やっぱり、これこれ——懐かしさに足を止めて
やっぱり、これこれ。
ふと視線を向けると、タテカンが目に飛び込んできました。思わず足を止めてしまいます。そこにあったのは、言葉にしにくい、けれど確かに覚えのある空気でした。
熊野寮前に残る、30年前の気配
京都大学熊野寮(くまのりょう)前には、学生自治の名の下に、30年前の雰囲気がそのまま残っていました。
整えられすぎていない雑多さ、主張の強い言葉、少し色あせた掲示物。そのすべてが、どこか懐かしく、同時に距離感を保ちたくなるような空気をまとっています。
全体としてはゆるい。
けれど、どこか不穏でもあります。
一歩踏み外すと、もう戻って来られないのではないか——そんな感覚を呼び起こす、独特の怖さが確かにありました。
熊野神社近くで味わった「当時の気分」
そのまま足を伸ばし、熊野神社近くの学生自治寮のあたりまで歩いてみました。
すると、不思議なことに、空気の匂いや街の輪郭が、30年前の記憶とゆっくり重なってきました。
若さゆえの無防備さと、何者かになれると信じていた時代の高揚感。
自由と危うさが紙一重だった、あの頃の気分を、ほんのひととき味わえたように思います。
時間は確かに流れましたが、場所は記憶をよ呼び覚まします。
熊野寮前から熊野神社へ続く一帯で、私はしばし、30年前の自分に再会する散歩を楽しんだのでした。










