https://www.youtube.com/watch?v=Iv-FTxisEpM
日頃は温和な男性患者さんが
ムックリと起き上がって ベッドに腰かけている
センサーマットが その事を知らせてくれた
その人は歩けないのに
時々歩こうとして 危険な体勢になるので
センサーマットが ベッドサイドに敷かれているのだった
「どうしたの?」
その人は思いつめた 真剣な顔で
「兵隊さんになりに行く」と言う
「どこに行くの?」
「広島の連隊だ。今から行かんといけん」
私は何とか それを思いとどまらせようとするが
「邪魔をするな!お国が大変な事になっているのがわからんか!」
と 一喝される
そのままにしておけば 歩けない足で踏み出し
転倒するのは必至だった
他のスタッフにも 手伝ってもらい
大きな体格で 力も強いその人を
取りあえず リクライニング車椅子に乗せた
そして 戦争モードになってしまったその人に
戦争の時局をうかがいながら 散歩した
国を守るために 兵隊になって戦う
その人は完全に 70年前にタイムスリップしていた
どうしたものかと ため息をついていると
「またご迷惑をかけているんですね」との声
「お父さん 迷惑をかけちゃだめだよ」
洗濯した衣類を持って来た 息子さんだった
思いつめておられる状況を話すと
息子さんは「お父さん 戦争には行かんでいいよ」と
やさしく声を掛けられた
すると「行かんでもいいか?」と
その人は救われたように言い
目を閉じ 合掌したかと思うと
そのまま眠ってしまった
何を言っても 聞く耳を持たず
「兵隊さんになりに行く」と言い張っていたその人が
息子さんのたった一言で あっけないほど簡単に安心感を得た
そしてお国のために・・・とは言っていたが
本当は 兵隊さんにはなりたくなかったのだと知る
70年前は どうだったのだろう
男たちは 心からの愛国心で
戦争に駆り出されて行ったのだろうか
国を守るという気持ちと同時に
命を落とすかもしれないという 大きな不安もきっとあっただろう
私も少し タイムトリップをしたようなひとときだった
その後 別の患者さんの所に行った
処置をしながら その人に思わず
「Iさんは終戦の時 何を思いましたか?」と質問した
「恐かった これからアメリカが日本をどうするのか
自分たちは殺されるかもしれんという 恐さで一杯だった
親は自決することまで話をしていた」
まるでその事を 話したくてたまらなかったように
その人は 終戦の頃の話を
堰を切ったように 話してくださった
そして今また 忍び寄る戦争の影を
感じておられるのがうかがわれた
戦地で亡くなった祖父の命日に
私は2人の男性から
戦争のかけらをいただいた
日頃は温和な男性患者さんが
ムックリと起き上がって ベッドに腰かけている
センサーマットが その事を知らせてくれた
その人は歩けないのに
時々歩こうとして 危険な体勢になるので
センサーマットが ベッドサイドに敷かれているのだった
「どうしたの?」
その人は思いつめた 真剣な顔で
「兵隊さんになりに行く」と言う
「どこに行くの?」
「広島の連隊だ。今から行かんといけん」
私は何とか それを思いとどまらせようとするが
「邪魔をするな!お国が大変な事になっているのがわからんか!」
と 一喝される
そのままにしておけば 歩けない足で踏み出し
転倒するのは必至だった
他のスタッフにも 手伝ってもらい
大きな体格で 力も強いその人を
取りあえず リクライニング車椅子に乗せた
そして 戦争モードになってしまったその人に
戦争の時局をうかがいながら 散歩した
国を守るために 兵隊になって戦う
その人は完全に 70年前にタイムスリップしていた
どうしたものかと ため息をついていると
「またご迷惑をかけているんですね」との声
「お父さん 迷惑をかけちゃだめだよ」
洗濯した衣類を持って来た 息子さんだった
思いつめておられる状況を話すと
息子さんは「お父さん 戦争には行かんでいいよ」と
やさしく声を掛けられた
すると「行かんでもいいか?」と
その人は救われたように言い
目を閉じ 合掌したかと思うと
そのまま眠ってしまった
何を言っても 聞く耳を持たず
「兵隊さんになりに行く」と言い張っていたその人が
息子さんのたった一言で あっけないほど簡単に安心感を得た
そしてお国のために・・・とは言っていたが
本当は 兵隊さんにはなりたくなかったのだと知る
70年前は どうだったのだろう
男たちは 心からの愛国心で
戦争に駆り出されて行ったのだろうか
国を守るという気持ちと同時に
命を落とすかもしれないという 大きな不安もきっとあっただろう
私も少し タイムトリップをしたようなひとときだった
その後 別の患者さんの所に行った
処置をしながら その人に思わず
「Iさんは終戦の時 何を思いましたか?」と質問した
「恐かった これからアメリカが日本をどうするのか
自分たちは殺されるかもしれんという 恐さで一杯だった
親は自決することまで話をしていた」
まるでその事を 話したくてたまらなかったように
その人は 終戦の頃の話を
堰を切ったように 話してくださった
そして今また 忍び寄る戦争の影を
感じておられるのがうかがわれた
戦地で亡くなった祖父の命日に
私は2人の男性から
戦争のかけらをいただいた