宗武志の「さみしら」 -(連載)徳恵翁主&李王妃方子殿下…「政略結婚」批判は妥当?(2) | 流じゅーざの『日韓・朝韓』

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宗武志伯爵と宗徳恵(後の梁徳恵)

 

バンコク在住のじゅーざです。

 

現在韓国ソウルの観光地「宗廟」に行くと日本人ガイドが

 

  英親王(李垠)は日本に連れていかれて梨本宮方子と「政略結婚」させられ…

 

と説明され、昌徳宮に行くと楽善斎に行ったところで日本人ガイドが

 

  徳恵翁主(梁徳恵)は日本に連れていかれて宗武志と「政略結婚」させられ…

 

と言われますが、果たして実態はどうだったのか???

 

それをこのシリーズで考えてみたいと思います。

 

なお、今まで混乱してきた人名表記は、「敬称なし」で、統一することとします。よって、李王垠殿下は李垠、李王妃方子妃殿下は李方子、梁徳恵姫は梁徳恵、李太王高宗殿下は慣例通り高宗、李王純宗殿下は同じく慣例通り純宗と表記することとします。

 

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第2回は、ちょっと趣向を変えて梁徳恵(当時は徳恵姫)と結婚した対馬宗(そう)家の

 

  宗武志(そう・たけゆき)の書いた詩「さみしら」

 

を紹介したいと思います。

 

この詩は宗武志の詩集『海郷』(第二書房、1956年)に収録されている詩で、この書『海郷』は本当に入手が困難ですが、本馬恭子著『徳恵姫 李氏朝鮮最後の王女』に収録されているのでそこから紹介したいと思います。

 

『徳恵姫 李氏朝鮮最後の王女』は今日読み終える予定なので、また追って言及しますが、本馬の筆の記す宗武志は非常に魅力的な男性で、背は高く、日本語の詩歌はもちろん英語にも堪能で非常にウィットにも富んだ方だったようで、オレがこの「さみしら」の詩を読むに際しては、あたかも

 

  宗武志の目で梁徳恵を見つめているような感情移入をしてしまいました。

 

もちろんそれは温かい愛情と憐憫、そしてなんとも言いようがない葛藤を含むものでした。当然ながら宗武志の徳恵に対する目は

 

  (恐らくは)韓国で想われているような冷たいものでは決してなかったはずです。

 

宗武志と徳恵本人がその関係について直接書き記したものがない以上、かろうじて書き残された宗武志の詩からその心情を想像するしかないのは本馬が『徳恵姫』で書いた通りです。

 

さて、皆さんは以下の詩を読んでどう感じるのか…まず一度お読みください。そしてこの連載を読み終わった後にもう一度読み直してみてください。その感想を聞かせていただければ幸いです。

 

長い詩ですがご容赦ください。では、どーぞ♪

 

宗武志 「さみしら まぼろしの妻を戀ふる歌」

 

  狂へる神の子ならば

  あはされは 言はむかたなし

  魂失せしひとの看取りに

  うたかたの世は過ぎむとす

 

  わかき日を なにに偲ばむ、  

  あたら夜の 石の怯えか

  花さそふ窓にそむきて

  つづりては破(や)りにし反故か。

 

  髪かともあはく匂ひて

  たらの芽のほぐるる朝も

  きぬずれのかそけきに似て

  樫の葉のしぐれに暮れぬ

 

  ひとじもの 若きも老も

  せつなきは 片戀ならむ

  いまあへて いづれと問はば

  老いずまの嘆きといはむ

 

  世に立てる 高きと否と

  こがるる身あつきはおなじ

  おほかたは さめなむものぞ

  暁(あけ)のほし薄るるごとく。

 

  いろあせぬ黒きひとみに

  つね見守(まも)るまぼろしの影

  うつせみの在りかを知らず

  言問へど こたへぬくちよ。

 

  さみしらは もののけに似て

  いぶきにも潜むといへり

  ふと ひとのこころに入らば

  ひさ住みて 去らじとし聞く

 

  戸籍簿の紙ひとひらに

  夫婦ぞと うけひしものの、

  つとめせぬ ふてたるをみな

  かへりこぬをとこもあらむ

 

  名もしらぬ父の子ゆゑに

  ははとなるためしもありと。

  肩よせむ機(しほ)さえなくて

  ゆきかよふ魂もありけり

 

  まさめには映らずなりて

  春と秋 ゆびにあまりぬ。

  愛(は)しとみし めぐしとも見し

  かの少女(をとめ) その名さみしら

 

  ひろからぬ胸のかたすみ

  住みなれてひさしきものを、

  くつろがむ暇もなきかに

  つつましくそろへし膝よ。

 

