6カ国協議が合意に達したそうな。
イラク、イランで手一杯の米国が折れに折れて、最後は北朝鮮に足元を見透かされ、法外な要求を突きつけられた挙句、北朝鮮の言い値(重油200万トン)の半分(しかし、こちらの予測(50万トン)の倍!)で合意した。
拉致問題を抱える日本は、エネルギー支援5万トン(第一段階)の多国間枠組みには入らないらしい。
日本外交は敢えて孤高を貫いた。だが、この際やむを得ないと思う。
今日の予算委員会で前原代議士が鋭く指摘したように、たしかに北朝鮮の核放棄という多国間の戦略的利益と拉致問題の解決という国益の間には簡単に優先順位を付けがたいディレンマがある。韓国は、我が国よりも多数の拉致被害者が存在する(公式には486人とされる)にもかかわらず、戦略的利益を優先し、率先して対北朝鮮支援に乗り出す構えだ。朝鮮半島の安定化を戦略的利益の第一に据える中国とロシアも合意に邁進した。当面は中東安定化に注力したい米国も追随。「拉致はずし」を嫌う日本は、最後まで安易な妥協に抵抗し、孤立してしまったように映る。
しかし、じつは孤立などしていない。
なぜなら、今回の合意は朝鮮半島非核化の「初期段階」のほんの第一歩に過ぎない。これから、ヨンビョンの核施設の稼動停止から、施設閉鎖、再処理施設の封印、NPT体制へ復帰してIAEAによる査察受け入れ、すべての核関連施設の査察、使用済み核燃料棒の除去、国外への撤去、施設の解体、さらに他の核開発プロジェクト(今回の合意に2002年以来米側がこだわってきたウラン濃縮型の核開発が不問に付されてのは疑問)の停止、廃棄、その検証・・・と、幾重にも幾重にも越えねばならないハードルが続く。そして、最終的には、我が国の大規模な経済支援なくして、北朝鮮の将来は展望できない。今回は敬遠しても、いずれ日本には本格的な出番がやってくる。
しかも、現実には我が国独力で拉致問題を解決する外交カードはない。だから、北の核放棄をめぐる「合意プロセス」そのものを梃子にしないで、拉致問題の解決は望むべくもない。米国はじめ国際的な関心を持続させる術もない。そして、私たちには、朝鮮半島エネルギー開発機構(Korea Energy Development Organization. KEDO)の苦い教訓がある。94年に米国が単独で北朝鮮との間で和睦し、核開発の凍結と引き換えにエネルギー支援を約束し、後から「請求書」だけ日本と韓国に送りつけてきた。総額15億ドルを、韓国11億ドル、日本4億ドルで分担。結局昨年5月末にKEDOプロジェクトは廃止、日韓は国民の税金をどぶに捨てたことに・・・。
我が国が、北朝鮮外交の基本原則である「拉致問題の解決なくして経済支援なし」を貫くことにより、核廃棄を迫る米国や中国は、同時に拉致問題の進展を北に促さざるを得ない。そうしなければ、6カ国合意の枠組みそのものが崩壊してしまう。合意崩壊は、米国にとっても北朝鮮にとっても議長国である中国にとっても避けねばならない事態だ。そこにこそ拉致問題解決への梃子の原理が働くのだ。
おそらく、今回の合意をめぐる日本外交の姿勢に対しては、「孤立」懸念や「圧力一辺倒」批判が高まるであろう。しかし、冷静に考えてみれば、我が国が失うものは何もない。国交正常化を急ぐ理由は我が方にはまったくない。最後に折れるべきは、経済的展望も今日の食糧もない北朝鮮の側である。日本外交の踏ん張りどころ。その意味で、今回、「間接的支援」などという曖昧な妥協点を探ろうとした外務省の動きは(十分理解できるものの)、北朝鮮から足元を見透かされないか多少不安が残る。国民的な支持と理解を持続させるため、政府は明快な説明をする責任があると思う。
