今日もまた地元の中学生が来ている。今日は友達を誘って三人でヤズを狙っていた。ジグを投げては巻く。その熱のこもった力強さに思わず自分の若いころを思い出して笑みがこぼれた。
「メッキを釣った方が手堅いのに」と尾崎は言うが、エギングタックルに毛の生えた程度の道具立てでヤズと闘おうというのだから、それは楽しい。ヒットしたら引き倒される。そこをどうにか持ちこたえて自分の側へじわりじわりと獲物を寄せてくる。このことは、まだ子供の中学生にとっては、この上もなく刺激的なはずだ。その証拠に、ヤズを掛けた子は必死だった。対して観戦者側にまわった友達はわいのわいのと囃したてるばかり。必死で余裕のないやり取りに興じる子も、声援を送る子も、一様に熱いのである。
「おっ、また来た。俺って名人!」とばかりにメッキを釣りあげてはニンマリする尾崎に対して中学生は何の関心も示さなかった。
ひたすらヤズのボイルを追って動く。中学生以外にも数人が同じようにヤズを狙っていたが、この日は一本か二本釣りあげられれば上出来だと思われるほど渋い状況だった。ふつう渋いというと食い渋ることを意味するが、要するに仕掛けの飛びが不足しているのである。ヤズが意地悪をしてジグの届く範囲に近寄らないだけである。届きそうで届かない。それだけのことだが、見ているこちらまでやきもきしてしまう。
尾崎はそれどころでなかった。釣れるときにしこたま釣るぞという気迫の発露が見られた。
私よりもひとまわり大きなペンシルをタダ巻きしているだけなのにメッキがよくヒットした。トップもジグも併用してやっているがペンシルに対する反応がすこぶるよいようだった。尾崎はクーラーボックスを用意していた。私は持って来なかったので、自分の釣ったぶんもそのなかに気前よく放り込んでいると、あるとき、「もうじゅうぶんなので、あとはリリースしましょう」と丁寧な口調で尾崎が言った。
なので、数は知れないが、おそらく写真の倍以上釣ったかもしれない。そのくらいの勢いでメッキがヒットした。
日暮が近づくほどに活性が落ちて、アタリの来ない時間が長くなった。それでも辛抱してやることをやっていると、あるとき二つ三つと連続で釣れてくることがある。なので、日が暮れても竿を納めることができなかった。薄暗くなるとアジが連発しはじめた。私はちょっと前に近寄って来たボイルめがけて、「かっ飛び君」をシーバスタックルでフルキャストしてヤズを仕留めたので、本日の仕事はおしまいとばかりに尾崎が釣るのを見ていたが、メッキを釣ったのと同じペンシルで次々アジが釣れるので、ワームで釣ったら入れ食いまちがいなしだと心に思った。
「もうじゅうぶん」と堪能しきった表情で尾崎が言ったので、じゃあ釣果写真を撮ろうと私は提案した。波止にメッキとアジを見映えよく並べて写真を撮った。先にも述べたとおりキープしたのと同じかそれ以上の獲物を無罪放免してやっているので、二人とも胸を張り過ぎて後方に倒れ後頭部を打って一巻の終わりになりそうなほどの威張りようだった。
ヤズをキャッチ。射程内で起きたボイルを見逃さなかった結果だ
ぶっ飛び君に食いついた
尾崎はアジまで釣れて終始ニコニコ
キープしたメッキとアジ
これを至福と呼ばずして、いったい何をそう呼べばよいというのか。
「尾崎よ。この前の借りは返したぜ!(アジングに誘って撃沈した、あの時の)」
そういう心境だった。
翌日もまた
尾崎とメッキ釣りを堪能した翌日に、また同じ場所で釣りをした。
用を済ませた帰りに立ち寄って、ちょっとだけ竿を出した。いい天気だったが前日よりもひんやりとして、もう一枚羽織るものが欲しかったが、あいにく用意していなかったのでネオプレーンのライジャケを中に着こんでみたら冷えを凌げて快適だったのでヤル気が出た。
さっそく仕掛けを組んで釣りはじめる。前日に大活躍した小型のシンキングペンシルを投げてタダ巻きしていると第一投目からガツンとアタリが来てメッキが釣れた。
しかし、前日ほど活性が高くなかったのでアタリのわりになかなかヒットに持ち込むことができず、じれったくなることもしばしばだった。
「ガツンと来いよ!」
そう内心思ってみても、じっさいはコツンである。
前日とちがってベイトフィッシュの数も少なめでボイルも散漫。ヤズの回遊は皆無といってよかった。
今回はヤズを釣るつもりはないが、海面が炸裂するところを見たい気だけはした。目の前でナブラが立つのは御免だが、メッキを脅かさない程度に離れた場所でなら大歓迎だ。しかし、日が暮れてしまうまでナブラはついに出なかった。
