30数年の歳月を隔てて なつかしい人と再会した
学生時代に 哲学を教わった瀬古康雄先生
3月13日 瀬古先生は
インドの伝統的な楽器シタールの演奏家として
私の前にいらっしゃった

あの頃 私は先生の授業を楽しみにしていた
興味深いお話を たくさんしてくださった
中でも一番心に残っているのは
屋久島で暮らす 山尾三省という詩人の話だった
彼の「聖老人」という詩集を紹介してくださった
実際にその詩集を読んだのは それから随分後の事である
瀬古先生はその後 プロフィールによれば
インドの大学で 哲学とシタールを学ばれている


瀬古先生の奏でるシタールの音は
インドという国の神秘や 神聖な雰囲気を漂わせ
そして虚無を帯びていた
現れては消える 泡を思わせるような
浮き沈みのある不思議な音色で
ラーガ・バイラヴィー ラーガ・グンカリという曲を聴く
その音色は瀬古先生のお話にもあった 「空(くう)」を表していると思った
生きとし生けるものは すべて空(くう)から生まれ空(くう)に還るという
演奏会の後 瀬古先生と少しお話をさせていただいた
30数年という年月は 瀬古先生の風貌を大きく変えていた
私が授業を受けていた頃の先生は
まだ青年の面影を漂わせた 若き師だったのだ
ずっと哲学を深め 歩まれていらっしゃった今の先生の姿に
聖老人・・・という言葉が 心に浮かぶ
今回瀬古先生にお会いしたことで
忘れかけていた大切なものを もう一度探してみようと思った
まずは山尾三省の詩集を 探してみよう
この再会に感謝しつつ
