日本福音ルーテル長崎教会

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04Oct
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  【２０２３年主題聖句】「小さな群れよ、恐れるな。あなたがたの父は喜んで神の国をくださる。」（ルカによる福音書１２章３節）２０２０年４月２７日ホームページを引っ越しました。旧ホームページはこちら。お知らせ☆旧お知らせとホームページの更新履歴は、こちら。☆九州教区セミナリオ委員会による案内が届きました。これからＹｏｕＴｕｂｅの配信で勉強が可能です。詳細は当教会までお問い合わせ下さい。☆８月９日（水）に予定されていた長崎キリスト教平和祈念礼拝は台風のため、一日前倒しで、当教会で録画の礼拝を行いました。「長崎キリスト教議会平和記念礼拝」をパソコンやスマートフォンで検索すると視聴できます。☆７月１８日～（毎月第３火曜）７：３０～８：３０、コロナ蔓延防止のため中断していた「長崎朝祷会」が再開します（於、カトリック中町教会）。どうぞご参加ください。☆２０２３年６月から、毎月の１週目は聖餐礼拝です。☆２０２３年４月から、当教会の礼拝に対するコロナ防止対策が徐々に緩和し始まります。ご協力ください。礼拝中、発声する時はマスクをしてください。☆２０２３年２月１２日　２０２３年主題聖句を更新しました。↑↑↑☆２０２２年７月２５日　日本キリスト教協議会『安倍晋三元首相国葬抗議声明』☆２０２２年８月５日　⽇本福⾳ルーテル教会社会委員『安倍晋三⽒「国葬」の閣議決定にあたって』☆当教会の感染症対策について礼拝・集会のご案内・聖書を読み讃美歌を歌う会　毎週木曜１０：３０～１２：００・聖書輪読会　毎週日曜１０：００～１０：１５・主日礼拝２０２３年１０月８日１０：３０～聖霊降臨後第１９主日「異次元の救済計画」点撃這里可収看中文講道録像黄大衛牧师９月１７日的中文証道黄大衛牧师９月２４日的中文証道黄大衛牧师１０月１日的中文証道日本語メッセージ（ＹｏｕＴｕｂｅ）９月１７日聖霊降臨後第１６主日９月２４日聖霊降臨後第１７主日１０月１日聖霊降臨後第１８主日・とらねこ文庫の絵本の時間　毎週火曜１０：３０〜１１：３０・一服せんね　毎週水曜　お休み１１：００～１５：００電話　０９５－８２３－５４５９Eメール　nagasakilutheran@citrus.ocn.ne.jp（メールを下さる方は、上記メール・アドレスをコピー & ペーストして下さい）
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  [メッセージ]　　　　　　　　　　　　　　　　　　　長崎教会牧師黄大衛過去のメッセージ一覧はこちら。２０２３年１０月１日（日）　聖霊降臨後第１８主日「イエスの権威」権威について　今日の聖書でイエス様は権威を問われています。23節。「イエスが神殿の境内に入って教えておられると、祭司長や民の長老たちが近寄って来て言った。『何の権威でこのようなことをしているのか。だれがその権威を与えたのか。』」と。この質問のきっかけは、イエス様が神殿に入って、勝手に商売人を追い出したり、病人たちを治したり、人を教えたりしたからです。私はいつもこの質問を面白く思います。皆さん一緒にその場面を想像しましょう。ある日、イエスという人が偉そうに人々を率いて神殿に入りました。そして勝手にそれまで普通だった事を否定する。そしてその場所の中心人物のように振る舞う。悪いことはしていない。寧ろいい事もしている。もし皆さんがその日、ちょうど神殿にいたなら、それをどう思いますか？多分こう思うでしょう。「この人にそんな権利があるのか？」「この人はそんなに偉いのか？」と。ですから、当時の教会の偉い人たちがイエス様に質問したことも当然なことです。さて、ここで問題されているのは「権威」なのです。今も昔も、日常生活ではルールがあります。それを維持するために秩序が出来、権威が生まれました。それについて誰もが慣れているので、問題があると思いません。どんなに小さな集団でもリーダーや長がいます。家庭にも世帯主がいます。この教会は幾つかのコーラスグループに会場を貸しますが、それぞれのグループにも代表の方、責任者がおられます。イエスが気付いた権威　それなのにイエス様は秩序を無視して行動しているように見えます。イエス様は権威を否定しているのでしょうか？意外なことに、イエス様ご自身も「権威」について語っているのです。例えば、イエス様は病を癒す時、相手にこう言いました。「子よ、元気を出しなさい。あなたの罪は赦される」と。すると、そばにいた学者たちに違和感を与えたのです。イエスは、それに気付いてこう言いました。「なぜ、心の中で悪いことを考えているのか。『あなたの罪は赦される』と言うのと、『起きて歩け』と言うのと、どちらが易しいか。人の子が地上で罪を赦す権威を持っていることを知らせよう。」そして中風の人に、「起き上がって床を担ぎ、家に帰りなさい」と言って病を癒したのです。この時、イエス様は癒すだけでなくご自分の権威も表したのです。また、イエス様は別の場面でこう言っています。「わたしは天と地の一切の権能を授かっている。だから、あなたがたは行って、すべての民をわたしの弟子にしなさい」と。勿論、権威と権能は日本語には似たような語彙ですが、違う言葉です。「権威」は権限や許可を示し、「権能」は力や能力を示す言葉です。要するに、イエス様も権威や権能を無視していませんし、寧ろ明白にご自身の権威、権能を語っています。人の思い込みの権威　では、なぜイエス様は権威に基づいて行動しても疑問視されたでしょう？・・・それはイエス様が当時の社会で認められていなかったからです。それ故教会の上層部の人たちに問題視されたのです。ですから23節の質問は当然の質問です。「あなたは何の権威でこれらのことをしているのか」と。しかしイエス様は質問に答えず、逆にこう聞きました。24節、25節。「では、わたしも一つ尋ねる。それに答えるなら、わたしも、何の権威でこのようなことをするのか、あなたたちに言おう。ヨハネの洗礼はどこからのものだったか。天からのものか、それとも、人からのものか」と。ここでイエス様は洗礼者ヨハネの話題に出しました。当時洗礼者ヨハネは大変活躍しました。ユダヤ教の本質を人々に示し大きな影響を与えました。それで、彼は群衆にとって預言者のような存在でした。ところが、彼も何の資格も持っていませんでした。ですから、この質問に教会の上層部たちが困りました。この偉い人々は群衆を気にしているので、彼らの本音を言えません。彼らの本音は「人からのものだ」です。しかし一方「天からのものだ」とも言いたくないのです。ですから本心を隠して「分からない」と答えました。つまり、教会の偉い人たちは洗礼者ヨハネ、そしてイエス様のようにブランドはなくても実体がある神の権威は認めません。逆に実体がないブランド、即ち律法学者という立場を認めるのです。・・・言い換えれば、看板はなくても中身があるイエス様を認めることは、看板だけで中身のない自分たちを否定することだからです。考え直す必要　さて、イエス様はこの尋問に引き続き、「二人の息子」の譬えを話し始めたのです。この話の概ねはこうです。2人の兄弟は、父親の命令に、態度は正反対でした。兄は最初断っても、後で後悔して従ったのです。一方弟は「はい」と答えても、命令を無視しました。この二人の兄弟を見たら、比較的にお兄さんの方がいいと思えるでしょう。結果的に父親の望み通りにしたからです。従って、この例え話の目的も分かります。それは、たとえ私たちが自分の思いにかじりついていても、考え直す必要を示しているのです。イエス様は模範　実は、イエス様は私たちに、一方的に考え直しを促すだけではなく、ご自身をもってその模範を私たちに示しているのです。ここで、新約聖書のフィリピの信徒への手紙2章6節～8節を引用します。「キリストは、神の身分でありながら、神と等しい者であることに固執しようとは思わず、かえって自分を無にして、僕の身分になり、人間と同じ者になられました。」と。ここにある模範は、この「固執しようとは思わず」という事なのです。まさにイエス様が神の身分にこだわらなかった姿こそ、私たちへのお手本です。小さな平凡な家庭に生まれ育ち、庶民として生きられたイエス様。救いの計画の実現のために犯罪人として刑罰を受けることすら受け入れたイエス様。このイエス様の姿に真の神の権威を見出す人は幸いです。このイエス様を見て考え直し、イエス様の権威と力を認める人が教会に集められるのです。まさに譬え話の兄弟の兄のように、です。どうかイエス様が神の身分に固執せず人となられた事を心に留め、改めてイエス様の救い主としての権威の本質を吟味しましょう。そしてイエス様の教えに従いましょう。２０２３年９月２４日（日）　聖霊降臨後第１７主日「『拾う神』がここにいる」葡萄園の労働　想定外の好意を受けることは、恵みです。イエス様からの招きはそういうものです。今日の聖書の言葉で言いますと、「後にいる者が先になる」という恵みです。イエス様はここで、福音を、就職に喩えておられます。ここでの仕事は葡萄園勤務です。葡萄を収穫して葡萄酒を造る季節労働です。ユダヤでは葡萄の収穫は9月だそうです。この時期は朝の6時頃から明るくなり、日中はまだ暑く、夕方の6時頃には暗くなります。間に食事や休憩はあるでしょうが、一日12時間位働くことになります。葡萄園での日雇いの仕事は、当時としてはごく普通のことでした。なぜなら、葡萄の収穫に適した時期は短いのです。つまり早ければ甘味不足、遅ければ甘過ぎになって葡萄酒の出来上がりが悪くなるからです。従って、収穫時期は集中するので、多くの労働者が必要になります。さて、葡萄園の主人は一日の賃金について、朝一番に雇われた人々と一デナリオンの約束をしました。この額は当時の一家族の一日の生活費に相当します。また、その後で雇われた人に、相応しい賃金を払うと約束しました。不平等な事実　ところで通常日雇いの労働者募集は朝1回だけです。しかし、先触れたように、この譬えの中で、その募集が5回あったのは、かなり異例なことです。さて、働き始めた時間は様々でした。いよいよ、一日の終わりに給料が払われます。朝一番の人と夕方近くの人。皆さんが雇い主ならどちらから払いますか？私なら、労働時間の一番長い人から払い始めるでしょう。しかし何とこの話の雇い主は1時間働いた人から始めたのです。しかも、賃金は全員同じなのです。これには労働者から文句が出ました。当然でしょう。１時間と12時間の労働は勿論12時間の方が疲れるのです。私は重労働を経験したことがあるので、このような不満が充分理解できます。夜明けから働いた人々は、最後に来た者たちの12倍の長い時間を働いても、同じ賃金ということは、どう考えても不平等です。私は今年の３月まで大学でキリスト教概論を教えていました。昨年度も大学生にこの話を教えました。そしてこの譬え話の解釈を説明するのですが、毎年、2％以上の学生はこの給料問題に納得ができないのです。「どう見ても、不平等です。納得できません」と。神の弱者への憐み　この感じ方は当然だと思います。しかし、視点を変えてみましょう。もし皆さんが最後の１時間の人だったらどうでしょうか？誰にも雇ってもらえずに、あてもなく待っているその一日は苦しい一日です。それが１日、２日と続いたらどんな気持ちでしょう？就職氷河期という厳しい時期がありました。申し込んでは企業に断られる学生たち。最近であればコロナ感染症で仕事を失った人たちがいました。生活の心配、社会から取り残される寂しさと共に、自分という存在の重要感が揺らぐ痛みがあったと思います。このような不安感、焦り、痛みは昔も今も共通だと思います。さて、葡萄園のお話では「仕事がない、今日も一日が終わる」と失望した労働者に、思いがけない恵みが訪れました。何と夕暮れ時に雇われ、一日分の給料を頂けたのです。この最後に雇われた人たちは、一見、労働時間が一番短くラッキーに思えます。しかし彼らは雇われるまでの待ち時間が一番長かったのです。その間に、彼らの味わった絶望感は11時間です。暑い最中の肉体労働は辛いです。しかし一日の終わりには給料がもらえる希望があります。一方夕方雇われた人は何時間も「夜空しく家に帰るかもしれない」絶望と共に、ただそこにいるのです。