満月周りの大潮は漁師が宵の口にも船を出して疑似鈎の仕掛けを引く。なんでも煌々と照る月明かりのせいで、夜は餌をしないといわれる青物が口を使うのだそうで、漁があるなら稼げるとばかりに船を出す漁師も少なくないのだ。
さっそくメッキがヒット。今回も期待を裏切らなかった
ライフベストを中着にすると丁度よい季節になった
この日も漁船が引き釣りをしていたが、その距離と夕闇のせいで、私が釣りをする波止からは釣れているのかいないのかまでは確認できなかった。が、しかし、船の動きを見ていると意気あがるという感じに見え、疑似鈎に食らいついた青物を手際よく船縁まで引き寄せ、慣れた手つきで取り込んで、何事もないような所作でもうひと流しすべく仕掛けを手際よく投入する老いた漁師の姿が、私の目に浮かぶようであった。このばあい漁師は爺さんでなくてはならない。アーネスト・ヘミングウェイの名作『老人と海』のサンチャゴ爺さんのように痩せていて、しかし、屈強で、頑固で、生気に満ちていなくてはならないのだ。もちろんそうじゃないと許さないのは私の勝手で、あんがい若い漁師が精を出して漁にいそしんでいるのかもしれなかった。
しかし、私は「がんばれ、サンチャゴ爺さん!」と沖に向かって小さく応援の声を送った。
それとは裏腹に、日が暮れると冷えが勝って、こちらは生気みなぎるどころではなくなった。
小さいがキビレも釣れた
青物を狙って疑似餌を引く漁船
なので、おかずも獲れたことだし、いい頃合いだと思って十七時半に納竿した。
ジグヘッドワッキーで根魚、ジグでアジをGet!
用のついでに行く先々で時間があれば釣りをする。あるいはその帰りに道草をして竿を出す。最近そういうことばかりしている。
時間的には夕方早くから宵の口に竿を出すことが多いが、それだって夕方早くから日没前までとか夕暮れから宵の口いっぱいまでといったように、その日その日でまちまちだ。
今回は夕方よりも早い午後二時ごろに釣り場に到着した。
さっそく仕掛けを組んで釣りはじめる。
石積みの波止の肩の部分は傾斜が緩めで、そのまま浅い海の底までつづいている。その底は見えそうで見えないが、ところどころ黒っぽいのは根がある証拠だ。
じっさい仕掛けを沈めて探ってみると硬い違和感が仕掛けを伝って手元に来た。
これでは、メバル用の小粒なワームをジグヘッドにセットしてやっているとそのうち手元が狂って根掛りさせてしまうかもしれない。やや潮が効いていたので普段より重めのジグヘッドを使っていたからここはどうしてもテンポよく誘わないとまずい状況だった。風は弱いが向かい風なので軽い仕掛けでじっくり釣ろうと思っても飛距離が出ない。いつもなら石積み波止の両側の肩の部分をひととおり探ってみるのだが、底に根が黒っぽくぼんやり見えている辺りに魚影が確認できたので、その部分を丁寧に探るときめた。そうなると仕掛けは重めのままでいくしか手がない。
そこで、ジグヘッドの重さはそのままにワームをシマミミズに似たものに交換して釣ることにした。この贋シマミミズのまんなか辺りにジグヘッドフックを横刺しにする。いわゆるジグヘッドワッキーというやつだが、このリグの特徴はワームが横向きに泳ぐのでワームの側面に広く水の抵抗が働くため大きな揚力が生れる。加えて、ゴツゴツした底を舐めるようにワームを動かしたところで、長いワームが横向きに這うようなかたちになるため、小粒なワームが頭から先に動くのと比べて根掛りが少なそうだということは誰にだって察しがつく。
さっそく、そのとおり誘ってみると、黒っぽく潮を透かして見えるその根の際にさしかかったとき小さなアタリが来て、誘いの手を止めると、今度はひったくるように仕掛けごと贋のシマミミズを捕えて走った。手元に来た感触からタケノコメバルだと直感した。カサゴは強く押さえ込むことはあっても猛ダッシュはみせない。だからフックアウトしにくいのだが、食った瞬間猛ダッシュをみせがちなタケノコメバルのばあいは気を抜いてやっていると取りこぼすことも少なくない。短距離の猛ダッシュだとはいえ油断すると泣きを見る。とくに鈎の先が甘くなっているのを承知の上でやっていると、仕掛けがはじかれて一本負けなんてことにもなりかねない。その日いちばんの良型を取り逃がさないためにも仕掛けの点検は怠らないようにしたいものだ。荒い根周りを攻めるばあいは、硬いものに鈎の先が触れて傷みやすいので、とくに注意が必要である。
