜか手塚治虫にハマって作品やら伝記やらを何度も繰り返し読んでいた記憶があります。
ちなみに、一番好きな手塚作品は『ブラック・ジャック』。ピノコ大正義。『火の鳥』は宇宙編派ですが、その前のヤマト編も好きです。カジカちゃんが可愛いので。
それでは早速、内容について書いていきたいと思います。
以下、内容についての記載あり。未読の方はご注意ください。
読んでみると、手塚先生の漫画論では、絵の上手さやリアリティのある設定よりも、パワフルで支離滅裂で、漫画でしか表現できないような荒唐無稽な「面白さ」の方を重要視していることが分かります。小綺麗に纏まっているものよりも面白いものの方が良い、という意見のようです。確かに、手塚先生の漫画はいつでもパワフルですよね。
ただ、先生の場合は丁寧に描く時には絵もストーリーも本当に丁寧に描かれていて、そこが凄い所だと思います。
ギャグとシリアスの塩梅が天才的。
第一章は、絵の描き方についての解説です。
画材の使い方やキャラの描き方、動かし方、構図などの基本的な事について教えてくれます。
特徴を捉えた似顔絵の描き方を文章とイラストで丁寧に説明してくれるのですが、そこで例として描かれている人々の表情の多彩さには驚きました。手塚先生は表情の作り方がとんでもなく上手い。キャラのリアクションがオーバーなので感情がダイレクトに伝わってきます。そして動作も同じ様にオーバーに描かれているため、インパクトがあって分かりやすいです。だからキャラクターがこんなに生き生きと見えるんでしょうね。納得です。
第二章はストーリーとなる案の考え方についてです。
四コマ漫画の作り方や、「面白さ」を作るコツなどが纏められています。私は漫画を描かないのでちょっと分からないのですが、何となく、この行程が一番大変そうだなと感じました。アイデアが無ければ描くものも描けませんよね。想像力が皆無だと漫画家には向かないようです。
第三章は漫画全体の作り方についてです。
ストーリーの上手なたて方やテーマの広げ方。この辺りは作文の書き方などにも応用できそうな気がします。
メインテーマはしっかりと決めておき、作中では匂わせる程度にすること(前面に出しすぎると鼻持ちならなくなる)など、漫画だけでなく小説や脚本などを書く上でも大切なことだと思います。
そして手塚先生曰く、長編漫画を描く時に一番大切なのは、「最後まで飽きずに描ききること」だそうです。これが出来ない人が意外と多いとのこと。かくいう私も、恐らくはプロットを作って満足してしまうタイプです。漫画家には向いていないのかも。
全編通して、ユーモアたっぷりで分かりやすい文章なので読んでいて楽しかったです。
イラスト満載なのも最高です。
読んだあとは何となく、自分でも漫画が描けそうな気になりました。短編とか四コマにちょっとだけ挑戦してみようかな、なんて思ったり思わなかったり。
手塚先生の漫画愛に溢れた一冊です。興味がある方はぜひ。