希望のある一日と希望のない一日。皆さんはどちらを選びますか？私なら体は辛くても希望のある一日を選びます。この話の雇い主は労働者の仕事がない虚しい時間を見ています。ここから、この葡萄園の主人の深い優しさを読み取れます。実は、このように葡萄園の主人に憐れまれた人々の姿は、他人事ではなく、私たちです。また不平等であれ、憐れみであれ、いずれにしても、この13節、14節の言葉を見落とせません。13節、14節。「主人はその一人に答えた。『友よ、あなたに不当なことはしていない。あなたはわたしと一デナリオンの約束をしたではないか。自分の分を受け取って帰りなさい。私はこの最後の者にも、あなたと同じように支払ってやりたいのだ』」と。イエス様が言われたように、実はここには不当なことはありません。なぜなら、葡萄園の主人は一デナリオンという約束の賃金を破らなかったからです。福音の本質　特に、イエス様の「私はこの最後の者にも、あなたと同じように支払ってやりたいのだ」という言葉に注目したいのです。まさにこれこそ、神の御心なのです。つまり、イエス様はこの誰も雇ってくれない者のような弱い者を救いたいのです。この譬えにある福音の本質を理解できるために、この譬えの登場人物を考えましょう。ここで言う葡萄園の主人は神なのです。葡萄園で働けることは天国に行ける資格を指しているのです。そして12時間働いた人はユダヤ民族を指しています。それ以降に雇われた人たちは、ユダヤ民族以外の人を指しています。そもそも失業確定で選ばれないグループです。つまり神の救いと関係ない人たちなのです。また、その中の9時間を働いた人たちは、当初イエス様に従った人たちや初代教会の信仰の先輩を指していると思います。そして、私たちはそれ以降の6時間、3時間、乃至1時間を働いた人たちの列に入るでしょう。この世が続いている限り、誰の働いた時間は一番短いのかが分かりません。その通り、私たちはこの6時間か3時間かの列に入っているかもしれませんし、1時間の列に入っているかもしれません。いずれにせよ、明白なのは、私たちにはそもそも不平不満を言う資格がない、ということです。なぜなら、私たちは神様に特別に憐れまれ、恵まれたからです。まさにイエス様の十字架上の贖いという恩寵を受けたからです。逆に、私たちが希望なく、空しく夕方に雇われたような者であると自覚できるなら、神に対する感謝の気持ちも、溢れる程になってくるはずでしょう。そして、イエス様の次の言葉が私たちの胸に響くでしょう。「私はこの最後の者にも、あなたと同じように支払ってやりたいのだ」。・・・この主人の言葉から、神様による救いは私たちにとって、不平等でなく実は平等であることを知ることが出来ます。神様はまさにこのような気持ちで、私たちを前後の順序を問わずに救われるのです。これこそ、福音の本質なのです。これを心に留め、神様の気前のよさに賭け、私たちの人生の励みとしたいものです。２０２３年９月１７日（日）　聖霊降臨後第１６主日「何度まで赦すか？」序　今日のテキストは、二つの部分で成り立っています。一つは弟子の質問、もう一つは質問に関する例え話です。この二つは「どれだけ赦すか」を扱っています。今日のテキストを読むと、私はいつも反省します。「人間は弱い。神様から私は赦されていても、人には厳しいし赦さない」と。それで、悔い改めて赦せる人になりたいと思うのです。しかし、私のこの読み方の結果は、神様でなく自分が中心に力んで終わるのでした。　それを繰り返してきた私は、この読み方でよかったのか問いかけつつ、お話を準備しました。ご一緒にもう一度テキストに耳を傾けていきましょう。比べられない神の愛　聖書本文に戻りましょう。今、イエス様の一番弟子であるペトロはイエス様に、「主よ、兄弟が私に対して罪を犯したなら、何回赦すべきでしょうか。七回までですか」と尋ねています。この、「七回まで」という言葉は目立つ言葉だと思います。私たちの感性ですと、まず我慢は「3」回を思うでしょう。例えば「赦しが3度まで」という言葉は中国にも、日本にも共通していると思います。日本ですと「仏の顔も三度まで」です。他の地域はどのようであるか分かりませんがスポーツのルールの警告ややり直し回数など見ても７回までというのは思い当たりません。しかしペトロはここで「七回まで」と言っています。私は、ペトロも初めは三度と言おうとして、考え直して回数を増やしたのではと、想像します。つまりペトロは、少し先回りをして、先生に褒めてもらいたいと思ったのではないかと。しかし、イエス様はこう答えました。「七回どころか七の七十倍までも赦しなさい」と。イエス様のこの「七の七十倍」という言葉は、490回ではないのです。ユダヤ民族における完全数かける完全という意味の言葉なのです。つまり「無限に赦せ」、ということです。そして、イエス様はそれを説明されるかのように、23節以下の例え話を始められたのです。ここに出ている「一万タラントン」と「百デナリオン」という二つの借金の数字には、実は、五十万倍の差があります。「一万タラントン」は当時で、およそ五千万人分の労働者の一日の賃金に相当します。勿論、この例え話はすごく分かりやすい話なのです。この話しで僕は、とんでもない額の借金を赦してもらった。しかし自分が貸したわずかな額を赦せない。この僕は何たることか、という話です。しかし、この話の言いたいことは、もっと深いと思います。なぜなら、イエス様は、この話をしてから、「善悪」についてのつまらない質問をしていません。イエス様はペトロに対しても、弟子たちに対しても、これは、あなたがたの物語だ、と言うのです。言い換えれば、私たちに対しても言っています。これは、あなたの物語だと。では、この例え話の目的は何でしょう？「自分に甘く他人に厳しくしてはいけないよ」という教訓でしょうか？それとも私たちが自分の狭い心を悔い改めることでしょうか？私は違うと思います。イエス様の話しの目的は、神と人の対比なのです。人が神様から受けている恵みと、人が人に与えた愛との対比は、比べられないものだと示すためです。ですから、「何度まで赦そうか？」という算数をする前に、まず「この対比を見よ」と言っているのです。自発的対応できない人間　これこそは、私は今日、皆さんにどうしても伝いたいことです。つまり、神様の愛と赦しの大きさを味わいたいのです。聖書を見ましょう。27節にこういう言葉があります。「その家来の主君は憐れに思って」と。この「憐れに思って」という言葉は、翻訳不能とよく言われる言葉です。元の言葉は「はらわた」という言葉に由来します。「はらわたが痛くなる」という意味の言葉です。「胸が痛くなる」と言ってもいいと思います。それ程に、深い、激しい、他者のための痛みを負う心がここにある、という意味です。また33節を見ましょう。33節。『私がお前を憐れんでやったように、お前も自分の仲間を憐れんでやるべきではなかったか』と。この「憐れむ」という言葉は、27節とは違うものですが、同じく神様の憐れみを示す言葉なのです。特に、ここの「憐れんでやるべき」という言葉は、道徳的な教えを教える「こうすべきだ」という意味の言葉ではありません。「こうしないわけにはいかない」、「これ以外に道はない」という意味の言葉です。種を蒔いたら、芽を出し、成長していくことは当り前のことです。従って、この「憐れんでやるべき」という言葉も、それと同じような自然現象を表わす言葉です。そして35節にこういう言葉もあります。「あなたがたの一人一人が、心から兄弟を赦さないなら」と。この例え話の中でこの「心から」は重要な意味です。「心から」なのです。「心から兄弟を赦す」のです。立ち止まって考えれば心から人を赦すなど不可能に思えます。体や心を傷つけられたらやり返さなければ気がすみません。忘れたふりはできても心から赦すは無理ではないでしょうか？・・・しかし、イエス様はできないことを私たちに命じているのではありません。神の御心　ペトロは一回二回、と自分がどれだけ頑張れるか数えました。それに対してイエス様は神と人の対比を見せました。私たちは神様の尽きない赦しの中にいます。スプーン一杯、二杯の貸し借りのレベルではありません。大きな海を丸ごともらうような赦しに移されているのです。イエス様に表された神の赦しと愛の心は、まさに湖の中に石が落ちてできる波紋の真ん中にある渦なのです。イエス様の来臨、その業によってこの渦が生じたのです。そして、私たちの歩みはその渦の波紋に違いありません。なお信仰では、このイエス様の愛は、神様がわざわざ心を込めて計画されたものです。ですから、今日の福音書の二つの部分を合わせて考えれば、イエス様は私たちにこういうメッセージを伝えたに違いありません。神はあなたを赦した。あなたは赦され、愛された人としての人生を歩むことができるのだ、と。つまり、「もし赦さなければ罰する」、という意味でも、「歯を食いしばって赦す」意味でもありません。まずイエス様から目を離さず神の愛と赦しを見ましょう。そして私たちがイエス様にその身を委ね、心の中心にイエス様を迎えれば新しい行動は始まるようです。どうかこれを心に留め、この一週間を赦され愛された者として出発しましょう。２０２３年９月１０日（日）　聖霊降臨後第１５主日『神はここにいる』神はここにいる　皆さんは、「神は本当に生きておられるのか」と疑ったことがありますか？実は、牧師である私でもこの疑問を抱くことがありました。神の存在を疑ったことがあってもなくても、イエス様は、こう約束されています。「二人または三人が私の名によって集まるところには、私もその中にいるのである」と。この約束故に、イエス様は今私たちと共におられます。これは信仰の大切な前提です。これを疑うと、この礼拝も空しくなるでしょう。要するに、今もイエス様は生きておられ、ここにおられます。聖書の教えによれば、イエス様は聖霊の形で私たちと共にいてくださるのです。そのことを信じるならば、たとえ一時の疑いがあっても、信仰は成り立つのです。見えないからこそ神　それにしても、イエス様は目で見えません。そのため、信じにくい面もあります。私たちは、イエス様が今も当時のように体をもって存在するならば、信じやすいと思うでしょう。この思いに関する話として私は神学校時代の話を思い出します。私が、「新興宗教はなぜ盛んになってくるのか？」と聞いた時、こう教えてもらいました。「教祖が目で見えるため、信者が落ち着きやすいから」と。確かに、そうかもしれません。しかし、よくよく考えてみると、私たちのこの肉体や、感覚は確かなものでしょうか？本当は、確かな物とも言えないでしょう？なぜなら教祖が目の前に存在しても、その肉体はいつかに死と共に消えるからです。ここで、私の知人の言葉を思い出しました。こうです。「新興宗教が盛んになっていても、私にとって、信じられないことです。なぜかと言えば、私は、『神は見えない。見える者は神ではない』という言葉を堅く信じています。しかし、新興宗教は殆ど見える神様が付いているからです」と。この言葉は面白くて、大変印象に残りました。本当に、どんな新興宗教でも、教祖が人間ならばいつかは消えるはずです。勿論、「イエスだって消えたじゃないか」と言えばその通りです。しかし、イエス様の約束とその言葉の確かさがあるのです。それは信仰と理性によって吟味され体験されながら現代に至っています。実に私たちは聖書を神の言葉と認め、その聖書が示すイエス様を信じ、その約束を信頼するのです。聖書の示すイエス様のご人格、その神としての超越性、人を救うために人と同じようになってくださったという驚くべきあり方、そういった一つ一つを通して私たちは目には見えないイエス様を愛し、このお方に賭けているのです。私たちの真ん中にいる　さて、今日のテキストの中で、「二人」、或いは「二人または三人」という言葉が何度も繰り返されています。とりわけ、先程の、20節にある約束は大変重要です。二人でよい。三人でよいのです。ところで、私が人々から相談をお受けした時、よく問われた一つの質問があります。それは「祈る時、どの方向に向かえばいいのか」と。私はこの質問を聞いて、初めてこういう事実に気付きました。つまり、神のいる方向性がそもそも私の頭に存在していなかったことを。なぜ方向性に無頓着なのでしょう？それは、神が私たちの中にいるからです。さて、「その中にいる」というギリシャ語の原語には、「真ん中にいる」という意味があります。