さて、贋のシマミミズに食らいついて猛ダッシュをみせたのは、やはりタケノコメバルであった。仕掛けを引きずりまわすパワーには少々泡を食ったが、昼の日なかのヒットなので、ある程度寄せてくると対戦相手の動きがはっきり目で確認できる。もうあとは波止の石積みの穴に逃げ込まれないよう足元まで寄せて慎重に取り込めばことは足るので気持ち的には余裕があった。
そのとおり、取り込んだが、悪くないサイズのタケノコメバルであった。
その後、小ぶりなタケノコメバルを連続キャッチ。釣ったタケノコメバルはすべてリリースした。
石積み波止で釣れた今回いちばんの良型
船溜まりも探ってみたがノーバイトだった
今回は、このあと用がなかったので、暗くなってからも一時間ほど釣りをした。
夕暮れからアジの食いが立って、ジグで美味しいサイズが連発した。すっかり暗くなるとジグでは釣れなくなったのでワームに変更するとアジに混じってメバルも来た。メバルはこれから産卵の時を迎えるのでサイズを問わずリリースした。
アジは煮つけを食べたいと思って持ち帰った。チリメンやシラスをたらふく食って脂の乗ったアジなのでアジフライのほか煮つけてもすこぶる美味しい。
アジは多くがこのサイズ
暗くなるとメバルが食い出した
ジグを使うと釣り落としも多かったが、おかずをGet出来た
デーブ鎌田の話では、冬に向けて脂が抜ける時期なので味は落ちている。これからの季節、マアジは駄目で、マルアジが美味しいという。でも、私がよく竿を出す釣り場にマルアジの回遊はほぼないので、どうしても釣りたければ釣り船を仕立てて沖へ出るしか釣りをようがない。
なので、餌のチリメンやシラスが去ってマアジの味が落ちたらアジングはもうやらないと思う。それよりなにより、この先水温が下がると釣り物のマアジそのものが姿を消す。
そうなると、今度こそメバルの季節である。メバルはアジを釣るよりも少しだけ難しい。奥が深い。私はそう感じているので、なおいっそう遣り甲斐があると自負している。
なので、今から楽しみにしている。
情報
情報をどのように得ているか。それを訊かれることがある。
余り考えたことがないが、まぁ、①どこか釣れている場所はないかと問われたら快く相談に乗る。②誰かの親切で得た情報の垂れ流しは控える。心がけるとすれば、この二点ではないかと思う。信頼、信用というものは一朝一夕にして得られるものではないが、前述の二点をモットーに態度を変えずに接しつづけておりさえすれば相手も胸襟を開いてくれると私は信じる。自分でいうのもなんだが、読者のみなさんが思っているよりも私は人に対して親切だし、あんがい口が固い。(笑)
たしかに、おしゃべりな方だが、口にする多くは冗談や与太話ばかりで、その内容は実のある会話の体を成していないのだ。
故意にそうしているわけではないが、脳が勝手に処理するらしい。
「奴は肝心なことは口にしない。まったく、腹の黒い野郎だよ」
そんな陰口も耳に入る。
さすがに、それは言いすぎだろうと苦笑しても、べつに否定はしない。
人が悪いというのは本当なのだから。(笑)
また、情報は生き物だという人がいるが、私はそうは思わない。情報は石板に刻みつけられた文字のように変わることがない。生き物なのは現実の方で、こちらは片時もとどまることなく変わりつづける。なので、情報が成った時点から、流転して、この今の現実に至った経緯を、私たちは情報成立時の情報だけをもとに知ることはできない。となると、新たにタイムリーな情報を、それこそ知久一得てでもいない以上は、自分の頭で推測するほか手はないということになる。
そうであっても、情報は大事だ。そして、情報は多いに越したことはない。多ければ比較検討できるし、より新しく内容が濃ければ、よりいっそう役立つことだろう。
それでも、得た情報から何をどう読み取るか、それは読み取る側の問題である。情報をどう扱うかで得もすれば損もするので慎重にやらないといけない。
得た情報にまちがいがないと決めつけての話だが、いつ、どこで、どういう状況で、どういう仕掛けを用いて、どういう釣り方をしたら魚が釣れたのか。これさえ明確ならば、じゅうぶん有益な情報を得たといったんは喜んでよい。あとは情報を入手した側の考え方、用い方次第であろう。それを分析力といってもいいが、それにも個人差はある。
親切な人から情報を得て、ある日、アジを釣りに出かけたことがある。その日はよく釣れて、じゅうぶん楽しんだので、アジングの好きな尾崎を誘って似た時間に同じ場所に出かけて行った。
すると、釣れるには釣れたが、私が期待したほどの釣果は得られなかったので、ちょっとがっかりした。
ジグで釣れると嬉しさ二倍に
プチメバルでもジグならこの笑顔
まずまずのサイズをキャッチ!
