母 1匹の犬と出会う | nagarenotokiのブログ

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四季折々、自然の姿に感じること

https://www.youtube.com/watch?v=SnBFxRfsVn4


 


母から深刻そうな電話があった

犬が元気がなく ごはんも食べない

動物病院に連れて行ってほしい というものだった

 

車内に新聞紙を敷き 母と犬を乗せる

脱毛の多い時期 

到着までずっと お座りしていてくれて助かった

車中母は 幼な子にでも話しかけるように

やわらかに犬に話しかけている

私が犬に 指示的に声をかけただけで怒るほど

今や この犬をかわいがっている

 

この犬は 数年前まで

夫の父が飼っていた犬である

独居生活の義父が 入院する際

犬の世話に困り やはり独居生活を送る母に

無理矢理 頼み込んで飼ってもらったのである

最初は義父の入院中だけという約束だった

しかし 義父は退院しても

散歩もままならぬ状態となってしまった

それで犬は そのまま母に

飼い続けてもらうことになってしまった

 

最初の頃 母は犬を飼うのを迷惑がっていた

たびたび「いつまで飼わせるのか」と不服そうに尋ねた

母と何かで口論となると 

「もう犬は知らん 連れて帰れ」と言った

我が家にも犬がいるため 何とか母をなだめて来た

 

母は80歳を過ぎても 米作りや畑をやめず

いつも家周りもきれいにしている

仕事は山ほどある

そんな多忙な中 朝夕犬を遠くまで散歩させてくれた

何度か 犬が綱ごと放れてしまい

走り去ってしまったこともある

名を呼んでも帰らない

あきらめて 家に帰っていると

大分してから ばつが悪そうに

うなだれて 帰って来たという

その姿を見て 母は叱れなかったそうだ

放れた日は 反省しているのか夕食は食べなかったという

 

その犬が 先日散歩中に

突然 地面にへたばってしまった

「もう 帰るか?」と犬に問うと 犬はうなづいて

先になって 家に向かったと母は真顔で話す

人間に問いかけられて うなづく犬なんているのだろうか

母はよく「人間と同じことを考えている」 

「言うことをびっくりするほどよく理解する」とこの犬を誉めるのだ

 

 
 

動物病院での診断結果は フィラリア症とのことだった

薬と注射の対症療法で 完治させることは出来ないと言われた

 

縁あって出会った 母と1匹の犬

母はこんなにも 愛情を注いで犬を飼ってくれた

母は独り暮らし 親しくしていた姉も亡くなり

近所も空き家が増え 心淋しかったに違いない

犬は母にとって 心を寄せる存在となってくれた

 

私は今 母にも犬にも感謝で一杯である


情報保護のため犬の名前は控えさせていただきます。

 

1年後、母と犬はお別れしました。

お互いのために。

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