ここに一つ見逃せないのはまさに「真ん中にいる」ことです。守護神のように周りに立つのではなく、私たちの真ん中にいます。そうであれば、ここに集まっている私たちの、誰かからは遠いとか、誰にとってはより近い、ということはありません。〈真ん中〉というのは、誰からも同じ距離、誰にも一番近くに、イエス様はいてくださるのです。神は中心　また、この「私の名によって」という言葉から、この集まりの中心は、誰かという意味を明らかにする必要があります。つまりイエス様が教会の頭です。しかし個々の教会を代表している神の僕である牧師は、確かにその中心に立っているに違いないのです。ここで、私は神学生時代の実習での一つのことを思い出しました。日本の教会では、牧師以外に『先生』と呼ばれる方が多いのです。つまり教育関係、医療関係、などの仕事をしている方です。そのため、私の指導牧師は、自分の教会で、神の僕を中心にするために、教会に入ったら、牧師を除いて、『先生』と呼ばないように、と信徒教育をしたのです。それは牧師自身に権威を持たせるためではありません。教会において信者の目線を世俗の視点から神様に集中させるためでしょう。このように牧師は教会の秩序のために立てられます。それでも今、牧師としてここにいる私も、或いは他の代議員、役員がリードしているとしても、教会の中心ではありません。イエス様こそ、この中心です。確かに、ここの「名によって」という言葉は、分かりにくいかもしれません。どうも「誰々の名を借りて」というような理解をしそうです。けれども、ここでは、イエス様の名によって集まるというのは、そんな意味ではありません。もっと深い意味です。即ち、私たちが、ここに集まっているのは、そのただ中におられる、イエス様によって、私たちが、全存在まるごと、イエス様によって支えられた者の集団であることを意味します。私たちの心を合わせること　それはなぜでしょうか？なぜ「名によって」という言葉にイエス様の支えの意味を受け取ることができるのでしょうか？その理由は19節にあります。19節。「はっきり言っておくが、どんな願い事であれ、あなたがたのうち二人が地上で心を一つにして求めるなら、私の天の父はそれを叶えてくださる」と。これこそイエス様の約束です。神様がただ私たちの真ん中におられるだけではなく、私たちの願いも、どんなものでも、聞き入れ、叶えてくださっているのです。私はいつもこの言葉に励まされます。この「どんな願い事であれ、あなたがたのうち二人が地上で心を一つにして求めるなら」という言葉は、「地上で響きを一つにする」と言い換えることができます。ここに、「心を一つにして」とあります。ここで使われているギリシャ語原語から生まれた「シンフォニー」という音楽用語があります。それは、「響きを共にする」という意味の言葉です。つまり、交響曲のように響きを重ねて、祈りをするのです。教会とは他の集団と違い、年齢も仕事も職業も多様です。実際私たちは声の色も大きさも違います。そしてその違いを認め合うのが教会です。いろんな違いがあっても、イエス様の名によって一緒にいることができるのです。それはイエスの名によって祈るからです。そして、そのイエス様が、真ん中に生きてくださり、私たちを支えてくださるのです。それを心に留め、この教会でもますます公にも個人的にも祈りを共にしてイエス様の存在を、体験を生き生きと体験したいものです。２０２３年９月３日（日）　聖霊降臨後第１４主日『自分の十字架とは』「自分の十字架」とは　今日の聖書で、「自分の十字架を背負って、わたしに従いなさい」というイエス様の言葉は印象的です。この「十字架」とは、そもそも古代の残酷な処刑道具です。実際イエス様は十字架刑を受けました。今、イエス様は、まだ誰もイエス様の将来の十字架刑を知らない時に弟子たちに対してこの言葉を言っています。「自分の十字架を負え」、と。さて、私たちは現代人です。十字架と言えばキリスト教。それはイエス様の受難、と連想します。そして「自分の十字架」と聞けば、自分の人生の苦しみを連想するでしょう。そうなるとイエス様についていく人生とは、重たくのしかかる十字架を頑張って背負うイメージになります。それではイエス様は私たちに苦しい人生を望んでいるのでしょうか？一方、聖書にはこういうイエス様の言葉もあります。ヨハネ福音書15章11節の言葉です。「これらのことを話したのは、わたしの喜びがあなたがたの内にあり、あなたがたの喜びが満たされるためである」と。これはイエス様が弟子たちに向けて語った言葉です。イエス様が弟子の内に喜びがあるように働きかけています。そうであるなら、「自分の十字架を背負う」ことは、決して苦しみではないと分かります。信仰の目的　では、イエス様について行く、即ち信仰を持つとは何を目的にしているのでしょう？・・・私たちが信仰を求め始める目的は様々であると思います。例えば、幸福や順調を求めるため、成功のため、などなどでしょう。・・・それはそのままでいいと思います。特にキリスト教の信仰を受けるきっかけとしては、何でもいいのです。それは生まれたばかりの赤ちゃんに似ています。赤ちゃんは生まれた時、この世に対して、何も分からなかったでしょう。ところが成長に伴い、周りに対して徐々に正しく認識できるでしょう。信仰も同じです。認識に伴い成長するからです。それはイエス様の一番弟子ペトロを見て分かります。さて、先週の説教に既に触れましたが、弟子たちの信仰の始まりは未熟です。それぞれがイエス様に対して勝手な理解と期待を持っていました。それは弟子ペトロも例外ではありません。ですから、彼はイエス様の受難予告を聞いたら、自分の期待とずれていると分かり、すぐ行動に出ました。聖書の22節を見ましょう。22節。「すると、ペトロはイエスをわきへお連れして、いさめ始めた。『主よ、とんでもないことです。そんなことがあってはなりません』」と。その時、ペトロは知らないうちに、実にイエス様に対して「とんでもないこと」をしてしまったのです。人間のこと　実は、聖書の流れによれば、その時のペトロは、イエスへの信仰告白によってイエス様に褒められたばかりでした。ですから、彼もその時の気持ちに乗ってしまい、大胆に先生のイエスを自分のわきに引っ張って、イエス様を諫め始めたのです。イエス様のこの受難の発想をできるだけ早く撲滅したかったからです。ですからイエス様にすぐこう責められたのです。23節。「サタン、引き下がれ。あなたはわたしの邪魔をする者。神のことを思わず、人間のことを思っている」と。このイエス様の言葉から、信仰者が自分の思いで走ると、イエス様の邪魔者になる可能性があると分かります。ここで、私は70年前の、子ども時代の祈りをふと思い出しました。それはこうです。「神様、これからずっと私を守り、いい人を友達にさせ、悪い人を遠ざけてください」という内容でした。子どもの素朴な祈りですが、この祈りには自分が真ん中にいていい思いをしようとしています。この延長線で大人になった私は、人生で悪い、と自分が思うことが起こると、信仰が揺らぎました。どこかで、信仰をもてば悪いことは起きないと思っているからです。それは丁度イエス様の言った「神のことを思わず、人間のこと」だけを思う状態でしょう。当時のペトロも、「神を信じたら、悪いことは起こらない」と、大変素朴に考えていたに違いありません。これはある意味で深い真理です。しかし、「神のことを思わず、人間のこと」だけを考えたら、それは自己中心になってしまい、信仰上で大問題になります。「自分の十字架を背負う」とは　最後に、「自分の十字架を背負う」話に戻りましょう。ここの聖書で言う「十字架」は、イエス様ご自身の受難予告に由来します。聖書を見ましょう。21節。「このときから、イエスは、御自分が必ずエルサレムに行って、長老、祭司長、律法学者たちから多くの苦しみを受けて殺され、三日目に復活することになっている、と弟子たちに打ち明け始められた」と。それはイエス様の十字架上の死と後の復活を指す言葉ですので、当時の弟子はこの言葉がまだ理解できなかったはずです。しかも、イエス様の「自分の十字架を背負って、わたしに従いなさい」と呼びかけるきっかけは、ペトロがイエス様の救いの計画を止めたことです。それで、イエス様は自分について来たい人も自分の十字架を背負うべきと言い始めたのです。さて、改めて自分の十字架を背負うことには、いったいどういう意味でしょう？それは神の求められることを無条件に受け入れる生き方です。それは実際苦しいこともあるでしょう。しかし決して100％信仰者を苦しめるためではありません。それぞれの自分の負うべき責任や困難を必ず受け入れ、耐え忍びつつ成長し、神様のお役に立つことを意味しているのです。またペトロの事例を通して、神とのかかわりは一度の信仰告白で決められることではなく、いつも今という時を大切に、イエス様の歩みに従い続けることが求められていると分かります。・・・もっと言いますと、自分の十字架を背負うことは、イエス様の犠牲と贖いを模範にし、自己犠牲や忍耐、信仰の確立に伴い、神との繋がりを深める道なのです。要するに、自分の十字架を背負うことは、逆境に落ち込んでも、暗闇に留まってしまうのでなく、試練を通して鍛えられ、信仰を成長させることが目的です。責任、苦しみと言うと重く感じられますが、皆さんは十字架を背負う喜びを既に経験していると思います。小さな赤ちゃんを見ましょう。抱っこされて移動すれば楽ですが、どの赤ちゃんも自分で寝返り、お座り、ハイハイとなかなか大変な練習を飽きずに挑戦してついに歩けるようになります。寝返りだって実は十字架です。うまくいかずイライラして赤ちゃんは泣きます。可愛い赤ちゃんですが、よく観察すれば生後数か月の人生にもなかなかの十字架があるのです。しかしあきらめずに忍耐して挑戦しているのです。大人になった私たちもその十字架は相応しく与えられています。毎日の一つ一つの課題、十字架をしっかり受け止めるならそれはいつか喜びに繋がるのではないでしょうか？イエス様が死を経て復活し、救いを成し遂げたように。どうかこれを心に留め、元気な姿で神のことを思いながら人に神の救いを伝えましょう。２０２３年８月２７（日）　聖霊降臨後第１３主日「イエスこそ、信仰の鍵」イエスは誰か　イエス様は弟子たちに、「人々は、私を何者だと言っているのか」と聞きました。つまり、イエス様ご自身は「自分が誰か」という質問を弟子たちにしたのです。今日は、一緒にこの質問を考えていきたいのです。聖書を見ましょう。弟子たちはこう答えました。14節。「『洗礼者ヨハネだ』と言う人も、『エリヤだ』と言う人もいます。ほかに、『エレミヤだ』とか、『預言者の一人だ』と言う人もいます」と。このように、弟子たちはまず一般の人々の声を紹介します。群衆のイエス様についてのイメージは、様々でした。共通点は信仰の世界の偉大な預言者という点でしょう。当時の人々は、「イエスが誰か」は不明だったと分かります。それまで人々はイエス様の後を追い、教えを聞き、奇跡を見ていても、イエスが誰かは分からなかったのです。ここで言う「洗礼者ヨハネ」や「エリヤ」、「エレミヤ」、乃至「預言者の一人」は、いずれもユダヤ人の信仰では大変神に用いられた人であり、大変尊敬された、偉い人物でした。しかしいずれも人なのです。神ではありません。さて、イエス様は弟子たちにこう聞きました。15節。「それでは、あなたがたはわたしを何者だと言うのか」と。ところで、その時の弟子たちはたとえ24時間イエスに従い、共に生活し、共に旅を続け、苦しみも、悲しみも、喜びも共にしてきたとしても、信仰上では実にまだ未熟の状態だったのです。ですから、彼らはこの質問に戸惑ったと思います。救い主　ところが、その時、イエス様の一番弟子ペトロがこう答えました。16節。「あなたはメシア、生ける神の子です」と。ここで言う「メシア」とは、ヘブライ語で「救い主」の意味です。一瞬、「メシア」を聞きますと、ピンと来ません。実はこの言葉は私たちにとって、大変馴染んだ言葉であるはずです。なぜなら、「メシア」をギリシャ語で言いますと、「キリスト」だからです。今の社会で使われている「キリスト教」という言葉も、イエスをキリスト、即ち救い主として信じる宗教を意味するからです。そして、「生ける神の子です」と言いました。このように、ペトロは自分の前にいるイエスに対して、生きている救い主として認めました。それは人間として最初のイエスへの信仰告白、宣言と言えるでしょう。