私の誘いに乗ってこの少し前にもアジを釣りに出かけてひどい目に遭ったことのある尾崎は、パッとしないがこの前の時よりはずっとましだと思ったか、「ジグで釣れるのが嬉しい。じゅうぶん楽しい」と感慨を述べていた。が、私としては夕暮れの一時しか食いが立たない釣法だから、そのあいだじゅうはもっと連発してほしかった。
爆釣の期待を胸にひたすら誘う
笑い損ねてつい真顔に
いゃあ、よく引いたわ、と尾崎
暗くなるにつれジグでのアタリが遠のいた
あんのじょう、真っ暗になるとジグに対する反応が極端に悪くなった。その後は、子メバルがちょっかいを出してくる率が高くなった。たまにコツンと来てヒットしないアタリは、まず子メバルだろう。
小さなメバルじゃ仕方がないということで、早々に竿を納めた。
ふたたびワッキーを試す
ジグヘッドワッキーを用いると根掛りしにくいので浅場でもじっくり攻められる。ワームを出来るだけ長く見せてじらさないと食いつきの悪いばあいに重宝するリグだが、ワームをジグヘッドに普通に縦刺しして釣果を見込めるならそれに越したことはない。どちらでも似たような釣果を得られるならスピード感ある攻めの可能な正攻法のワーミングで攻め通せばよいにはちがいない。しかし、先に述べたように根掛りしそうな浅場でねちねちと根魚を誘うにはネコリグとかジグヘッドワッキーがいい仕事をすることも少なくない。両方をうまく使い分けることで釣果アップを図りたい。
足元付近でカサゴが釣れた
岸壁のきわで釣れたカサゴ。縦の誘いで食わせた
根魚にジグヘッドワッキーは効果大
では、水深のある岸壁から攻めるばあいはどうか。これについても有効かと問われると、足元のみを直撃するだけなら沈むのに時間のかかるジグヘッドワッキーはデメリットの方が多い。まだネコリグの方が、沈みがよいので、扱いやすい。
そうはいっても、それは扱い勝手の話で、魚がどう思うかはまた別である。
今回はそれを痛感させられた。
普通にワームをジグヘッドにセットして足元の岸壁際を狙ってみるとパッとしないのに、深い意味もなくジグヘッドワッキーで攻め始めると俄かに時合が来たかと思うほど好反応をみせて、小ぶりながらもカサゴが連発しはじめた。比較する目的から普通刺しのジグヘッドにもどして攻め始めると、気のないアタリは何度かあったが、食いつきに歴然とした差が出た。またジグヘッドワッキーで釣りはじめるとカサゴの食いつきが目に見えてよくなった。
なぜか?
