ニック・シャドウ『ニック・シャドウの真夜中の図書館』1~3 | 本の虫凪子の徘徊記録

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【再読】  ニック・シャドウ『ニック・シャドウの真夜中の図書館』1~3 堂田和美/鮎川晶/金井真弓訳 ゴマブックス

 

本日はこちらの作品を再読しました。

英国発祥の人気ホラー小説です。
児童書のくせに滅茶苦茶怖い。
日本にもファンが多い作品です。私は全巻揃えているわけではないのですが、確か十五巻くらいまで続いていたような。
一冊に、短編が三話ずつ収録されています。主人公は男だったり女だったりと、お話によって違いますが、皆十代の少年少女であるという点が共通しています。まだ小学生くらいの歳の子からハイティーンまでと、様々です。
それでは早速、感想の方を。

 

以下、内容についての記載あり。未読の方はご注意ください。

一巻からもうやばい。怖。
この巻で登場するのは、未来の「声」のせいで苦しむケイト、運悪く呪われたスニーカーを手にしてしまったジャスティン、ビル・コールのリンゴを盗んだティムの三名。全員が全員、唐突に怪異に巻き込まれ、さんざん恐怖を味わった上で悲惨な死を遂げます。
一話ごとのストーリー性が非常に高いため、怖さ以前にまず面白いのが特徴です。どうなるのかハラハラしてページを捲る手が止まりません。私なんてオチを知っているにも関わらず、何度読んでも展開にドキドキしてしまいます。

主人公はごく普通の子供たちで、特に悪いことをしているわけでもないのに、最後には必ず破滅するというのが最高に悪趣味だと思います。もちろん、それを楽しんで読んでいる側も十分に悪趣味ではありますが。
最初の主人公のケイトにしろ、未来を知る能力を自分のために使ったことは確かですが、それは悪用というほどのものではなかったし、何もあんな死に方をするいわれは無かったのでは。
同じ巻の、リンゴ泥棒をしたティムはちょっと擁護できませんが、それでもあの最期は流石に可哀想でした。生きたまま樹に変えられるのはだいぶエグいと思います。子供のイタズラに対して「報い」の比率が重すぎる。
悪人が酷い目に遭うのであればまだ納得できますが、あどけなさを残した子供たちがひたすら理不尽に殺されていくので少し心が痛みます。まあそこが面白いんですけどね。

私がこの中で一番好きなお話は、三巻第一話の『ゲームオーバー』です。主人公はゲーム好きの少年・サイモン。十二歳。
「危険な犯罪者」を操作して自分の町を破壊するPCゲームが、実は現実世界にも影響していた、というお話です。ゲーム内で奪った金が、ゲームで隠したのと同じ場所にあったり、ゲーム内で殺した人は現実でも謎の男に殺されていたり。物語が進むにつれ、主人公の制御を外れて勝手に行動し始める「男」が本当に怖い。ゲーム内で「男」がサイモンの家を発見してからの流れは読むたびにゾクゾクします。
この話に限らず、どれも「恐怖」が「迫ってくる」ような感じが上手く演出されているので、非常に緊迫感があります。いつの間にか逃げ場が無くなっていて、どんどん追い詰められていくような感じが嫌にリアル。この本の作者は悲惨な結末そのものよりも、そこに至るまでにじわじわと増していく不穏さや、主人公たちの恐怖心が高まっていく様子の方に、より力を入れているのではないでしょうか。ただ死ぬのではなく、極上の恐怖を味わった上での死です。本当に悪趣味(褒め言葉)。

児童書なので、文字は大きめ、行間も広め。
ただ、一話ごとの完成度が高いので、大人でも楽しめる作品だと思います。
ホラーが好きで、まだ読んだことがないという方がいれば、ぜひ。
それでは今日はこの辺で。