複数契約の生命保険、相続税の非課税枠は合算できる? | 大阪の弁護士•長野智子(智聖法律事務所)

複数契約の生命保険、相続税の非課税枠は合算できる?


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相続のご相談を受けていると、

「父が複数の生命保険に入っていた場合、それぞれに非課税枠が使えるのですか?」

というご質問をよくいただきます。


結論から言えば、生命保険金の非課税枠は契約ごとではなく、受取人単位で合算して適用される仕組みになっています。つまり、複数契約があっても合算して構いません。





■ 法律の考え方



相続税法第12条とその施行令第3条では、被相続人の死亡によって支払われる生命保険金には、一定額まで非課税の扱いが認められています。


非課税限度額は「500万円 × 法定相続人の数」で計算します。

ここで重要なのは、「契約単位ではなく人単位」で考えるという点です。


たとえば、被相続人に妻と子が2人いる場合、法定相続人は3人なので非課税枠は合計1,500万円になります。

そのうえで、受取人が妻である保険金が2契約分あるなら、その2つの契約を合算して1,500万円まで非課税として扱うことができます。





■ よくある誤解



「契約ごとに500万円ずつ非課税」と思われる方が多いのですが、それは誤りです。

あくまで「受取人が受け取った保険金の合計額」に対して、法定相続人の数に応じた限度額を適用します。


たとえば妻が2つの契約から合計1,500万円の保険金を受け取り、子が別の契約から800万円を受け取った場合、全体では2,300万円の保険金になります。

このうち、1,500万円までは非課税枠の範囲内ですが、残る800万円については課税対象となります。





■ 注意すべき点



まず、受取人が法定相続人でない場合(たとえば孫や内縁の配偶者など)は、その人の受け取る保険金には非課税枠を使うことができません。

また、相続を放棄した人も、非課税限度額を計算するうえでは「法定相続人の数」に含めて構いません。


さらに、複数の人が受取人になっている場合には、支払われた金額の割合に応じて非課税額を按分する必要があります。





■ 弁護士からのコメント



生命保険の非課税枠は、契約数ではなく「受取人が誰か」で決まります。

そのため、保険の受取人を誰に指定するかが、後の相続税負担を大きく左右します。


生前の段階で、契約内容を整理し、誰がどの保険金を受け取るのかを確認しておくことが大切です。

また、保険金を含めた財産全体のバランスを考え、遺言書や家族信託などの制度を利用しておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。





■ まとめ



生命保険金の非課税枠は、


  • 契約ごとではなく、受取人が受け取る金額の合計に対して適用される。
  • 複数契約があっても合算して計算できる。
  • 法定相続人以外の受取人には非課税枠を使えない。



という仕組みです。




生命保険は、残された家族の生活を支える重要な財産です。

せっかくの保険金が税務上の誤解で不利にならないよう、複数契約がある場合は、弁護士や税理士に早めにご相談ください。