性急に答えを出そうと焦ることはないが、ただ、この事実に関しては記憶にとどめておかなければなるまい。
その後も、ジグヘッドワッキーを試す機会があったが、状況のパッとしない日中に普通刺しのジグヘッドリグからワッキーリグにチェンジすると魚が容易に口を使ってくれるようになった。そういうことが何度かあった。
ただ、夜間はジグヘッドにワームを縦刺しにして普通に攻める方が釣果を得やすいと感じている。
むろん、この先も長期にわたって検証していく姿勢が求められるだろう。まぁ、それは確かにそうだが、中間報告的にまとめるなら前述したような論調になる。いずれにしてもさらに長きにわたって試してみなくてはなるまい。
石積みからアジを狙う
さっそくアジをキャッチ。中層で来た
沖から誘ってくると石積みの肩でヒットした
日暮が近づくにつれ冷えだした
アジのみキープした
その数日後、ちょっと用事を済ませたあと、夕方からアジを狙いに漁港の波止へ立ち寄った。
このところ夕暮れどきにアジの食いが立つことが多いと聞いて寄ってみたのだが、到着早々、根魚の時合に行き合ったようで、悪くないサイズが連発した。
アジの姿を海中に目視できたので、そのうちうわずってきたら食いも立つだろうと焦らず慌てず仕掛けをあやつっていると、果せるかな根魚の次にアジの時合がきた。
その後は、おもしろいようにアジが食いついた。風もなく釣りやすかったが、山の向こうに陽が隠れると季節が季節だけに急に冷えた。巷ではインフルエンザが流行しはじめていると聞く。寒い目に遭って、免疫力が落ちたところを、ウイルスの餌食にでもなってしまっては大変だ。ここは用心が肝心とばかりにあっさり撤収した。
ベイトフィッシュはイワシ
日中からライトタックルが大活躍。メッキが釣れ、アジが釣れ、メバルが釣れ、根魚が釣れる。こういうことは稀なので、つい調子に乗って度々出かけてしまうが、これでは釣っているのか釣られているのかわからなくなってしまう。
この連日の大漁はイワシの大群が接岸しているせいだが、イワシといっても大きさはまちまちだ。いちばん多いのがチリメンといわれるサイズ。次がシラスと呼ばれるサイズ。それより大きなイワシは沖の方で青物に追われて海面から躍り出るのを度々目撃してはいるものの数は知れているようだった。
漁港内にも漁港の外にも小さなイワシが群れ泳いでおり、それをつけ狙っていろんな魚が上ずっている。
海面に近いステージでメッキが来る。アジが来る。キビレが来る。メバルが来る。タケノコメバルが来る。カサゴが来る。ベラが来る。クジメが来る。いろいろ来る。
今回は五種類、まさに五目釣りになった。クジメはすぐ無罪放免してやったが、一種一匹ずつを、拾ったバケツに海水を汲んで活かしておいて、あとで写真を撮った。
まるでチョイ投げでもやって来たのかと誤解されそうな魚の顔ぶれだがワームを使って釣りあげた。
そして、特筆すべきは、前述のとおり海面に近い層で五目全魚種がヒットしたことだ。海は浅くても真っ昼間に底の根城から出張って来てクジメやカサゴやタケノコメバルが口を使うというのも珍しい。それだけイワシの子は美味いということだろうが、そりゃ人間が食っても美味いのだから魚の食い気を誘うのもうなずける話である。
キビレもすっかり顔なじみに
珍しくクジメがヒットした
シラスが回遊して来た
こちらはワームより小さいちりめんの群
漁港内でもべイト次第でアジは釣れる
クジメを加えると五目釣り達成です!
タダ巻きでも釣れたが、竿先で誘ったり止めたりするのも効果的だった。小粒のジグを投げてほったらかしておくと勝手に食いついて来りもした。むろん、効率だけをいうならワームの方がよいが、小型のプラグやジグでやっつけると、釣った感が強くて、喜びもひとしおである。なので、つい使ってしまうが、プラグの多くはトリプルフックを使用しているため魚の口を傷めがちである。リリースするにしてもシングルフックのようにダメージの少ない状態で放してやることはできにくい。なので、釣れるだけ釣るというのはよして、持ち帰る分だけクーラーボックスに入れたら早々にその場を辞すというのが最善であろうと思われる。
フライでアジを釣る
フライでどんな魚が釣れるのか。このばあい海の魚ということだが、まぁ、ルアーで釣れる魚なら何でも釣れると言っておこう。ただし、あまり深いところを釣るのには適してないので、たとえばボートからバーチカルジギングを楽しんでいるアングラーに混じって深い海の底から仕掛けを誘い上げてくるなんてことには向いていない。
いちばん得意なのは海面付近で餌を捕食している魚を狙って釣ることだが、ショアジギングやシーバスのルアーフィッシングのように素早く沖のナブラに向けてビシッと遠投を決め込むというわけにもいかないので、その点においても考慮が必要だ。
