2代目若乃花と腕力

ボクサーのパンチ力や野球のピッチャーの球速などはあるに越したことはないのですが、あればいいというものではないですよね。パンチが強いほうが勝つとは限らない事や球の速いピッチャーがメッタ打ちに事もありますからそれは現実が証明されているとは思うものの、お相撲さんの腕力という点ではどうなのかなと思います。

確かに千代の富士は腕力が武器だったし腕力で部が悪い隆の里には苦戦してました。しかし組み合う格闘技である相撲の場合はボクサーのパンチ力やピッチャーの球速よりももっと大きなウェイトを占めるのではないかという気もします。

ですが相撲ファン歴40年を超えている私もどうしても理解できないことが・・・。

それは2代目若乃花の事なんです。

彼は非常に柔らかな体の持ち主で早くから大器と期待され、若三杉の名で切れ味鋭い投げ技を武器に特に女性ファンの黄色い声を一身に受けた人気力士でした。横綱昇進を気に師匠の名をつぎ2代目若乃花を襲名しました。

横綱昇進後は所謂万年2位の成績で当時全盛を誇った北の湖によく善戦はしたもののなかなか上に行くことができず、勝率などではＡ級横綱の実績を残したにも関わらず彼を一流横綱と呼ぶ人はいないというある意味不運な人でした。

彼は左四つからの上手投げで何度も北の湖にその場所唯一の黒星を付けるなどということが度々ありましたが如何せん腕力が・・・。非力であるのが弱点と言われていました。

ところが千代の富士の横綱昇進時、若乃花はすでに引退間際であってにもかかわらずがっぷりになると千代の富士には勝目がありませんでした。

「千代の富士は体が小さかったから」という人もいますがこの時の千代の富士は183cmで120kg、これに対し若乃花は187cm129kg。

確かに若乃花の方が大きいですがそんなにいうほど大差はないですよね・・・。

それじゃあ若乃花は非力というのが嘘で技術を強調したいがため非力ということにされた（双葉山や王貞治さんのように）のか？

それも否でしょう。

若乃花は北の湖（若乃花が唯一がっぷりで勝てない相手）に対する時に上手を切るまではできるんですけど、寄って行くときに体を寄せるためその際に上手を引かれ逆転されることがしばしばありました。

これに対し腕力が非常に優れていると言われた横綱千代の富士、貴乃花はそれぞれ双羽黒、曙と自分より15cm以上背が高くリーチも長い相手に対し上手を切ったあと寄る時に廻しを引かれることはありませんでした。これは千代の富士や貴乃花の腕力が非常に優れており、強烈に引き付けることができたためだと推測されます。若乃花の場合は自分より8cm背が低くリーチはもっと短い北の湖相手に寄る時に上手を引かれたのです。つまり引きつけが十分に効いていないということです。まだあります胸を合わせて腰を据えれば千代の富士よりも強かった若乃花が一度もろ差しになりながら腰を据える前に千代の富士に両上手から引き付けられそのまま寄り倒された事があります。これは相当の体格差か腕力の差がないとそういう相撲にはなりません。

つまり、2代目若乃花は本当に非力だったということなのでしょう。

2代目若乃花のプロフィールに載っていた事があるのですが握力60kg、背筋力180kgとありました。これだけ見ると握力70kg　背筋力260kgの私のほうがまだ強いということになります。

しかしそんな彼がいくら体が柔らかくても下半身がしっかりしていても、そして技術があっても、がっぷりから勝てるものなのでしょうか・・・？

私にはずっと疑問でした・・・。

何度も元力士に聞いた事があるのですが、若乃花自身が引きつけが効かない体質であろうとか、引き付けられてもその柔らかさ故まだ腰が回るなどと言われましたがなんかしっくりときませんでした。

いや嘘だと言ってるわけではありません。おそらく口で簡単に説明できるものではないのでしょう・・・・。

もちろん、若乃花の腕力が女の子並だったらいくらなんでも勝負にならないでしょうし、非力といってもそれなりにパワーがあったということではあると思いますが・・・。単純明快な競技である相撲でも実は本当に奥深いものであるということなのでしょうね・・・。

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