https://www.youtube.com/watch?v=kkrEfWlsK5Q
その日の天気を 私は1か月も前から
ずっと気にして 長期予報をたびたび見ていた
その日は 町内会のあるグループの14人でのお出掛けの日
例によって 行き先やスケジュールは
私に決めるようにと 一任された
紅葉には少し早いが 「奥出雲 紅葉巡り」と名打って
鬼の舌震と 大イチョウの紅葉で有名な金言寺
そして 昼食は斐ノ上(ひのかみ)温泉と決め
いつものことだが 下見もした
後は天候 どうか晴れであってほしい
なのに ずっと天気予報は雨マーク
けれど その日は最高の青空が広がる
鬼の舌震には 2013年大きな吊り橋が架けられ
景色を一望しながら 散策が出来るようになった
予定としては 吊り橋を渡るまでで引き返すことにしていた
そうしなければ 時間がなくなってしまう
しかし それではあまりにも惜しいと思われたのか
先頭は 先へ先へと進んでしまう
まるで 鬼が転がしたかのような奇岩 怪岩が
渓流の中に ゴロゴロ転がる
渓流の水は激しく岩にぶつかり
清冽なしぶきを 散らす
この流れはやがて大河となり
斐伊川(ひいかわ)と呼ばれて
出雲平野を潤す
遊歩道の全長は何キロもあるのだが
途中から 渓流のそばの古い けわしい遊歩道で引き返す
ところが 帰路にハプニング発生
90歳前後の最高齢者のUさんが
「大丈夫です」と他のメンバーと行動を共にしておられたのだが
「もう歩けません」と立ち止まられたのだ
迂闊だった
本人の意志よりも 年齢などに配慮して
もっと以前に 楽な道を引き返してもらうべきだった
私はUさんの片方の腕を支え
もう片方は 手すりにつかまってもらい
一緒にゆっくりと 歩を進める
「右 左 右 左・・・」と声を掛けながら
後ろからはメンバーの男性が
Uさんの腰を押してくださる
それでも 幾度となく
「ちょっと休ませてください」と訴えられる
無理もない
古い遊歩道は グリーンカーペットが敷いてある部分は良いが
ゴツゴツと大きな石が敷かれた部分もあるし
石段を上がったり 坂を下りたり
尋常な道のりではない
もともと90前後の高齢者には 到底無茶な散策だった
「もう少しですからね」と 何度も励ましながら
私も 汗だくだった
時計を見ると もう12時だ
とても 金言寺へなど
行く余裕はない
マイクロバスにも ギリギリ入れる場所まで
入ってもらい どうにかこうにか
Uさんをバスに乗せる事が出来た
40分も時間オーバーだった
この顛末を 鬼は木々の陰から
見守っていたに違いない
私は他のメンバーの人たちのように
のんびりと景色を楽しむことも出来ない 大変な帰路だったが
きっとこれも 楽しい思い出になるだろう
今年のお出掛けも 楽しかった
すばらしい青空に 感謝
鬼にも 感謝