また、仕掛けの取り回しをルアータックルと比較してみたばあい何倍も劣っているので、どちらかというと数釣りには向かないということも言える。
それでも、ルアーに反応が悪く、フライに反応がよいというのもよくある話で、そのばあいはフライフィッシングの独壇場だといってよい。
フライで釣るのも楽しい
夕暮れどきにアジが連発
つい先日もフライタックルで漁港の波止からアジを狙ってみた。
漁港の出入口付近で水深が五メートル余りもあるが、夕暮れどきに海面近くを泳ぐシラスを食いに浮いて来ることがわかっていたので、たまにはフライで狙ってみるかという気になった。
ここ数日、ワームやジグで釣って来た経験から、苦戦しそうだなどとはこれっぽっちも考えなかった。
そのとおり、薄暗くなる前から今回もまた表層でアジが連発した。ごく小さいエビの仲間を模して巻いたフライでしばらくのあいだ入れ食いになった。なので、フライを付け替えることなく最後まで釣ったが、意外にもメバルがたくさん釣れて驚きの目を見張らされた。メバルは何匹釣ったか正確に覚えていないがカサゴが3つも釣れたのには首をひねらざるを得なかった。ルアーでライズするメバルやアジを釣っていると稀にカサゴが食いつくことがある。しかも、海面直下でワームやメタルジグに食って来る。カサゴも魚で、鰭の数もメバルと同じだけ付いているし、泳ぎが達者でないはずはなかろうと思われるので、御馳走が海面付近にかたまっているなら腹を満たそうと餌めがけて浮いて来ても何ら不思議はない。
カサゴという根魚は冒険家で、なかなかの旅好きで、一日の内に百キロ近くも潮に乗って居場所を移すことがあるそうだ。これについては学者がタグだか発信機だかを取り付けて実験した結果を報告書にまとめてあるとかで、信ぴょう性について口をさしはさむ余地もないそうである。
潮に乗って半分他力本願でもって大移動するカサゴなら底の物陰を離れて海面近くまで浮いて来るなど朝飯前だろう。
それにしても3つ釣れたら驚かぬわけにはいかない。
サイズがたいしたことなかったので、メバルもカサゴもリリースしたが、フライを丸呑みしたメバルだけはキープした。うまくフックを口の奥から外せたと自信を持っていたのに、〆られた魚のような痙攣の症状が出てしまった。
アジは釣りあげたり釣り落としたりしながらもまずまずの釣果を得た。
シュリンプ系フライを多用した
メバルもヒットした
本日の釣果
タックルは4番。渓流でアマゴやイワナを相手に遊ぶのにちょうどよい番手である。なので、アジを釣るのにも適している。大きさも渓流魚とアジは似ているし、細長い体形も似ている。渓流のアマゴやイワナは体表の紋や斑点が目を引くが、アジは金属的な鈍い光を放つばかりである。
アタリが来て、アワセを入れると、小気味よい引きが手元に伝わってくる。
そのたび、「やったぜ!」というハイな気分になる。
フライは本職なので、釣れて当然と思ってやっていても、やはり釣れると嬉しいものだ。
この先、冬本番になっていっそう寒さが身にしみる季節が到来し、メバルの大きいのがのっ込んで来たら、そいつもいただいてしまおう。そうひそかに決めて、目の前のアジを狙いつづけた。
いい流れ、高活性!
アジは朝夕の薄明るい時間帯に活性が上向くことがわりと多い。
これに加えて今回は潮流の効きのよい時間帯と重なったこともあってアジが海面付近でしきりに餌を食べていた。ちりめんの数は日を追うごとに減って来てはいたが、まだシラスやシラスよりも少し大きい子イワシはこのエリアを去ることなく残っていたので、もしかするとそれを食いに表層付近へと出張って来ているのかもしれないと思ったが、最初は半信半疑だった。というのも、私が竿を出したのは漁港の出入口で、ベイトフィッシュが海面付近に集まってキラキラして見えたのは対岸の波止の内側だった。つまり私の仕掛けの届かない対岸の漁港内にシラスや子イワシが群れていた。黙視するかぎりにおいて私の仕掛けで狙える範囲内にはその気配がなかった。対岸側は、サイズ的には大きくないが、チヌやシーバスがときおり海面を割って餌のシラスや子イワシをむさぼり食っていた。もし本気で釣りに来ていたならば対岸へ移動して狙っていたかもしれないが、様子見がてらちょっと寄ってみただけの私は、「向こう側にエントリーすればよかったな」と単純にそう思っただけだった。
それはさておき、表層に出ておそらくアジが微細な何らかの餌を食っている。しかも、自分のつい目と鼻の先である。これを釣らないという手はないだろう。
ジグは3gまでの小型を使用
明るいうちからカサゴもヒット
⇒次へ続く
過去の釣行記はこちら
→ユニチカフィッシングラインサイト