https://www.youtube.com/watch?v=Q3fzdcNvOYU
コトバの波紋 谷川俊太郎
会ったことのない人たち
名前も知らない人たち
どこに住んで何をしているのか
少女なのか主婦なのか
短大生なのかフリーターなのか
農民なのか課長なのか
でも 日本語を話し書く女たち男たちが
脚で歩けないウェブのカフェで論議している
地図にないウェブの村はずれで落書きしている
そこはコトバによって創られる架空の世界
自分と他人をミックスできる未来へ開く小宇宙
そこでは・・・
コトバがコトバに一目ぼれします
コトバがコトバの卵を生みます
コトバがコトバを揺り動かします
コトバとコトバが鬼ごっこします
コトバがコトバでうがいをします
コトバがコトバに笑いかけます
コトバとコトバが手をつなぎます
そしてそこでは・・・
どんな小さなことも
どんなくだらないことも
どんな恥ずかしいことも
どんな無意味なことも
どんな分からないことも
コトバになったおかげで
生きています
いまを
黙り込んでいる人もいま生きていて
怒りくるっている人もいま生きていて
生きていたくない人もいま生きていて
生きていることにたとえ意味は見出せなくとも
生きていることにひとまず美味しいと
そう感じられる幸せを求めて生きているいま
たとえばこっちは夜でそっちは朝(たぶん)
でもいまは同じこの地球に生きるあなた
コトバの小石を投げこんでください
コトバの波紋がどこまでもひろがって
やがてどこかの誰かに届くまで
この谷川俊太郎さんの詩を
一昨日ウェブの世界で出会ったばかりの
まだ何にも知らないあなたに贈ります