街角で出会った奇跡――林真理子さんの「あの方」 | 大阪の弁護士•長野智子(智聖法律事務所)

街角で出会った奇跡――林真理子さんの「あの方」


大阪倶楽部


若き日の林真理子さんがコピーライターとして忙しく働いていた頃のことです。


ある日、友人が教えてくれました。「この近くに村上春樹がやっているジャズバーがあるの。本人もいるらしいよ。行ってみない?」


真理子さんは即答しました。「行く!」しかし、仕事の都合でなかなか時間が取れず、その計画は延び延びに。やっと行けるかと思った矢先、友人から電話が。「あのバー、閉めちゃったらしいよ。執筆に専念するんだって。」


落胆していた真理子さんですが、ある日、街角を歩いていると――曲がり角で突然、「あの方」と鉢合わせたのです。その人はまるで普通の通行人のように、自然に角を曲がってきました。


私(真理子さん)の声はその時震えていたと思う。


「…村上さん」


そしてやっと言えたのは、「ファンです。本全部読んでます。これからも全部読みます。」


その方は、道端で突然声をかけられた見知らぬ女性(真理子さん〕に少し戸惑いながらも、礼儀正しく答えました。「はあ、どうも。ありがとうございます。」


この偶然の出会いを林真理子さんは、ただこう一言で締めくくります――


「やはり、持っている。」


人生には、努力や計画だけでは引き寄せられない瞬間があります。林さんのように、街角で奇跡のような出会いを体験できる人は、何かを「持っている」のです。


その後年月が経ち、真理子先生は大阪出張、新幹線のお供に、村上春樹さんの新刊「騎士団長殺し」とコーヒー。村上春樹さんの新刊はすぐ必ず買って読む。これがどれほど幸せなことか、分かりますか?と問いかける真理子先生の言葉に、私も大きく頷いたのでした。