さてこのマタイの福音書は、特にユダヤ人に対して焦点が絞られた福音書と言われます。「メシア」「救い主」はユダヤ人にとって特別な存在です。メシアへの待望は、ユダヤ人にとって、信仰の基です。当時も、そして今も、周辺諸国に支配され、嫌われたりいじめられたりした経験を持つユダヤ人は、必ずいつの日か、神様が自分たちに真の王、救いをもたらす者を与える、と堅く信じ続けているのです。実はユダヤ教徒は今もなおメシア到来を待っています。そのような捉え方をしているユダヤ民族であるペトロがこの言葉を発したのは私たちが思う以上に深い信仰の表れなのです。目の前にいる若者、庶民出身の田舎者、確かに並みの人ではないとは思っても、イエスはどう見てもただの人に見えたはずです。そのイエスをペトロは神の子、メシア、と言ったのです。欠かせない神の働き　ペトロのこの答えはイエス様に喜ばれました。聖書を見ましょう。17節、18節。「シモン・バルヨナ、あなたは幸いだ。あなたにこのことを現したのは、人間ではなく、わたしの天の父なのだ。わたしも言っておく。あなたはペトロ。わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てる。陰府の力もこれに対抗できない」と。イエス様のこの言葉はペトロを褒めるだけではなく、神に用いられ、且つ祝福される事実、そして未来の期待や委託すら示したのです。では、ここまで読むと、ペトロは特別、偉大と思います。「いいなあ！・・・神に祝福されている」と思うでしょう。しかし、その時のペトロの信仰はその言葉に見合ったものでしょうか？・・・実はそうではありません。彼も、ほかの弟子と同じように、自己流の信仰に留まってしまい、イエス様への認識はまだチンプカンプンです。それは21節以降を読み続けると分かりますが、イエス様が弟子に自分の死と復活を予め知らせた時、ペトロはイエスをわきへお連れして、「主よ、とんでもないことです。そんなことがあってはなりません」といさめ始めたのです。ペトロは、イエス様の死、そして復活はあり得ないと思ったのです。つまりイエスを神と信じるが故にそう思うのです。たった今彼はイエス様に褒められました。だから、自分にはイエス様の決定を考え直せると思ってしまったかもしれません。ですから、彼はイエス様に「とんでもないことです。そんなことがあってはなりません」と諫めたのです。今の私たちは第三者の立場からペトロのこの言葉は不適切と分かります。実際イエス様に叱られてしまうのです。それ故、イエス様は彼を退けたのです。23節。「サタン、引き下がれ。あなたはわたしの邪魔をする者。神のことを思わず、人間のことを思っている」と。このように、ペトロは褒められて頂点に舞い上がり、直後に谷底に下る低さにまで責められたのです。ここから、人の信仰はいくら強くても、神ご自身の働きかけを欠けば、一瞬でひっくり返る脆さだと分かります。天の国の鍵　それにしても、ペトロは後々神様に大変用いられます。イエス様の18節からの厚い信頼と期待は実現します。18節、19節。「わたしも言っておく。あなたはペトロ。わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てる。陰府の力もこれに対抗できない。わたしはあなたに天の国の鍵を授ける。あなたが地上でつなぐことは、天上でもつながれる。あなたが地上で解くことは、天上でも解かれる」と。ここで言う「鍵」は、地上で実施できる天上の権能を指す言葉です。では、なぜペトロはそんなに立派な人でなくても、そんな権能をもらえるのかを言いますと、やはり彼の信仰と関係し、イエス様に堅く信頼されるからです。例えば、イエス様はペトロの裏切りを事前に分かっていても、こう言うのです。「わたしはあなたのために、信仰が無くならないように祈った。だから、あなたは立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい」と。ここに、イエス様の深い期待と信頼を読み取れます。要するに、ペトロは自己流の信仰に留まったとしても、堅くイエス様を信じていました。ですから、イエス様に重んじられたのです。考えてみれば自分と同年代か年下の若造をメシア、神の子などと宣言するのは、当時でも、そして今でも荒唐無稽な発言です。今でも一般の人々にとってイエスは歴史上の思想家だった人間なのです。ここにペトロの信仰の輝きを見るのです。真っ黒に日焼けした肉体で、厳しい自然と戦いながら漁師をしていた凡人。そのペトロに神はこのきらめく信仰をお与えになったのです。イエス様こそ信仰の鍵　この小麦色の埃と汗にまみれたペトロにある信仰のきらめき、彼に預けられた輝く鍵とは何でしょう。それはイエス様そのものです。ペトロに託された目に見えない鍵、それは私たちも受け継いだ信仰の鍵です。なぜならイエス様からもらえる鍵は、天国に行ける鍵であり、死を乗り越える鍵です。言い換えれば、イエス様を信じるならば、神の国と直接繋がる鍵を握ることになるのです。しかも、その鍵はイエス様のみによって与えられるものです。もっと言いますと、イエス様こそ、信仰の鍵なのです。ペトロその人は聖人ではありません。ペトロそのものに権威が託されたわけもありません。ペトロはイエス様を勘違いして裏切りました。ても、神様から選ばれて信仰を与えられました。そして神の力によって、素晴らしい働きをする先駆者になりました。つまり何もなくてもイエス様は神の子救い主、という信仰一つ握った者の代表として、イエス様という救いの鍵を受けた者として、光が当てられたのです。この信仰の告白一個を土台に、神の教会は建てられる、とイエス様も信仰告白していたのです。この弱い一人の人間を立たせて強くするのが神ご自身だから、イエス様の宣言と祝福は実現したのです。どうか、イエス様ご自身が信仰の鍵であることを覚え、このきらめく信仰の鍵を握っている喜びにこの一週間を立て上げて行きましょう。２０２３年８月２０（日）　聖霊降臨後第１２主日『願う私が試される時』試みについて　試みについて、一般的には「試練」という言葉が使われます。一方、聖書では、相手を「試す」、「誘惑」という言葉を使っています。例えば、イエス様が荒れ野で悪魔から受けた40日40夜の試みは「誘惑」という言葉を使いましたが、ファリサイ派の人たちがイエスに試みをする時に、「試そう」という言葉を使いました。ところで、私は中国人ですので中国の話をしますが、中国の教会では一般的に試される事と、神様から試される事に別々の言葉を使います。神様からのものには「試練」という言葉を使うのです。因みに一般的な意味の言葉は「試探」です。試すという字と探検の探、探すという字を使います。試探と試練については、一文字だけが違いますが、どういう違いがあるでしょう？私はこう思います。試探は相手の弱いところを探す。一方、試練とは、神が人を試みてその信仰を鍛える目的を持つものです。それは親子関係から考えると、理解しやすいと思います。つまり、親は自分の幼子を可愛く見ながら、時には子どもの成長のために、わざと幼子を試みます。テレビ番組の「はじめてのおつかい」など分かりやすいでしょう。子どもが無事におつかいを成し遂げると親や周囲は喜び、安心、感動の混じった表情を見せます。親は子どもを試す時、相当不安を感じるでしょう。親は子の安全と成長の間で、助けたくても近づきたくても忍耐して待ちます。そのような親心に裏打ちされた子どもの挑戦は、神からの試練に似ているのです。今日は人の成長を願う神を思いながら聖書を見ましょう。歴史的原因　さて、今日の聖書の21節から28節までは、カナンの女性がイエス様に助けを求める記事です。しかし、27節まで読みますと、このカナンの女性はイエスにいじめられたように読み取れます。聖書を見ましょう。21節には、「ティルスとシドンの地方」というその女性の出身地が記されています。聖書の付録として一番後ろに地図があります。「新約時代のパレスチナ」という地図を見ると、それは古代のフェニキアという地域に位置する都市です。フェニキアは紀元前1千年紀から紀元前1世紀まで繁栄した古代の都市で、地中海東岸に位置していました。この地域は当時のユダヤ人と異なる文化や宗教を持っていたため、ユダヤ人の目では神の救いから「外の人」なのです。しかも、24節の「わたしは、イスラエルの家の失われた羊のところにしか遣わされていない」という言葉から、当時の「イスラエル優先」という考えの枠を読み取れます。イエスの冷たさ　それにしても、イエス様の応対の冷たさも強く感じられます。まず23節を見ましょう。イエス様はカナンの女性の助け求めを聞いてこう対応しました。23節。「しかし、イエスは何もお答えにならなかった。そこで、弟子たちが近寄って来て願った。『この女を追い払ってください。叫びながらついて来ますので』」と。それまで女性とイエス様のやり取りでしたが、ここで弟子たちが登場します。なぜ弟子が登場したかと言えば、カナンの女性の求めに対して、イエスが殆ど無視しているからでしょう。更に突き放した言葉をイエス様は言います。26節。「イエスが、『子供たちのパンを取って小犬にやってはいけない』とお答えになる」と。この2つの言葉から、イエス様の冷たさと差別を強く感じます。イエスの本音　では、なぜイエス様はずっと冷たい態度だったのでしょうか？それはやはり27節の彼女の信仰を引き出すためだったのではないかと私は思います。27節。「主よ、ごもっともです。しかし、小犬も主人の食卓から落ちるパン屑はいただくのです」と。この言葉から、彼女はイエス様の前に自分の姿をいかに低くしたのかが分かります。ですから、イエス様はこの信仰告白を褒めたのです。28節。「『婦人よ、あなたの信仰は立派だ。あなたの願いどおりになるように。』そのとき、娘の病気はいやされた」と。この言葉から、イエス様の真意がやっと分かりました。それで、イエス様は彼女の信仰に喜び、称賛しただけではなく、その願いも叶えてくださったのです。確かに、信仰と言いますと、神様をひたすら信じることです。決して、自分の願い通りに、神様を動かすことではありません。よい学校に入りたいとか、幸福な結婚をしたいとか、などを神様にお願いして、その通りに、神様に何かしていただこうと思うことは、人格的な神の応答を求める心ではありません。キリスト教の信仰とは違います。神の言葉を聞き、応答するのが、信仰の心と言えます。信仰とは、私たち自分の思い通りではなく、自分の願いでもありません。寧ろ、神様の支配、神様の御心が、行われますようにと願うことです。要するに、私たちが心に刻む事は、イエス様の、「あなたの願い通りになるように」という言葉です。正しい信仰とは　ある牧師はそれについてこう言いました。｢この女性は、神様に逆らっている。神様に逆らって神様に祈りをしている。女性はイエス様に強制している。『こちらを向いてください。私の願い通りにこちらを向いてください』と言い続けた｣と。それは本当に理解しやすい言葉です。なぜなら、絶望するわけには行かないからです。イエス様がおられなかったら、いや、おられても、こちらを向いてくださらなかったら、絶望するより他なかったのです。始めは子供を助けたい母の情熱で相手もよく知らずにイエス様に求めたのでしょう。そして、イエス様に試されながら、女性の求めは溶鉱炉で溶かされた金属のように不純なものが取り除かれていくのです。そして最後に、イエス様だけが、私の望みという信仰を獲得したのです。そのような信仰に至った時、イエス様はこの女性の願い通りに動いてくださったのです。私たちはどんなにつまらない者であっても、私たちの求めはどんなに相応しくない願いであっても、「主よ、私を憐れんでください」、｢主よ、私を助けてください｣と強く求めれば、イエス様が私たちの信仰を溶鉱炉で練り、清めて信仰に至らせてくださいます。今、私たちはこの女性の闘いから、その信仰を受け継ぐ時が来たと教えられます。どうぞこの信仰の模範に倣い、悩みや憂(うれ)いを携えてイエス様にぶつかっていきましょう。イエス様は人格をもって答えてくださいます。そのようにこの一週間を元気に生きていきましょう。２０２３年８月１３（日）　聖霊降臨後第１１主日「逆境にこそ、神の厚意」神のご厚意　今日の福音書は水の上を歩く記事です。　この記事は2つの部分を含めています。それはイエス様が水の上を歩いたことと一番弟子ペトロが水の上を歩いたことです。