イラク、イランで手一杯の米国が折れに折れて、最後は北朝鮮に足元を見透かされ、法外な要求を突きつけられた挙句、北朝鮮の言い値(重油200万トン)の半分(しかし、こちらの予測(50万トン)の倍!)で合意した。
拉致問題を抱える日本は、エネルギー支援5万トン(第一段階)の多国間枠組みには入らないらしい。
日本外交は敢えて孤高を貫いた。だが、この際やむを得ないと思う。
今日の予算委員会で前原代議士が鋭く指摘したように、たしかに北朝鮮の核放棄という多国間の戦略的利益と拉致問題の解決という国益の間には簡単に優先順位を付けがたいディレンマがある。韓国は、我が国よりも多数の拉致被害者が存在する(公式には486人とされる)にもかかわらず、戦略的利益を優先し、率先して対北朝鮮支援に乗り出す構えだ。朝鮮半島の安定化を戦略的利益の第一に据える中国とロシアも合意に邁進した。当面は中東安定化に注力したい米国も追随。「拉致はずし」を嫌う日本は、最後まで安易な妥協に抵抗し、孤立してしまったように映る。
しかし、じつは孤立などしていない。
なぜなら、今回の合意は朝鮮半島非核化の「初期段階」のほんの第一歩に過ぎない。これから、ヨンビョンの核施設の稼動停止から、施設閉鎖、再処理施設の封印、NPT体制へ復帰してIAEAによる査察受け入れ、すべての核関連施設の査察、使用済み核燃料棒の除去、国外への撤去、施設の解体、さらに他の核開発プロジェクト(今回の合意に2002年以来米側がこだわってきたウラン濃縮型の核開発が不問に付されてのは疑問)の停止、廃棄、その検証・・・と、幾重にも幾重にも越えねばならないハードルが続く。そして、最終的には、我が国の大規模な経済支援なくして、北朝鮮の将来は展望できない。今回は敬遠しても、いずれ日本には本格的な出番がやってくる。
しかも、現実には我が国独力で拉致問題を解決する外交カードはない。だから、北の核放棄をめぐる「合意プロセス」そのものを梃子にしないで、拉致問題の解決は望むべくもない。米国はじめ国際的な関心を持続させる術もない。そして、私たちには、朝鮮半島エネルギー開発機構(Korea Energy Development Organization. KEDO)の苦い教訓がある。94年に米国が単独で北朝鮮との間で和睦し、核開発の凍結と引き換えにエネルギー支援を約束し、後から「請求書」だけ日本と韓国に送りつけてきた。総額15億ドルを、韓国11億ドル、日本4億ドルで分担。結局昨年5月末にKEDOプロジェクトは廃止、日韓は国民の税金をどぶに捨てたことに・・・。
我が国が、北朝鮮外交の基本原則である「拉致問題の解決なくして経済支援なし」を貫くことにより、核廃棄を迫る米国や中国は、同時に拉致問題の進展を北に促さざるを得ない。そうしなければ、6カ国合意の枠組みそのものが崩壊してしまう。合意崩壊は、米国にとっても北朝鮮にとっても議長国である中国にとっても避けねばならない事態だ。そこにこそ拉致問題解決への梃子の原理が働くのだ。
おそらく、今回の合意をめぐる日本外交の姿勢に対しては、「孤立」懸念や「圧力一辺倒」批判が高まるであろう。しかし、冷静に考えてみれば、我が国が失うものは何もない。国交正常化を急ぐ理由は我が方にはまったくない。最後に折れるべきは、経済的展望も今日の食糧もない北朝鮮の側である。日本外交の踏ん張りどころ。その意味で、今回、「間接的支援」などという曖昧な妥協点を探ろうとした外務省の動きは(十分理解できるものの)、北朝鮮から足元を見透かされないか多少不安が残る。国民的な支持と理解を持続させるため、政府は明快な説明をする責任があると思う。