この作品は『ポケモンレジェンズアルセウス』を元に書いています。わたし個人の妄想であり、原作の内容とは無関係です。


「う〜ん、誰かに似てるんだよな」

 ウォロの顔を見ながら、むしろ睨みつけながら、ショウは首を傾げた。

「シロナ、という方では?」

 以前に聞いたことがある。ウォロさんってシロナさんにそっくりですね、と。


 シロナは未来のチャンピオンらしい。


 彼女の話を聞くたびウォロは思った。自分とはあまりにも正反対の存在だと。

「シロナさんもそうですけど、まだ誰か似ているような…… あ、ジュンくんだ!」

「ジュン?」

「近所に住んでいた男の子です。髪の毛が羽ばたいていて、罰金が口癖なんです」

「どこにワタクシと似ている要素が?」

「髪の毛が羽ばたいているところ」

 ウォロの髪型は平常時は普通だが、感情が高揚すると上に逆立つらしい。


 どういう仕組みなのだろうか。

「ジュンという方とはよく遊んだのですか?」

「はい。というより彼が元気すぎて。わたしは無理やり巻き込まれる形でした。

 おい、おまえ! 一緒に遊べよ。遊ばなかったら罰金100円だかんな!


 笑わなきゃ罰金1万円だぞ!


 彼の罰金はどれも優しいものばかり。


 だけど、ある日から顔を見なくなった。大人達がウワサするには旅に出たらしい。


 ああ、やっぱり男の子なんだ。


 帰って来たジュンは少し大人になっていた。

「ショウさん、アナタも旅に出たかったのですか? ポケモンと一緒に冒険したかった?」

「最初はイヤでした」

 ショウの言葉にウォロは目を見開く。

「冒険はケガすることもあるって。そう聞いたから。だったら家で良いやって。でも冒険した人の話を聞くうちに行きたくなって」

 だが、一歩が踏み出せなった。


 そんな折、アルセウスが夢に現れた。そのまま過去のヒスイ地方に飛ばされる。


 これはわたしが望んだのかも。

「ショウさんの故郷はどんな所なのです?」

「フタバタウンです。とても小さな、始まりの町。家は4軒ほどでした」

「過疎化、進んでいます?」

「田舎はそんなものですよ」

「いや、田舎でも建物4軒は少なすぎますよ。ご近所全員が顔見知りですよね?」

「一緒に夕食を食べていました」

「娯楽などはあったのですか?」

「池があるんです。そこでよく釣りをしていました。たまにギャラドスが釣れましたよ」

「物騒ですね」

「わたし達の世界のギャラドスは、ここより大人しくなっているので平気です」

 たまにイタズラで石を投げた人が噛みつかれたりはするけど。それは自業自得だ。


 池のほとりで泣くと、ポケモン達が顔を出す。


 そして泣いている人間を笑わせようと、水面はバチャバチャ飛び跳ねるのだ。

「都会には遊ぶ所も多いですけどね」

「なんです、賭け事でもするのですか」

 ウォロは意地の悪い笑みを浮かべながら、からかうようにたずねた。


 ショウは図星をつかれて驚嘆する。

「なんでわかったんですか!?」

「は!? 本当に賭け事を? アナタみたいに頭の悪い子どもが?」

「急にディスられたんだけど」

 ふくれっ面をしながら答える。

「本物のお金を使うわけじゃありませんよ。玩具のお金を使うんです」

「大金を持ち歩くのは危険ですからね」

「玩具のお金でも、一定額以上を集めたら景品に交換できるんですよ」

「どれぐらいの難易度なんです?」

「簡単だと言う人もいれば、難しいって言う人もいました。運に左右されますから」

「賭け事とは、そういうものです」

「当たるときは当たりますし、逆に外れる時はとことん大ハズレするんです」

「そのハズレを取り戻すために、また躍起になってのめり込むのでしょう?」

「ウォロさんはしたことあるんですか?」

「ショウさん、ワタクシは商人ですよ。商品を売ればいくらでもお金は手に入ります」

 ウォロにとって、ショウも良い金づるだ。


 彼女はポケモンを大切にしている。だからこそ、きずぐすりを大量に購入する。

「ほら、いいきずぐすり買いませんか?」

「買います!」

 こうやって何でも買ってくれる。10倍の値段をふっかけても迷わずお金を払う。

「ワタクシ以外から買っちゃダメですよ」

「買ったら罰金ですか?」

「お金は要りませんけど、罰は与えます。ですから約束は守ってくださいね」



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