今日は主にイエス様に集中して考えたいのです。　それでは、なぜイエス様はわざわざ水の上を歩いたかを見ましょう。この時の状況は簡単に言いますと、イエス様一行は湖の向こう岸に行きたかったのです。それでイエス様は弟子たちを先発隊で舟に乗せました。そしてイエス様は、１人残り、山に登って祈っていました。ところが先発隊の弟子たちは逆風で大荒(おおあ)れの湖で困っていたのです。すると、イエス様が水の上を歩いて弟子の近くに来られたのです。この状況には、1つ大事なポイントがあります。それはイエス様が弟子たちを強いて舟に乗せたことです。聖書の22節を見ましょう。「それからすぐ、イエスは弟子たちを強いて舟に乗せ、向こう岸へ先に行かせ、その間に群衆を解散させられた」と。つまり、弟子たちはガリラヤ湖で逆風に出会ったことは全くイエス様に強いられた結果なのです。なぜイエス様は強いたでしょう？この原因は併行記事マルコ福音書6章を見ると分かります。この湖に来るまで弟子たちはずっと伝道活動のために働き続けていました。マルコ福音書6章31節にはこういう言葉があります。「イエスは、『さあ、あなたがただけで人里離れた所へ行って、しばらく休むがよい』と言われた。出入りする人が多くて、食事をする暇もなかったからである。」と。しかし人里離れたところに行ったとしても、依然に情熱の群衆に囲まれて、結局イエスも弟子も休めず、群衆を教え続けたのです。今は、やっと一段落にして、一刻も早く弟子たちを休ませるために、イエス様は弟子たちを強いて舟に乗せたのです。しかも、マタイ福音書14章の22節によれば、イエスは弟子たちを送り出して一人になると、自分で群衆を解散させたのです。普段はこの群衆を解散させることも弟子の仕事ですが、今弟子に早く休ませるために、イエス様ご自身がしたのです。ここから、イエス様の急いで舟に乗せる意思がいかに強かったのかが伺えます。要するに、強いて舟に乗せたことはイエス様のご厚意なのです。しかし結果としてはイエス様のこの厚意は弟子を悩ませる嵐に繋がります。困った現実　さて、イエス様のご厚意を受け、働きの場から早く退いた弟子たちは、結局は休めません。それどころか災難に遭います。聖書の24節を見ましょう。「ところが、舟は既に陸から何スタディオンか離れており、逆風のために波に悩まされていた」と。この時代の舟は木製でしょう。ガリラヤ湖では、特有の地理条件によって、しばしば突風が吹きます。弟子たちの恐れと苦しみはどれだけのものだったでしょう。因みに私たち家族は親戚と一緒に去年福江島に行きましたが、帰りのフェリーが揺れて私以外全員相当な船酔いに苦しみました。当分船に乗りたくないそうです。一方、ガリラヤ湖とは、幅は約12キロ位の淡水湖です。大きくはありません。しかし逆風の故、弟子たちは何時間、舟を漕いでも、陸から何スタディオンしか離れなかったようです。「スタディオン」とは、185メートルの距離です。ですから、精々1キロか2キロかの距離で、急に逆風に会って、進むことも戻ることもできなくなったのです。興味深いことは、ここで悩んでいる人は多くがプロの漁師で、ガリラヤ湖で舟を漕ぐ達人でした。言い換えれば、彼らは、この湖のことを知り過ぎる程知っていたはずなのです。ですから、彼らは、ガリラヤ湖で、どんなことにあっても、適切に応対することが出来たはずです。しかしそれにしても、ここでは、「波に悩まされていた」のです。もはやお手上げの状態です。それは死に直面する程の危機でしょう。その危機の中でイエス様は共におらず、心は恐れで満たされ、希望も知恵も失われていました。さて、このことから私たちの現実をも連想できます。私たちが困難に遭うのは、全く新しい環境に限らず、寧ろよく慣れている所、よく知っている所も多いのです。そして年を重ね、人生の達人であっても、困るのです。私たちはいつも問題がないはずだと思う所で、意外な困難と出会い、悩むことになるのです。しかし、その場合でも、先の先を行く神のご厚意の結果なのです。神の気がかり　今日教えられることは、私たちは逆境に陥っていても、依然として、神様の恵みと守りの中にいることです。たとえ嵐の中でさえ、イエス様の心は弟子たちに向いていたのです。その根拠は25節にあります。25節。「夜が明けるころ、イエスは湖の上を歩いて弟子たちのところに行かれた」と。イエス様はなぜここで湖の上を歩くのでしょうか？それは近道で、絶妙なタイミングで弟子たちを助けるためです。まさに詩編121篇4節に書いている通りです。「見よ。イスラエルを見守る方はまどろむことも眠ることもない」と。「まどろむ」とは、うとうと眠ってしまうことです。神様の見守りは休むことがないのです。たとえ実際に神様が見えなくても、或いは私たちの方で神を忘れたとしても、神様は見ることをやめません。しかもこの眼差しは、24時間の不眠不休のようです。弟子たちは、このイエス様に見守られ、絶妙なタイミングで、思いもよらない方法でイエス様の栄光の姿を見、そして危険から救われます。即ち湖の上を歩く、波を静める、弟子にも水の上を歩かせるという神の力を弟子たちは見ました。私たちも人生において神のご厚意どころか、意地悪をされているのではないかという逆境に陥ることがあるでしょう。しかしそこには先の先を行く神様の助けと栄光が用意されているのです。どうかこれを信じて、そして心に留めて、日々の励みとしたいものです。２０２３年８月６（日）　聖霊降臨後第１０主日『神のみによる平和』厳しい現状　今週9日は78年前の長崎被爆の記念日です。今日は、平和祈願礼拝を行います。確かなことは平和への願いは世界共通です。しかしそれにしても、世界で唯一の被爆国、被爆地長崎にとって、平和への熱望、核兵器廃絶への願いは、広島と並んで強いのです。平和と言えば、ちょうど3週間前、当教会で平和セミナーが行われました。セミナー出席者のお一人がお話してくださった事を紹介しましょう。この方は以前外務省に務めていました。29年前、ある国際会議で、日本からの原子爆弾について撤廃提議は、アメリカ、イギリス、フランスに完全に拒絶されたそうです。しかし、それ以後、各分野でそれぞれの努力によって、核兵器廃絶の国際情勢は少し変わってきているというお話でした。勿論厳しさがあることも事実です。私はこの発言を聞いて、なぜアメリカやイギリス、フランスに完全に拒絶したのかを深く考えたのです。当時の原爆は第二次世界大戦に起こった大惨事でした。そして、この3つの国はいずれも戦争の被害者側にいる国であり、原爆を肯定する国なのです。また、原爆によって戦争を早く終わらせたという原爆功績論はただアメリカだけに根強いのではなく、中国出身の私の実感としては中国の民衆にも隅々まで浸透したようです。その実感とは私が子ども時代に中国で聞いた話です。1950年代、中国共産党政府はアメリカからの影響を薄めるために、原子爆弾はソ連によって投下されたという情報を広い範囲で広めました。その話を、当時小学校低学年の私はまだはっきりと覚えています。このように中国民衆は戦争を終わらせるのに、原爆は効果がある、と受け止めたのです。しかし、原爆功績論の是非はわきに置いて、原子爆弾は本当に残酷だったことは事実です。しかも、原爆による悲劇はただ過去の歴史でなく、今のロシアとウクライナ戦争の流れで、再現の危険性が高まっているのです。ですから、私たちは原爆投下記念日を前に、益々神に平和を切に求めましょう。二つを一つにする神　さて、平和の祈りは色々な時と場所と人々によって捧げられています。しかし教会で私たちが平和を祈るのは、一般の祈りとは違うのです。それは平和が、決して一つになれないものを一つにする願いであり、そして真の和解はイエス様のもとにあるからです。聖書を見ましょう。今日の使徒書の日課であるエフェソの信徒への手紙第2章14節～16節。「実に、キリストはわたしたちの平和であります。二つのものを一つにし、御自分の肉において敵意という隔ての壁を取り壊し、規則と戒律ずくめの律法を廃棄されました。こうしてキリストは、双方を御自分において一人の新しい人に造り上げて平和を実現し、十字架を通して、両者を一つの体として神と和解させ、十字架によって敵意を滅ぼされました」と。この聖書で言う「両者」について、私はこう理解しています。つまり、旧約聖書でも新約聖書でも、「隣人愛」は共通しています。ただ旧約聖書での「隣人」は同胞を指しています。それは民族内部の人だけに限っています。それで民族の外の人は対象外なのです。旧約時代、ユダヤ民族は民族外の人が汚れていて祝福の外にあると見ていました。両者には隔ての壁がありました。しかしイエス様は「隣人愛」に終わらず、「敵への愛」までも教えています。なぜそんなことを教えられるのか？それはイエス様が選ばれた民族の壁を撤廃し、世界の民族全てを祝福の対象に入れて一つにしたからです。つまりイエス様の十字架上の救いによって、神と人、人と人の関係の断絶、壁を取り壊し、全ての人を尊い神の民としたからです。旧約聖書のイザヤ書2章4節に、こういう預言があります。「主は国々の争いを裁き、多くの民を戒められる。彼らは剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず、もはや戦うことを学ばない」と。神様の下で、人と人の間に「敵」は既に存在していないから、神の力によって平和を実現できるのです。従って、私たちは神に平和を求められるのです。各自から始まる　では、この神に求めた平和はどのように実現されるでしょうか？これは神の教えてくださった愛によるのです。今日の福音書を見ましょう。9節と12節。「父がわたしを愛されたように、わたしもあなたがたを愛してきた。わたしの愛にとどまりなさい。・・・わたしがあなたがたを愛したように、互いに愛し合いなさい」と。一見、この言葉は平和祈願と直接に関係ないように感じられます。しかし、この言葉から、イエス様の愛にとどまり、互いに愛し合う人間関係が平和の基であると教えられます。では、神様の愛の中にいることはいったいどういう意味を持つのでしょうか？それは信仰による自発的な愛です。・・・また、愛とは何か？・・・それは相手を自分より優れたものと思うことであり、相手に対して与えることです。逆を考えればよく分かるでしょう。争いのもとは相手を自分より低く見ることであり、奪うことなのです。しかし、イエス様は誰よりも低くなり、時間もプライバシーも命も与えました。このイエス様に倣って生きる人が、地味でも小さくても着実に平和を作り、神様を伝える人なのです。それにしても核兵器廃絶、世界の平和のために私たちは何ができるか？あまりにも自分は小さい。無力だ、と感じます。しかし、誰でも取り組めることはあります。それはまず身近な人を受け入れ、理解し、与えることです。家庭から、教会から、職場から、学校から始めることができます。価値観の多様化している現代、与えることは難しいものです。しかし、神様にあって私たちは勇気を出し、あきらめないで平和のために行動できます。私は先程触れた平和セミナーで、ある信者さんからこういう言葉を聞きました。「私たちにはどんなことをやっても、上に神がいる意識があります」と。この上への意識があればあきらめないで平和を祈り、何かができるのではないでしょうか？挨拶一つ、笑顔一つ、一杯のお茶でも平和を作ることがあるのではないでしょうか？嫌だと思う人、どうしても合わない人、その人の祝福を祈ることはできないでしょうか？これからも、神様に向かって、1人のキリスト者として、世の中とは逆のイエス様の道を生きましょう。それは低さにつく道、与える道です。これこそ平和を作る道です。さて、今日の礼拝で洗礼式があります。神が私たちに新しい仲間を与えてくださったことを心から感謝します。どうかこれから、神に平和を求めつつ、上への意識を持って、神の愛を周りに広めましょう。過去のメッセージ一覧はこちら。過去の礼拝式文はこちら。
