「会話IQ」──成果を変えるのは“話す力”ではなく“会話の知性” | 大阪の弁護士•長野智子(智聖法律事務所)

「会話IQ」──成果を変えるのは“話す力”ではなく“会話の知性”

 

会話とは、「自分が話すこと」ではなく「相手と通じ合うこと」。

五百田達成氏の著書『会話IQ』を読んで、弁護士として日々多くの人と向き合う中で、あらためてその言葉の重みを感じました。

 

この本が教えてくれるのは、「どれだけ話せるか」ではなく「どれだけ通じ合えるか」という、現代のビジネスに欠かせない新しい知性=会話IQの重要性です。

 

 

 

 

■ 会話IQとは、「心の読解力」と「伝達力」の融合

 

 

著者は、会話IQをこう定義しています。

 

「相手の気持ちを読み取り、自分の意図をわかりやすく伝える力」

 

つまり、単なる話術やコミュニケーションスキルではなく、人の感情を理解し、適切に言葉を選ぶ知的な力のこと。

 

ビジネスの現場では、数字や論理よりも、「あの人には話しやすい」「この人は分かってくれる」と感じてもらえるかどうかが、成果を左右します。

弁護士である私の仕事でも、クライアントとの信頼関係はまず「話の温度を合わせる」ことから始まります。

 

 

 

 

■ 「聴く力」がある人は、会話の主導権を握っている

 

 

本書の中で特に印象的なのは、

 

「聞くことは、相手の世界に入ること」

という言葉です。

 

私たちは「話すことで印象を残す」と思いがちですが、実際には、聞く姿勢こそが信頼を築く最大の要素です。

相手の感情をそのまま返す「ミラーリング」や、「なるほど」「それは驚かれたでしょうね」といった小さな共感の言葉が、相手の心をほどいていきます。

 

営業・交渉・面談・チームマネジメント——どの場面でも、「聴く力」は最強の武器です。

 

 

 

 

■ 「正しさ」よりも「届き方」

 

 

五百田氏は、「正しいことを言っても伝わらなければ意味がない」と説きます。

これは弁護士としても痛感する部分です。

 

法律的にどんなに正しくても、依頼者や裁判官に伝わらなければ結果は変わりません。

同じように、ビジネスの現場でも、相手の理解のレベルに合わせて話すことが、成果を左右するのです。

 

伝えるとは、「論理を並べること」ではなく「相手の中で意味を生むこと」。

その一歩先に、“届く会話”があります。

 

 

 

 

■ 会話IQを高める3つの実践

 

 

  1. 「感情→事実→提案」の順で話す
     いきなり結論を出す前に、「どう感じたか」から共有すると相手の防御が解ける。
  2. 相手の言葉を要約して返す
     「つまり、こういうことですね」と返すだけで、共通理解が生まれる。
  3. “勝つ”より“納得してもらう”
     議論の目的は勝敗ではなく、信頼の構築。最終的に「この人とならもう一度話したい」と思われることこそが成果。

 

 

 

 

 

■ 終わりに:AI時代だからこそ問われる「会話の知性」

 

 

AIが進化し、情報や分析は容易に得られる時代。

だからこそ、**人間にしかできない「会話の知性」**が価値を持ちます。

 

相手を理解し、場の空気を読み、最適な言葉を選ぶ——。

それは感情に寄り添う力であり、他者と協働する力であり、そして何より「人を動かす力」です。

 

弁護士として、そして一人のビジネスパーソンとして。

『会話IQ』は、成果を変えるのは知識でも話術でもなく、**“相手に届く言葉を選ぶ力”**なのだと教えてくれます。