“そのうち何とかなるだろう”では済まない放射能汚染 | 永築當果のブログ

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ブログを8本も立て、“物書き”が本業にならないかと夢見ている還暦過ぎの青年。本業は薬屋稼業で、そのブログが2本、片手間に百姓をやり、そのブログが2本、論文で1本、その他アメブロなど3本。お読みいただければ幸いです。

 水俣の水銀汚染、神通川流域のカドミ汚染、古くは足尾銅山の鉱毒汚染などなど。明らかな汚染が分かっていても政府はこれをなかなか認めようとはせず、汚染地域の方々は、さんざん苦汁を舐めさせられ、泣かされました。

 その健康被害は取り返しの付かないものでしたが、随分と年月が経ってから、しぶしぶ政府が原因を認め、長い長い時間をかけて、どれだけかの補償をするなどでお茶を濁し、また、どれだけかの必要な除染をしました。

 この間の政府の対応は、おしなべて“そのうち何とかなるだろう”といった無責任なもので、因果関係がはっきりしてから“ぎゃーぎゃーうるさいから少々金をばら撒いておとなしくさせよう”といったものだったのではなかったでしょうか。


 今般の福島の放射能汚染についても、政府の対応は従前の公害問題と何ら変わるところはなさそうです。

 高い放射能が検知されても、“直ちに健康被害はない”とか“20ミリシーベルトまでは許容範囲”とか言っていますが、これは、根っこに“そのうち何とかなるだろう”といった考えがあるからでしょう。

 今後において健康被害が出てきても、当分の間は、“放射能との因果関係は認められない”と、引き伸ばし戦術をとり、10年も経って被害が頻発してからやっと因果関係を認めて、渋々“認定”作業に着手するのではないでしょうか。


 除染についても同様でしょう。いや、こちらは、もっと質が悪いことになりそうです。

 現時点で、除染を緊急にせねばならない箇所が非常に多くあり、これは政府も認めて順次取り掛かっていますが、お茶を濁すようなやり方しかしておらず、ここにも“そのうち何とかなるだろう”という考え方が顔を覗かせています。

 そうしたことから、除染で生じた汚染物の集積場を積極的に作ると、除染事業に拍車がかかってしまいますから、集積場の設置にブレーキをかけているのではないでしょうか。

 そして、今般の放射能汚染に対する除染は、水俣の水銀汚染、神通川流域のカドミ汚染のように簡単には出来ないことがはっきりしていますから、除染を急ぐと言いながらも、除染基準や作業マニュアルをややこしくしたりして、除染事業の進捗率を意図的に落としているように思われます。

 どだい無理な除染事業なのですからね。


 健康被害も除染も、根本的な解決を図るには、「放射能の危険性をはっきり認め、除染は不可能であって、汚染地域には立ち入らせない」とするしかないでしょう。チェリノブイリと同じやり方です。

 被災地域の方々にとっては非常に酷なことになりますが、安易に避難解除をして、水俣の有機水銀で汚染された魚を食べ続けて取り返しの付かない健康被害を受けた事件と同じ繰り返しをさせてよいものでしょうか。

 いや放射能はそこまで危険ではない、とおっしゃるかもしれませんが、水俣の有機水銀だって、危険性を指摘した学者の発言が無視され、そうした学者の発言力が強かったから多大な被害を出してしまったのです。

 被害が出てからでは遅すぎることを、過去の公害問題は例外なく証明していることを忘れてはなりません。

 ただ一つ言える違いは、年寄りは放射能に鈍感であるからして、年寄りだけは戻ってよいとなりますが、その年寄りの医療や介護はじめ様々な公的・私的サービスは若い世代が行なわざるを得ないのですから、彼らに健康被害が出てしまう恐れがあります。よって、姨捨山にして若者は入れさせないとすれば別ですが、これは非現実的すぎましょう。


 しかし、福島をチェリノブイリのように永久に立ち入り禁止にしてしまうことは、狭い日本ではやってはならないことです。近い将来に安全に住めるようにしなければなりません。
 そのためにはどうすればいいか。どう除染すればいいか。
 現実には、いかなる除染をしても、それは移染であって、本質的には解決しないと言
われていますし、きっとそうでしょう。

 これは、被災地域に山が多く、山からどんどん放射能が平地に流れ落ちてくることが大きな要因になっていると思われます。これが田んぼに流れ込み、また、水路にホットスポットを作るのでしょう。そして、これが豪雨によって河川に流れ込み、最終的に海に流れ出ることになりましょう。

 こうして、過去の公害による水質汚染と同じ経路をたどり、汚染の拡大と健康被害を起こすことになります。

 これに対して、政府は、過去に行なわれた除染対策と同じ手法でもって対応しようとしているのですが、同じ方法では本質的に間違っていると言えます。

 なぜならば、過去の汚染源は特定の1地点でしたから、汚染源を絶った後での対処法ですので効果が上げられたのに対して、今回の汚染源は広範囲に薄く降下した放射能ですから、広大な山地という汚染源を絶つことはできず、平地の汚染が今後も進みますので、従前の対処法では効果が上がらないのは必然です。

 そこで、汚染源を立つことができるかとなると、これはどだい無理な話です。

 じゃあ、どうすればよいかとなると、チェリノブイリと違って降雨量が非常に多い日本ですから、雨によって流し去ってくれるのを期待するしかないでしょう。

 その雨によって流されてきた放射能は、先に書いたように、田に流れ込み、水路にホットスポットを作り、河川に流れ込み、最終的に海に流れ出ることになりましょうが、田への流入以外は、これを促進させるべきでしょう。

 これにより、当分の間、河川と海の汚染は続きますが、それを是認すべきです。用水路、排水路の汚泥をどんどん河川へ流し込み、豪雨の助けを借りて海へ流し去るべきです。当然のことながら、建物などに被った放射能を高圧洗浄して生じた汚染水は排水路へ流し去ればよいのですし、その排水路の土砂も高圧洗浄して河川へ流し込めばよいのです。

 これによって、海洋汚染することになりましょうが、事故でばら撒かれた放射能の8割方は既に海に落ちたことでしょうから、2割分程度の追加汚染は誤差範囲と捉えてもよいのではないでしょうか。加えて、「海はドブである」のですから、何もかも受入れて希釈してくれる存在です。(このことについては、2011.5.17付け「原発の放射能汚染水の処理」で記事にしました。何と、フランスでは放射能汚染水を恒常的に英仏海峡に放流しているのです。)

 これによって、福島近海での魚介類の放射能が低下する速度は若干鈍るでしょうが、魚業者に我慢していただくしかありません。

 こうして、放射能の供給元がクリーンになってから、田の土壌改良に着手するしかないのではないでしょうか。

 放射能の除染は人間の力ではどうしようもないのですから、ここは「母なる海」にもう少し甘えてもよいのではないでしょうか。「海はドブである」のですから。