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『悔い改めの気持ちを備えよう』・２０２１年１１月２８日　待降節第１主日ルカによる福音書第２１章２５～３６節『目を覚ましなさい』・２０２１年１１月２１日聖霊降臨後最終主日ヨハネによる福音書第１８章３３～３７節『真理とは何か』・２０２１年１１月１４日聖霊降臨後第２５主日マルコによる福音書第１３章１～８節『世の終わりはまだか』・２０２１年１１月７日全聖徒主日ヨハネによる福音書第１１章３２～４４節『神の憐れみに生きる』・２０２１年１０月３１日宗教改革主日ヨハネによる福音書第８章３１～３６節『我々の信仰とは』・２０２１年１０月２４日聖霊降臨後第２２主日マルコによる福音書第１０章４６～５２節『単純な信仰』・２０２１年１０月１７日聖霊降臨後第２１主日マルコによる福音書第１０章３５～４５節『人間の鈍い心』・２０２１年１０月１０日聖霊降臨後第２０主日マルコによる福音書第１０章１７～３１節『方向転換』・２０２１年１０月３日聖霊降臨後第１９主日マルコによる福音書第１０章２～１６節『弱い者を守る神』・２０２１年９月２６日聖霊降臨後第１８主日マルコによる福音書第９章３８～５０節『平和共存への期待』・２０２１年９月１９日聖霊降臨後第１７主日マルコによる福音書第９章３０～３７節『誰が一番偉いか？』・２０２１年９月１２日聖霊降臨後第１６主日マルコによる福音書第８章２７～３８節『正と誤を繰り返す人間』・２０２１年９月５日聖霊降臨後第１５主日マルコによる福音書第７章２４～３０節『イエスを納得させる信仰』・２０２１年８月２９日聖霊降臨後第１４主日マルコによる福音書第７章１～８・１４～１５・２１～２３節『心の断捨離』・２０２１年８月２２日聖霊降臨後第１３主日ヨハネによる福音書第６章５６～６９節『酷い話』・２０２１年８月１５日聖霊降臨後第１２主日ヨハネによる福音書第６章５１～５８節『イエスを食べる意味』・２０２１年８月８日平和祈念連祷文・２０２１年８月８日平和主日ヨハネによる福音書第１５章９～１２節『私たちの喜び』・２０２１年８月１日聖霊降臨後第１０主日ヨハネによる福音書第６章２４～３５節『信仰の目的』・２０２１年７月２５日聖霊降臨後第９主日ヨハネによる福音書第６章１～１５節『神の養い』・２０２１年７月１８日聖霊降臨後第８主日マルコによる福音書第６章３０～３４節･５３～５６節『素朴な情熱』・２０２１年７月１１日聖霊降臨後第７主日マルコによる福音書第６章１４～２９節『身動きが取れない』・２０２１年７月４日　聖霊降臨後第６主日・２０２１年６月２７日聖霊降臨後第５主日マルコによる福音書第５章２１～４３節『虚無か信頼か』・２０２１年６月２０日聖霊降臨後第４主日マルコによる福音書第４章３５～４１節『危機に直面する時』・２０２１年６月１３日聖霊降臨後第３主日マルコによる福音書第４章２６～３４節『育つ信仰』・２０２１年６月６日聖霊降臨後第２主日マルコによる福音書第３章２０～３５節『血縁を超えた家族』・２０２１年５月３０日三位一体主日ヨハネによる福音書第３章１～１７節『人は生まれ変われるか』・２０２１年５月２３日ペンテコステヨハネによる福音書第１５章２６～２７節・１６章４ｂ～１５節『あなたの潜在性』・２０２１年５月１６日復活節第７主日ルカによる福音書第２４章４４～５３節『恵みを全世界へ』・２０２１年５月９日復活節第６主日ヨハネによる福音書第１５章９～１７節『イエス様の友』・２０２０年５月３１日ペンテコステヨハネによる福音書第７章３７～３９節『信仰の柱』・２０２０年５月２４日復活節第７主日ルカによる福音書第２４章４４～５３節『喜びの実感』・２０２０年５月１７日復活節第６主日ヨハネによる福音書第１４章１４～２１節『新しい助け主』・２０２０年５月１０日復活節第５主日ヨハネによる福音書第１４章１～１４節『心を騒がせるな』・２０２０年５月３日復活節第４主日ヨハネによる福音書第１０章１～１６節『互いに知る』・２０２０年４月２６日復活節第３主日ルカによる福音書第２４章１３～３５節『あなたは暗い顔ですか』・２０２０年４月１９日復活節第２主日ヨハネによる福音書第２０章２４節～２９節『神の慎重な配慮』
23Sep
- ２０２３年１０月の主日の福音書日課
  １０月１日（日）　聖霊降臨後第１８主日エゼキエル書第１８章１～４・２５～３２節、フィリピの信徒への手紙第２章１～１３節、マタイによる福音書第２１章２３～３２節【権威についての問答】イエスが神殿の境内に入って教えておられると、祭司長や民の長老たちが近寄って来て言った。「何の権威でこのようなことをしているのか。だれがその権威を与えたのか。」　イエスはお答えになった。「では、わたしも一つ尋ねる。それに答えるなら、わたしも、何の権威でこのようなことをするのか、あなたたちに言おう。ヨハネの洗礼はどこからのものだったか。天からのものか、それとも、人からのものか。」彼らは論じ合った。「『天からのものだ』と言えば、『では、なぜヨハネを信じなかったのか』と我々に言うだろう。『人からのものだ』と言えば、群衆が怖い。皆がヨハネを預言者と思っているから。」　そこで、彼らはイエスに、「分からない」と答えた。すると、イエスも言われた。「それなら、何の権威でこのようなことをするのか、わたしも言うまい。」【「二人の息子」のたとえ】「ところで、あなたたちはどう思うか。ある人に息子が二人いたが、彼は兄のところへ行き、『子よ、今日、ぶどう園へ行って働きなさい』と言った。兄は『いやです』と答えたが、後で考え直して出かけた。弟のところへも行って、同じことを言うと、弟は『お父さん、承知しました』と答えたが、出かけなかった。この二人のうち、どちらが父親の望みどおりにしたか。」彼らが「兄の方です」と言うと、イエスは言われた。「はっきり言っておく。徴税人や娼婦たちの方が、あなたたちより先に神の国に入るだろう。なぜなら、ヨハネが来て義の道を示したのに、あなたたちは彼を信ぜず、徴税人や娼婦たちは信じたからだ。あなたたちはそれを見ても、後で考え直して彼を信じようとしなかった。」１０月８日（日）　聖霊降臨後第１９主日イザヤ書第５章１～７節、フィリピの信徒への手紙第３章４ｂ～１４節、マタイによる福音書第２１章３３～４６節【「ぶどう園と農夫」のたとえ】「もう一つのたとえを聞きなさい。ある家の主人がぶどう園を作り、垣を巡らし、その中に搾り場を掘り、見張りのやぐらを立て、これを農夫たちに貸して旅に出た。さて、収穫の時が近づいたとき、収穫を受け取るために、僕たちを農夫たちのところへ送った。だが、農夫たちはこの僕たちを捕まえ、一人を袋だたきにし、一人を殺し、一人を石で打ち殺した。また、他の僕たちを前よりも多く送ったが、農夫たちは同じ目に遭わせた。そこで最後に、『わたしの息子なら敬ってくれるだろう』と言って、主人は自分の息子を送った。農夫たちは、その息子を見て話し合った。『これは跡取りだ。さあ、殺して、彼の相続財産を我々のものにしよう。』　そして、息子を捕まえ、ぶどう園の外にほうり出して殺してしまった。さて、ぶどう園の主人が帰って来たら、この農夫たちをどうするだろうか。」　彼らは言った。「その悪人どもをひどい目に遭わせて殺し、ぶどう園は、季節ごとに収穫を納めるほかの農夫たちに貸すにちがいない。」　イエスは言われた。「聖書にこう書いてあるのを、まだ読んだことがないのか。『家を建てる者の捨てた石、これが隅の親石となった。これは、主がなさったことで、わたしたちの目には不思議に見える。』だから、言っておくが、神の国はあなたたちから取り上げられ、それにふさわしい実を結ぶ民族に与えられる。この石の上に落ちる者は打ち砕かれ、この石がだれかの上に落ちれば、その人は押しつぶされてしまう。」　祭司長たちやファリサイ派の人々はこのたとえを聞いて、イエスが自分たちのことを言っておられると気づき、イエスを捕らえようとしたが、群衆を恐れた。群衆はイエスを預言者だと思っていたからである。１０月１５日（日）　聖霊降臨後第２０主日イザヤ書第２５章１～９節、フィリピの信徒への手紙第４章１～９節、マタイによる福音書第２２章１～１４章【「婚宴」のたとえ】イエスは、また、たとえを用いて語られた。「天の国は、ある王が王子のために婚宴を催したのに似ている。王は家来たちを送り、婚宴に招いておいた人々を呼ばせたが、来ようとしなかった。そこでまた、次のように言って、別の家来たちを使いに出した。『招いておいた人々にこう言いなさい。「食事の用意が整いました。牛や肥えた家畜を屠って、すっかり用意ができています。さあ、婚宴においでください。」』　しかし、人々はそれを無視し、一人は畑に、一人は商売に出かけ、また、他の人々は王の家来たちを捕まえて乱暴し、殺してしまった。そこで、王は怒り、軍隊を送って、この人殺しどもを滅ぼし、その町を焼き払った。そして、家来たちに言った。『婚宴の用意はできているが、招いておいた人々は、ふさわしくなかった。だから、町の大通りに出て、見かけた者はだれでも婚宴に連れて来なさい。』　そこで、家来たちは通りに出て行き、見かけた人は善人も悪人も皆集めて来たので、婚宴は客でいっぱいになった。王が客を見ようと入って来ると、婚礼の礼服を着ていない者が一人いた。王は、『友よ、どうして礼服を着ないでここに入って来たのか』と言った。この者が黙っていると、王は側近の者たちに言った。『この男の手足を縛って、外の暗闇にほうり出せ。そこで泣きわめいて歯ぎしりするだろう。』　招かれる人は多いが、選ばれる人は少ない。」１０月２２日（日）　聖霊降臨後第２１主日イザヤ書第４５章１～７節、テサロニケの信徒への手紙Ⅰ第１章１～１０節、マタイによる福音書第２２章１５～２２節【皇帝への税金】それから、ファリサイ派の人々は出て行って、どのようにしてイエスの言葉じりをとらえて、罠にかけようかと相談した。そして、その弟子たちをヘロデ派の人々と一緒にイエスのところに遣わして尋ねさせた。「先生、わたしたちは、あなたが真実な方で、真理に基づいて神の道を教え、だれをもはばからない方であることを知っています。人々を分け隔てなさらないからです。ところで、どうお思いでしょうか、お教えください。皇帝に税金を納めるのは、律法に適っているでしょうか、適っていないでしょうか。」　イエスは彼らの悪意に気づいて言われた。「偽善者たち、なぜ、わたしを試そうとするのか。税金に納めるお金を見せなさい。」彼らがデナリオン銀貨を持って来ると、イエスは、「これは、だれの肖像と銘か」と言われた。彼らは、「皇帝のものです」と言った。すると、イエスは言われた。「では、皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい。」　彼らはこれを聞いて驚き、イエスをその場に残して立ち去った。１０月２９日（日）　聖霊降臨後第２２主日レビ記第１９章１～２・１５～１８節、テサロニケの信徒への手紙Ⅰ第２章１～８節、マタイによる福音書第２２章３４～４６節【最も重要な掟】ファリサイ派の人々は、イエスがサドカイ派の人々を言い込められたと聞いて、一緒に集まった。そのうちの一人、律法の専門家が、イエスを試そうとして尋ねた。「先生、律法の中で、どの掟が最も重要でしょうか。」　イエスは言われた。「『心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。』これが最も重要な第一の掟である。第二も、これと同じように重要である。『隣人を自分のように愛しなさい。』律法全体と預言者は、この二つの掟に基づいている。」【ダビデの子についての問答】ファリサイ派の人々が集まっていたとき、イエスはお尋ねになった。「あなたたちはメシアのことをどう思うか。だれの子だろうか。」　彼らが、「ダビデの子です」と言うと、イエスは言われた。「では、どうしてダビデは、霊を受けて、メシアを主と呼んでいるのだろうか。『主は、わたしの主にお告げになった。「わたしの右の座に着きなさい、わたしがあなたの敵をあなたの足もとに屈服させるときまで」と。』このようにダビデがメシアを主と呼んでいるのであれば、どうしてメシアがダビデの子なのか。」　これにはだれ一人、ひと言も言い返すことができず、その日からは、もはやあえて質問する者はなかった。
14Aug
- ２０２３年９月の主日の福音書日課
