成果を先に祝う「予祝」という考え方
「予祝(よしゅく)」という言葉をご存じでしょうか。
直訳すると「前もって祝う」という意味で、まだ成果を得ていない段階で、あらかじめお祝いをすることを指します。
一見すると、少し浮かれた習慣のように感じるかもしれません。
「まだ結果も出ていないのに祝うなんて…」と、私自身も正直なところ最初は抵抗感がありました。成果を願うのであれば、その前に努力する方が大事なのではないか、と。
しかし調べてみると、この「予祝」は古くから我が国を含め、世界各地で行われてきたものであることがわかりました。たとえば豊作を祈るための豊穣祭。作物の収穫を待たず、先に実りを祝うことで「必ず収穫がある」という前提を心と共同体に刻み込み、結果的に人々の労働意欲を高め、協力を強める役割を果たしてきました。
現代でも、合格祈願や安産祈願など「まだ訪れていない未来に向けて先に祝う」習慣は私たちの生活の中に自然と存在しています。
心理学的にも、予祝には意味があるそうです。
人間の脳は「想像したこと」と「実際の体験」とを区別しにくい性質を持っています。
先に成功をイメージして喜びを味わうことで、脳はすでに成果を得たかのように反応し、その達成に必要な行動を選びやすくなると言われています。
法律実務における予祝の意義
私の仕事でも、予祝的な考え方は無意識のうちに役立っています。
たとえば、訴訟の準備や交渉の場面。
- 裁判の勝訴を信じながら戦略を練る
- 依頼者に良い結果が訪れると想定して準備を整える
このように、結果がまだ出ていなくても、先に「成功をイメージして行動する」ことで、冷静かつ効率的な判断ができます。
また、依頼者の不安を和らげ、前向きに行動してもらう心理的効果もあります。
つまり、予祝は単なる「浮かれた前祝い」ではなく、成果を引き寄せるための心と行動の整え方なのです。
私自身も、初めは「浮ついたこと」と思った予祝ですが、「成果を確実にするための内面的な仕掛け」と捉えると、とても有効であることがわかりました。
皆さんも、まだ手にしていない未来を先に祝うことで、自分自身の行動を整え、目標に向かって進むきっかけとしてみてはいかがでしょうか。
