【再読】 金沢伸明『王様ゲーム 滅亡6.08』 双葉文庫
本日はこちらを再読。
金沢伸明作品が好きな妹から借りました。
謎に満ちた存在「王様」が支配するデスゲーム、それに巻き込まれる人々を描いたサバイバル・ホラー作品です。こちらはシリーズ第四巻。
表紙がツルッツルで光が反射しやすく、写真が撮り辛かったです。ちょっと携帯が映っちゃってる。
それでは早速、感想を書いていきたいと思います。
以下、内容についての記載あり。未読の方はご注意ください。
「王様」からメールで送られてくる命令には絶対服従しなければならず、逆らえば罰を受けるという単純なルールの『王様ゲーム』。罰=死です。
今回のゲーム参加者は日本在住の全高校生。今までよりも規模が大きいため、日本政府も大々的に介入してきます。
広島県にいる者は全員岡山県に移動しろ、というメールからゲームは開始します。
主人公は広島に住む男子高校生・智久。ただ、場面の切り替えが早い群像劇スタイルの構成なので、登場シーン自体はそこまで長くありません。下手すると幸村の方が存在感があるような。
過去作とは異なり、「王様」による理不尽で残酷な罰よりも、人間たちが恐怖で錯乱し勝手に殺し合う様子に、より焦点が当てられています。
「王様」を炙り出そうとして行われる魔女狩りや、大人を殺して回る高校生たち。恐怖と欲望で正気を失い、獣性を剥き出しにした人間のおぞましさが、これでもかというほど描写されています。憎悪、疑心、謀略、裏切り。男と女を争わせたり、ゲームが止まって皆が安堵したところで「罰」のメールが届いたり、相変わらず趣味の悪さ全開のストーリー展開です。
心理描写が上手いので、キャラ同士が駆け引きめいたやり取りをする場面はかなり読み応えがあります。
中二クサい台詞回しが多いのも相変わらず。
登場キャラにポエマーが多い。
今作で一番好きなキャラクターは幸村ですね。
冷静で賢く、勇敢で友達思い。ついていきたいと思わせてくれるような、人を惹きつける魅力のある男の子です。罰を受けて四肢と頭部が切断され達磨のようになって死にましたが。
いやあ、彼には幸せになって欲しかった。
また、この状況下では仕方がないとはいえ、利己的な行動に走ってしまう者が多かった分、逆に誰かのために死んでいった直人や桜子、楓真の存在は非常に輝いて見えました。私に彼らと同じことができるかどうか。多分無理ですね。
葉月ちゃんや国生蛍のようなミステリアスな女キャラも好きです。
今作は、ゲームの仕組みや「王様」の正体についての謎が徐々に明らかになってくる重要な巻です。日本の高校生の数が半分になり、不穏なキャラクターもちらほら現れ、さあこれから、というところで次巻に続きます。
残念ながら続きは今手元にないので、そちらの感想はまた別の機会に書きます。
『王様ゲーム』シリーズはグロい上に後味も悪いですが、何故か時々読み返したくなるんですよね。自分でも不思議です。なんでだろ。
余談ですが「日本から20歳以上の人間を消せ」という三つ目の命令が公開された後の、四国の老夫婦の会話が地味に好きです。悲しいようなほっこりするような、不思議な気持ちになる場面でした。
それでは今日はこの辺で。