  ９月３日（日）　聖霊降臨後第１４主日エレミヤ書第１５章１７～２１節、ローマの信徒への手紙第１２章９～２１節、マタイによる福音書第１６章２１～２８節【イエス、死と復活を予告する】このときから、イエスは、御自分が必ずエルサレムに行って、長老、祭司長、律法学者たちから多くの苦しみを受けて殺され、三日目に復活することになっている、と弟子たちに打ち明け始められた。すると、ペトロはイエスをわきへお連れして、いさめ始めた。「主よ、とんでもないことです。そんなことがあってはなりません。」　イエスは振り向いてペトロに言われた。「サタン、引き下がれ。あなたはわたしの邪魔をする者。神のことを思わず、人間のことを思っている。」　それから、弟子たちに言われた。「わたしについて来たい者は、自分を捨て、自分の十字架を背負って、わたしに従いなさい。自分の命を救いたいと思う者は、それを失うが、わたしのために命を失う者は、それを得る。人は、たとえ全世界を手に入れても、自分の命を失ったら、何の得があろうか。自分の命を買い戻すのに、どんな代価を支払えようか。人の子は、父の栄光に輝いて天使たちと共に来るが、そのとき、それぞれの行いに応じて報いるのである。はっきり言っておく。ここに一緒にいる人々の中には、人の子がその国と共に来るのを見るまでは、決して死なない者がいる。」９月１０日（日）　聖霊降臨後第１５主日エゼキエル書第３３章７～９節、ローマの信徒への手紙第１３章８～１４節、マタイによる福音書第１８章１５～２０節【兄弟の忠告】「兄弟があなたに対して罪を犯したなら、行って二人だけのところで忠告しなさい。言うことを聞き入れたら、兄弟を得たことになる。聞き入れなければ、ほかに一人か二人、一緒に連れて行きなさい。すべてのことが、二人または三人の証人の口によって確定されるようになるためである。それでも聞き入れなければ、教会に申し出なさい。教会の言うことも聞き入れないなら、その人を異邦人か徴税人と同様に見なしなさい。はっきり言っておく。あなたがたが地上でつなぐことは、天上でもつながれ、あなたがたが地上で解くことは、天上でも解かれる。また、はっきり言っておくが、どんな願い事であれ、あなたがたのうち二人が地上で心を一つにして求めるなら、わたしの天の父はそれをかなえてくださる。二人または三人がわたしの名によって集まるところには、わたしもその中にいるのである。」９月１７日（日）　聖霊降臨後第１６主日創世記第５０章１９～２１節、ローマの信徒への手紙第１４章７～１０節、マタイによる福音書第１８章２１～３５節【「仲間を赦さない家来」のたとえ】そのとき、ペトロがイエスのところに来て言った。「主よ、兄弟がわたしに対して罪を犯したなら、何回赦すべきでしょうか。七回までですか。」　イエスは言われた。「あなたに言っておく。七回どころか七の七十倍までも赦しなさい。そこで、天の国は次のようにたとえられる。ある王が、家来たちに貸した金の決済をしようとした。決済し始めたところ、一万タラントン借金している家来が、王の前に連れて来られた。しかし、返済できなかったので、主君はこの家来に、自分も妻も子も、また持ち物も全部売って返済するように命じた。家来はひれ伏し、『どうか待ってください。きっと全部お返しします』としきりに願った。その家来の主君は憐れに思って、彼を赦し、その借金を帳消しにしてやった。ところが、この家来は外に出て、自分に百デナリオンの借金をしている仲間に出会うと、捕まえて首を絞め、『借金を返せ』と言った。仲間はひれ伏して、『どうか待ってくれ。返すから』としきりに頼んだ。しかし、承知せず、その仲間を引っぱって行き、借金を返すまでと牢に入れた。仲間たちは、事の次第を見て非常に心を痛め、主君の前に出て事件を残らず告げた。そこで、主君はその家来を呼びつけて言った。『不届きな家来だ。お前が頼んだから、借金を全部帳消しにしてやったのだ。わたしがお前を憐れんでやったように、お前も自分の仲間を憐れんでやるべきではなかったか。』　そして、主君は怒って、借金をすっかり返済するまでと、家来を牢役人に引き渡した。あなたがたの一人一人が、心から兄弟を赦さないなら、わたしの天の父もあなたがたに同じようになさるであろう。」９月２４日（日）　聖霊降臨後第１７主日ヨナ書第３章１０節～第４章１１節、フィリピの信徒への手紙第１章２１～３０節、マタイによる福音書第２０章１～１６節【「ぶどう園の労働者」のたとえ】「天の国は次のようにたとえられる。ある家の主人が、ぶどう園で働く労働者を雇うために、夜明けに出かけて行った。主人は、一日につき一デナリオンの約束で、労働者をぶどう園に送った。また、九時ごろ行ってみると、何もしないで広場に立っている人々がいたので、『あなたたちもぶどう園に行きなさい。ふさわしい賃金を払ってやろう』と言った。それで、その人たちは出かけて行った。主人は、十二時ごろと三時ごろにまた出て行き、同じようにした。五時ごろにも行ってみると、ほかの人々が立っていたので、『なぜ、何もしないで一日中ここに立っているのか』と尋ねると、彼らは、『だれも雇ってくれないのです』と言った。主人は彼らに、『あなたたちもぶどう園に行きなさい』と言った。夕方になって、ぶどう園の主人は監督に、『労働者たちを呼んで、最後に来た者から始めて、最初に来た者まで順に賃金を払ってやりなさい』と言った。そこで、五時ごろに雇われた人たちが来て、一デナリオンずつ受け取った。最初に雇われた人たちが来て、もっと多くもらえるだろうと思っていた。しかし、彼らも一デナリオンずつであった。それで、受け取ると、主人に不平を言った。『最後に来たこの連中は、一時間しか働きませんでした。まる一日、暑い中を辛抱して働いたわたしたちと、この連中とを同じ扱いにするとは。』　主人はその一人に答えた。『友よ、あなたに不当なことはしていない。あなたはわたしと一デナリオンの約束をしたではないか。自分の分を受け取って帰りなさい。わたしはこの最後の者にも、あなたと同じように支払ってやりたいのだ。自分のものを自分のしたいようにしては、いけないか。それとも、わたしの気前のよさをねたむのか。』　このように、後にいる者が先になり、先にいる者が後になる。」
25Jun
- ２０２３年７月の主日の福音書日課
  ７月２日（日）　聖霊降臨後第５主日エレミヤ書第２８章５～９節、ローマの信徒への手紙第６章１２～２３節、マタイによる福音書第１０章４０～４２節【受け入れる人の報い】「あなたがたを受け入れる人は、わたしを受け入れ、わたしを受け入れる人は、わたしを遣わされた方を受け入れるのである。預言者を預言者として受け入れる人は、預言者と同じ報いを受け、正しい者を正しい者として受け入れる人は、正しい者と同じ報いを受ける。はっきり言っておく。わたしの弟子だという理由で、この小さな者の一人に、冷たい水一杯でも飲ませてくれる人は、必ずその報いを受ける。」７月９日（日）　聖霊降臨後第６主日ゼカリヤ書第９章９～１２節、ローマの信徒への手紙第７章１５～２５節、マタイによる福音書第１１章１６～１９節・２５～３０節今の時代を何にたとえたらよいか。広場に座って、ほかの者にこう呼びかけている子供たちに似ている。『笛を吹いたのに、踊ってくれなかった。葬式の歌をうたったのに、悲しんでくれなかった。』ヨハネが来て、食べも飲みもしないでいると、『あれは悪霊に取りつかれている』と言い、人の子が来て、飲み食いすると、『見ろ、大食漢で大酒飲みだ。徴税人や罪人の仲間だ』と言う。しかし、知恵の正しさは、その働きによって証明される。」【わたしのもとに来なさい】そのとき、イエスはこう言われた。「天地の主である父よ、あなたをほめたたえます。これらのことを知恵ある者や賢い者には隠して、幼子のような者にお示しになりました。そうです、父よ、これは御心に適うことでした。すべてのことは、父からわたしに任せられています。父のほかに子を知る者はなく、子と、子が示そうと思う者のほかには、父を知る者はいません。疲れた者、重荷を負う者は、だれでもわたしのもとに来なさい。休ませてあげよう。わたしは柔和で謙遜な者だから、わたしの軛を負い、わたしに学びなさい。そうすれば、あなたがたは安らぎを得られる。わたしの軛は負いやすく、わたしの荷は軽いからである。」７月１６日（日）　聖霊降臨後第７主日イザヤ書第５５章１０～１３節、ローマの信徒への手紙第８章１～１１節、マタイによる福音書第１３章１～９節・１８～２３節【「種を蒔く人」のたとえ】その日、イエスは家を出て、湖のほとりに座っておられた。すると、大勢の群衆がそばに集まって来たので、イエスは舟に乗って腰を下ろされた。群衆は皆岸辺に立っていた。イエスはたとえを用いて彼らに多くのことを語られた。「種を蒔く人が種蒔きに出て行った。蒔いている間に、ある種は道端に落ち、鳥が来て食べてしまった。ほかの種は、石だらけで土の少ない所に落ち、そこは土が浅いのですぐ芽を出した。しかし、日が昇ると焼けて、根がないために枯れてしまった。ほかの種は茨の間に落ち、茨が伸びてそれをふさいでしまった。ところが、ほかの種は、良い土地に落ち、実を結んで、あるものは百倍、あるものは六十倍、あるものは三十倍にもなった。耳のある者は聞きなさい。」【「種を蒔く人」のたとえの説明】「だから、種を蒔く人のたとえを聞きなさい。だれでも御国の言葉を聞いて悟らなければ、悪い者が来て、心の中に蒔かれたものを奪い取る。道端に蒔かれたものとは、こういう人である。石だらけの所に蒔かれたものとは、御言葉を聞いて、すぐ喜んで受け入れるが、自分には根がないので、しばらくは続いても、御言葉のために艱難や迫害が起こると、すぐにつまずいてしまう人である。茨の中に蒔かれたものとは、御言葉を聞くが、世の思い煩いや富の誘惑が御言葉を覆いふさいで、実らない人である。良い土地に蒔かれたものとは、御言葉を聞いて悟る人であり、あるものは百倍、あるものは六十倍、あるものは三十倍の実を結ぶのである。」７月２３日（日）　聖霊降臨後第８主日イザヤ書第４４章６～８節、ローマの信徒への手紙第８章１２～２５節、マタイによる福音書第１３章２４～３０節・３６～４３節【「毒麦」のたとえ】イエスは、別のたとえを持ち出して言われた。「天の国は次のようにたとえられる。ある人が良い種を畑に蒔いた。人々が眠っている間に、敵が来て、麦の中に毒麦を蒔いて行った。芽が出て、実ってみると、毒麦も現れた。僕たちが主人のところに来て言った。『だんなさま、畑には良い種をお蒔きになったではありませんか。どこから毒麦が入ったのでしょう。』　主人は、『敵の仕業だ』と言った。そこで、僕たちが、『では、行って抜き集めておきましょうか』と言うと、主人は言った。『いや、毒麦を集めるとき、麦まで一緒に抜くかもしれない。刈り入れまで、両方とも育つままにしておきなさい。刈り入れの時、「まず毒麦を集め、焼くために束にし、麦の方は集めて倉に入れなさい」と、刈り取る者に言いつけよう。』」【「毒麦」のたとえの説明】それから、イエスは群衆を後に残して家にお入りになった。すると、弟子たちがそばに寄って来て、「畑の毒麦のたとえを説明してください」と言った。イエスはお答えになった。「良い種を蒔く者は人の子、畑は世界、良い種は御国の子ら、毒麦は悪い者の子らである。毒麦を蒔いた敵は悪魔、刈り入れは世の終わりのことで、刈り入れる者は天使たちである。だから、毒麦が集められて火で焼かれるように、世の終わりにもそうなるのだ。人の子は天使たちを遣わし、つまずきとなるものすべてと不法を行う者どもを自分の国から集めさせ、燃え盛る炉の中に投げ込ませるのである。彼らは、そこで泣きわめいて歯ぎしりするだろう。そのとき、正しい人々はその父の国で太陽のように輝く。耳のある者は聞きなさい。」７月３０日（日）　聖霊降臨後第９主日列王記上第３章５～１２節、ローマの信徒への手紙第８章２６～３９節、マタイによる福音書第１３章３１～３３節・４４～５２節【「からし種」と「パン種」のたとえ】イエスは、別のたとえを持ち出して、彼らに言われた。「天の国はからし種に似ている。人がこれを取って畑に蒔けば、どんな種よりも小さいのに、成長するとどの野菜よりも大きくなり、空の鳥が来て枝に巣を作るほどの木になる。」　また、別のたとえをお話しになった。「天の国はパン種に似ている。女がこれを取って三サトンの粉に混ぜると、やがて全体が膨れる。」【「天の国」のたとえ】「天の国は次のようにたとえられる。畑に宝が隠されている。見つけた人は、そのまま隠しておき、喜びながら帰り、持ち物をすっかり売り払って、その畑を買う。また、天の国は次のようにたとえられる。商人が良い真珠を探している。高価な真珠を一つ見つけると、出かけて行って持ち物をすっかり売り払い、それを買う。また、天の国は次のようにたとえられる。網が湖に投げ降ろされ、いろいろな魚を集める。網がいっぱいになると、人々は岸に引き上げ、座って、良いものは器に入れ、悪いものは投げ捨てる。世の終わりにもそうなる。天使たちが来て、正しい人々の中にいる悪い者どもをより分け、燃え盛る炉の中に投げ込むのである。悪い者どもは、そこで泣きわめいて歯ぎしりするだろう。」【天の国のことを学んだ学者】「あなたがたは、これらのことがみな分かったか。」弟子たちは、「分かりました」と言った。そこで、イエスは言われた。「だから、天の国のことを学んだ学者は皆、自分の倉から新しいものと古いものを取り出す一家の主人に似ている。」
