母と犬 ここでさよなら | nagarenotokiのブログ

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四季折々、自然の姿に感じること

 
 
この春 母は癌と宣告され
その上 変形性膝関節症も悪化し
歩くことさえ つらくなった
実家には 5年前
私が母に頼み込んで
飼ってもらった犬がいる
最初は犬を飼うことを 嫌がっていたが
いつしか母は コマを
心から かわいがるようになっていた
 
 
 
けれど痛む足での散歩は
もう限界だった
母は「かわいそうだが 保健所に
引き取ってもらおう」と言う
愛犬を殺処分に出す
それは母にとっても どんなに
つらい決断だろう
 
 
私は知人にお願いし
10歳を過ぎた この老犬を
飼ってくれる奇特な人はいないか
フェイスブックで 呼びかけてもらう
けれど もらい手が現れるなんて 
むなしい夢のように 思えた
 
そのフェイスブックを見た たくさんの方が
シェアしてくださり さらに
それを見た 1人の女性から
「実際に犬を見たい」との 申し出があった
 
その事を母に告げると
思いのほか コマを手放すことに
二の足を踏む
「コマがいなくなると淋しくなる」とつぶやく
1人暮らしで 1日誰とも会話しない日もある中
コマは母の身近にいて
心を慰めてくれた存在なのだ
たとえ 言葉は交わせなくても
気持ちを わかってくれたと言う
 
約束の日
看護師であるHさんと 
彼女の友人の犬猫救済ボランティアさんが
実家にいらっしゃる
2人は コマに親しく接し 
コマは初対面というのに 吠えることもなく
あっと言う間になついてしまう
犬は直感で 相手の人柄を悟るのだろう
 
母の犬を失うことへの不安を
ボランティアさんに話すと 即座に
「このままでは お母さんも散歩も出来なくなるし
犬も年老いて 誰も引き取ってはくれない
今 飼ってやるという言う人が
現れた時が チャンスだから」と言われた
 
その言葉を そのまま母に伝えた
母はやっと決意した
それが自分も コマも生かす道だと
気がついた
 
数日後 コマはHさんに引き取られて行った
 
新しい飼い主となってくれた Hさんから
メールが届く
そこには 違う犬のように
小ざっぱりと散髪されて 若々しく
はつらつとした コマの姿があった
 
 
新しいハウスも気に入ったコマ
 
健康診断にも 連れて行ってくださったという
何から何まで 至れり尽くせりにしてもらっている
コマは良い飼い主に出会えて 幸せになった
Hさんには 感謝してもし切れない思いである
 
一方 犬小屋も
つないであったチェーンも そのままの実家
母はまだコマが そこにいるような気がすると言う
でも 優しく動物好きなHさんに
もらわれて行って 良かったと口にする
淋しいけれど 良かった
私はそれだけ 楽になったと
 
 
母と5年の時間を 
共に生きてくれたコマ
さよなら ありがとう