その花たちが咲いていたのは
作業小屋と 稲穂が垂れ始めた田に挟まれた
見つけにくい空間
そこに近づくには
田の横の細い畦道を通るしか手段がない
蛇が待ち構えているかもしれない怪しげな小道
でも・・・間近で眺めてみたい
ポポを先頭にして
勇気を出して足を進めた

そこは緑の稲田に囲まれて
世の喧騒からも隔絶された聖なる地
泥の中からすっくと立ち上がる天上の花々
遠く遥かな昔
インドで釈迦が座ったという蓮の花
間近に見るその花は
やさしく清らかなまなざしを私に向けた
泥の中から生まれたのに
あまりにも美しく気高い
「私をよく見ておきなさい」・・・
そんな声を聞いた気がした

その日から
蓮の花が私の心に咲いている
静かに黙って 私を見つめている