09Apr
- ある日の教会
  ２０２３．４．９（日）イースターの教会です。１１．２７．２０２１いよいよ待降節に入ります。今日は、教会のクリスマスの飾り付けをしました。７．３０．２０２１礼拝の準備のため礼拝堂に上がった信徒の１人が撮った写真です。パーティションにまでルターの紋章入り？　ではなくて、（多分）礼拝堂入り口のステンドグラスが映り込んだのでしょう。でも、ちょっと格好良い。２．２１．２０２１今日の礼拝では、ステンドグラスを通して陽が差し込み、週報を照らしだしました。因みに、このステンドグラスは、通りからも見ることが出来ます。１１．１．２０２０今日は「全聖徒の日」礼拝でした。全聖徒の日がどのような日かは、ネットで検索すると、例えばウィキペディアでも、或いは私たちの日本福音ルーテル教会の他教会のＨＰなどでも詳しく書かれていますので、ここでは説明を割愛しますが、この日の礼拝では、すでに召天された（神さまのみもとへ召されること）兄弟姉妹を偲びます。私たち長崎教会でも召天された兄弟姉妹―信仰の先輩たちであり、今や神さまのまことの平安の内にあります―の写真を持ち寄り、これらの方々を偲ぶ礼拝となりました。
23Aug
- お知らせと更新履歴
  ～お知らせと更新履歴～トップページがごちゃごちゃして見づらくなってしまったので、過去のお知らせの内まだ有効なものや、ホームページの更新履歴などをこちらに移動しました。・２０２２年８月９日　長崎市平和祈念礼拝は主の祝福の内に開催されました。式次第はこちら。・２０２２年４月８日　議長談話：「第２９・３０回定期総会の延期について」、「平和と共働の祈り」・２０２２年３月１５日「平和への連祷」をｕｐしました。・２０２２年３月１日　主題聖句を更新しました。・２０２１年１１月３０日クリスマスのイルミネーションで飾られた教会の写真をｕｐしました。・２０２１年８月２４日「過去のメッセージ一覧」のページを新設しました。・２０２１年８月１１日「平和祈念連祷文」をｕｐしました。・２０２１年５月１６日メッセージ掲載再開しました。
01Feb
- 当教会の感染症対策
  感染症拡大の厳しい状況が続く間、当教会の礼拝は以下のように行います。①祝福の時を除いて、着席のまま礼拝を行います。②讃美歌は黙読で歌詞を味わいます。　奏楽は毎曲、2回弾きます。　オルガン奏に沿って、声を出さずに歌詞を味わいましょう。③礼拝式文中の交唱部分を省略します。④「主日の祈り」、「罪の告白」、「信仰告白」、「主の祈り」は、牧師のみ声を出します。　皆さまは声を出さずに心で合わせてください。以上、ご協力下さり、礼拝を守りましょう。
07May
- 自宅（家庭）礼拝式文
  過去の礼拝式文はこちら。
28Apr
- 教会でのイベント
  現在、予定されているイベントはございません。
- アクセス
  当教会には駐車場がありません。車でお越しの方は、近隣のコインパーキング等をご利用下さい。
- 私たちの教会について
  長崎教会の歴史（テキスト版）【1950(S25)年】長崎におけるルーテル教会最初の集まりが始まった。於、長崎市榎津町50番地（現在の万屋町1番地15号）、渡辺家。（牧師：マヤ・ウィンテル宣教師、間垣洋助牧師、中尾忠雄牧師）【1951(S26)年】長崎市本篭町63番地2の民家を借用して定期的に長崎集会が守られるようになった。5月　日本福音ルーテル教会定期総会で、本篭町の集会が「日本福音ルーテル長崎伝道所」として認められた。10月29日　本篭町の家屋土地を購入。【1952(S27)年】5月　　　石居正己伝道師、長崎伝道所主任教職として着任。諫早市泉町389番地に「日本福音ルーテル諫早教会」建築（ドナルド・ウィルソン宣教師）。【1953(S28)年】4月　石居正己伝道師、離任。諫早教会のドナルド・ウィルソン宣教師が長崎伝道所兼牧となった。12月24日　長崎市興善町29番地（現在の興善町2番地26号）に所在する土地建物を買収購入。【1954(S29)年】2月15日　長崎市本篭町63番地2の家屋土地、売却。3月　ドナルド・ウィルソン宣教師、帰米。アルスドルフ宣教師が熊本市から来援、諫早聖山教会及び長崎伝道所の伝道に従事。5月　太田敦次牧師が長崎教会主任教職に任命されるも、適当な牧師宅が見当たらないまま挙母市（現、豊田市）で開拓伝道に従事。9月　パーカー・アンスパック宣教師が諫早聖山教会に着任、長崎伝道所兼牧。最初の教会堂、完成。【1955(S30)年】4月　太田敦次牧師着任。5月　パーカー・アンスパック宣教師離任（京都修学院教会へ）。【1956(S31)年】4月　長崎伝道所は「長崎教会」となった。岡正治伝道師（2年後に按手礼を受け牧師となった）が長崎教会の主任教職に任命され、太田敦次牧師は神水教会に転出（招聘）。5月 3日　太田敦次牧師一家、長崎発。5月10日　岡正治伝道師一家着任。牧師館を長崎市伊勢町5、高木清氏宅裏別棟とした。9月23日　諫早聖山教会牧師ピーター・ラスムッセン宣教師一家歓迎会。【1957(S32)年】6月14日　牧師館建築起工式。9月12日　牧師館竣工式（司式、P. ラスムッセン宣教師）。【1958(S33)年】5月 6日　本教会定期総会（於、池袋教会）で岡正治牧師按手礼受按。【1959(S34)年】5月 7日　岡正治牧師、諫早教会兼牧発令。5月12日　P. ラスムッセン宣教師一家、休暇帰米。【1960(S35)年】8月29日　教会電話架設。9月 1日　岡牧師諫早教会兼牧解任。9月 3日　P. ラスムッセン宣教師帰任。【1965(S40)年】5月 1日　岡牧師、諫早教会兼牧発令。5月 9日　教会堂増改築竣工聖別式。5月14日　諫早教会P. ラスムッセン宣教師、休暇帰米。9月13日　教会堂前面壁画（パンとぶどう、鳩、5つのパンと2匹の魚）製作。【1966(S41)年】9月 1日　P.ラスムッセン宣教師帰任、岡牧師諫早教会兼牧解任。【1967(S42)年】1月15日　自給教会（第1種教会）宣言、岡牧師招聘決定。【1968(S43)年】5月 1日　岡牧師諫早教会兼牧発令。5月15日　P.ラスムッセン宣教師、京都教会へ転任。【1973(S48)年】2月25日　諫早教会組織を「長崎教会諫早伝道所」に変更決定。【1975(S50)年】7月 6日　教会堂大型電飾看板取り付け工事。9月25日　旧諫早教会残務整理完了。【1976(S51)年】1月30日　諫早伝道所諸器具類、長崎教会へ移動運搬。【1984(S59)年】5月21日～5月22日　教会堂前面壁画、3階「ルター紋章」塗料補修。10月28日　教会堂献堂30周年記念特別礼拝（司式岡牧師、説教山内六郎引退牧師）。【1985(S60)年】7月21日　教会堂洗面所・トイレ改造工事完成。【1986(S61)年】10月29日　教会堂・牧師館接合部屋屋根大修理、聖壇壁面塗装工事実施。【1987(S62)年】11月10日　牧師館を教会堂3階に移転。11月11日　旧牧師館白アリ被害診断。
- ルーテル教会とは
  【アメリカのルーテル教会】　おもに17世紀、ドイツ、オランダ及び北欧の諸国から、北アメリカ大陸の開拓者としてたくさんのルター派の教会員が移住しました。そのおもな入植地域は、ペンシルベニア、バージニア、ノスカロライナ、サウスカロライナでした。最初は、牧師がいなくても、信徒による独自の礼拝を守り、その後、牧師がドイツなどから派遣され、教会の組織も正式に整っていきました。　移住者はドイツ、オランダ、北欧のデンマーク、スウェーデン、フインランド、ノルウェーからの人々であり、民族的背景の違い、言語の相違、それぞれの教会制度・伝統の背景もあり、はじめは同じ民族同志のルーテル教会を各地に形成しました。　20世紀に入ると、それぞれの背景を継承しつつ、アメリカでのルーテル教会が成長し、合同がなされるようになり、1987年にはアメリカの3つのルーテル教会が合同して、アメリカ福音ルーテル教会（Evangelical Lutheran Church in America）となりました。これらの歴史的な背景をもったアメリカのルーテル教会から、1892年に最初の宣教師が送られ、日本でのルーテル教会の伝道が開始され、日本福音ルーテル教会が形成されました。【日本福音ルーテル教会】　日本福音ルーテル教会の最初の礼拝は、1893年の復活祭（イースター）にアメリカの南部一致シノッドから派遣された宣教師シエラーとピーリーにより、九州の佐賀で行われました。これが日本でのルーテル教会の伝道の始まりです。　伝道の手段としては、信徒教育のためにルターの著作による「小教理問答」の翻訳、またルーテル教会は「み言葉による礼拝」による教会形成を中心にするために「礼拝式文」の出版、伝道の担い手と日本人による教会組織の早期実現のために牧師養成、そのための神学校の創立が重要なこととして手掛けられました。　初期の教会の歴史に於いても、伝道の業は教育事業とともに行われました。熊本には牧師養成と男子の青少年の教育を目的とした九州学院、女子教育を目的とした九州女学院、更には各地の教会の付属施設として幼稚園による幼児教育の分野での教育事業で貢献してきました。　社会福祉の分野においても、熊本における慈愛園、東京での東京老人ホームを始めとして、開拓的働きをして、日本社会のために貢献してきています。　先の戦争の時には、1941年に政府の圧力もあって日本におけるプロテスタントの合同（教会連盟的な合同）として、日本基督教団結成に際して第五部に参加しましたが、それは「アウグスブルク信仰告白及びその他の宗教改革信条に基づく教会の信仰を保持し教会としての働きを全うし得ること」を条件としたものでした。　戦争の終了とともに、そのような部制は廃止され、1947年に旧ルーテル教会の牧師有志は熊本で臨時総会を開いて、教団離脱を決議し、日本福音ルーテル教会を再建する新たな出発をしました。　1953年以来、在日ルーテル系ミッションの合同運動が起こり、フィンランド福音ルーテル協会、オーガスタナ・シノッドは合同し、さらには1963年には東海福音ルーテル教会も合同し、新しい日本福音ルーテル教会を発足させました。　1969年、当時の議長・内海季秋氏のアスマラ発言を皮切りに、ルーテル教会は海外教会に依存せず、各個教会と全体教会事務局の自立を決意し、1974年にその目的を達成しました。1990年の8月の全国総会において、宣教百年記念事業計画が策定され、宣教開始の百年の節目の1993年には、熊本で宣教百年全国大会が「さあ、出ていこう。～宣教二世紀に向かって」という主題のもと開催されました。この大会には、全国から3000名の信徒、牧師が集い、宣教百年の歩みを感謝しつつ、宣教二世紀に向かって宣教の使命と決意を新たにし、「宣教百年信仰宣言」を表明しました。宣教二世紀に向けて、日本福音ルーテル教会は各々の信徒、牧師が神のみ言葉によって強められ、個々の教会、教区がキリストのからだとして有機的に繋がりながら、更なる「伝道する教会」への成長を目指しています。　現在は新しい宣教方策として「パワーミッション21」を策定し、宣教力を結集させ、現代社会へ仕える教会をめざしています。これからは「パワー（power）」から「アワー（our）」へと、私たちの宣教の実現を目指していきます。【教義】　旧新約聖書が信仰と行為の唯一明確なる規範たることを主張し、信条として使徒信条、ニケア信条、アタナシウス信条、アウグスブルク信仰告白、同弁証論、大・小教理問答、シュマルカルド信条、和協信条を採用します。　ルーテル教会は信仰の本質において一致すれば、その他の礼拝形式や教会制度・組織の一致を必ずしも求めませんが、礼拝における信仰生活の育成と、そこにおける神のみ言葉の重要性を強調するために一定の礼拝式を共用します。また、信仰教育を重んじ、特に小教理問答を通して信仰と生活の訓練を図ることを伝統的に受け継いでいます。