  ひとよすら ふしどに引かず

  はなびらのくちも吸はねど

  妻と呼ぶ、われにはゆるせ、

  としとらぬ すずしの眉よ

 

  あるときは きみがさす紅

  なぞらへぬ 雲間の朱(あけ)と、

  星合ひの夜のかがやきは

  またたきに たぐへもしつれ

 

  つぶらなる あまき蓮の實

  あぢきなし、 涙に食めば

  ふくろなす蕚(うてな)はちぢに

  やぶれゆく わがこころかな。

 

  うれひあり 傷(やぶ)らずといふ、   

  大人(うし)こそは 聖(ひじり)なりけり

  わが嘆き こころを裂きぬ、

  身をもまた やがては殺(と)らむ

 

  ああ神よ、戀のもとすゑ

  み手にしてさばきたまふに、

  おみなごのあまたのなかの

  このひとり 惜しみたまふや。

 

  わがつまは もの言はぬつま、

  もの食はぬ ゆまりせぬつま

  淘(よな)ぎせず 濯ぎもせねど、

  あらがはぬ やさしのつまぞ。

  

  世にをみな乏しからねど

  汝(な)を措(お)きて ひともあらじと、

  つれも子もあるべき際(きは)を

  めざめても夢にも想ふ。

 

  ひくきより 山は仰がむ

  たかく居て 海みせかむと

  ふじの嶺(ね)に ある日のぼりて

  するがなだ光るも見たり

 

  またある日 荒磯(ありそ)にいでて

  ゆく雲を とぶらひにけり、

  なぐさまず、岩かきいだき

  かゆき胸そだたきにけり。

 

  蟻つどふ 谷間の清水

  むすぶひと あまきを知らむ、

  やまの尾の草びらの香は

  頬よせて かぐべかりける

 

  うつしよに きみにえ會はで

  またの世を いかで頼まむ

  まぼろしは遂にまぼろし

  夢は夢、さめずありとも。

 

  あざけりは なほ輕(かろ)からむ、

  罪もよし、とがめも受けむ

  かどはかし駈けおち未(まだ)し

  つれじにも いとはじものを

 

  ひとたびのいのちを亨けし

  ひとの世を あへて呪ふや、

  狂ひしか、 いまだ狂はず、

  いま降るは 霰ならずや。

 

  荷のおもき車ひくもの

  しば憩い 汗をぬぐへり、

  そこばくの花をも得ては

  うま酒にのどうるほさむ。

 

  驛路(うまやぢ)に降りたつひとら

  おのおのの惱(なや)みを祕めて

  足早やに、 もの言はず散る、

  ほかげ守り待つらくのゆゑ。

 

  ひろめ屋の おどけは哀し

  頬そめて 岐路(ちまた)に立てり、

  榜(ふだ)ささげ 仕種(しぐさ)にまねく

  かへりみて わが身を思ふ

 

  おしへごのをとめの群は

  會釋すと にはかに笑まひ

  うちつれて さざめき去るを。

  いずくへか われはあゆむ。

 

  みそかなる罪負へるもの

  掟あるみちをゆくごと、

  いつの日か きみに遇はめと

  あてどなく あれはさ迷ふ。

 

  春さむき薄ら日のいろ

  消えぬまぞ せめてぬくとき、

  ふけし夜の みやこ大路に

  霜叫ぶ。妻よ、聞かずや。

 

 

この詩を収めた『海郷』の発行が1956年ですが、宗武志が徳恵と離婚したのが1955年6月。詩の中で読んでいる「妻」は徳恵のことと思われるので、この詩自体は離婚前に書かれたものと思われます。

 

この詩の意味については詳しく述べる時間が今はないですが、宗武志の妻に対する想いと、当時彼のおかれた周囲の非難(1950年に金乙漢が徳恵を松沢病院に訪問して不十分な理解のもと記事にしたために1950年以降、特に韓国人の間では宗武志への非難の声がかなり強まった模様)を意識したような句もあります。

 

しかし宗武志の徳恵に対する想いは副題の

 

  まぼろしの妻を戀ふる歌

 

という文句に十分あらわれているのではないでしょうか。

 

宗武志は終生徳恵と徳恵との間の娘である正恵について口外せず、周囲もその彼の意をくんで敢えて聞くことがなかったようで、それがために二人の関係についての事実を知るのが不可能であり、こうした宗武志の残した詩の中に彼の想いが現れている部分があります。

 

こうした彼の詩を発掘し、世に発表した本馬恭子女史の努力には敬意を表します。

 

こんかい終わり

 

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