東京 vs 大阪:家賃で見る“住みやすさ”の差 ― 起業家・働き手にとっての意味 | 大阪の弁護士•長野智子(智聖法律事務所)

東京 vs 大阪:家賃で見る“住みやすさ”の差 ― 起業家・働き手にとっての意味


拠点を東京にするか大阪にするか、あるいはどちらかを住まいに選ぶかを考えるとき、「家賃」は非常に重要な要素です。月々の固定費が大きく影響するため、事業コストだけでなく生活のコスト、キャッシュフローにも直結します。ここでは、東京と大阪の家賃相場をできるだけ最新データで比較し、それを起業家がどう読み取るかを整理します。

最新の家賃相場データ

以下は複数の情報源から拾い集めた東京と大阪の家賃相場の実例・平均値です:


  • 東京全体の賃貸住居の平均月額家賃は、約 78,000円。大阪では同様の物件で約 62,000円。この差は東京が大阪よりおよそ 20〜25% 高い水準。  
  • 東京・23区内ワンルーム(1R、20〜25㎡程度、駅徒歩10分以内)の家賃相場:最高は港区で112,300円。他にも新宿区・千代田区・中央区などで9万円以上の区が複数。最安クラスでも葛飾区などでは約64,600円あたり。  
  • 大阪市中心部(梅田、難波など)でのワンルーム〜1K/1DKの家賃相場は、5〜8万円、また中心に近い物件では1LDK等で70,000〜90,000円になることもあり。郊外ではワンルームで4〜5万円台の物件も多い。  
  • 東京23区内の1LDK物件では、港区など高級エリアで23万円前後という例もある一方で、大阪市北区・中央区などでは1LDKが10〜11.9万円あたりの地域。  

家賃差がもたらす経営・生活への影響

これらのデータを踏まえて、起業家や働き手にとっての意味を考えてみます。

家賃がキャッシュフローに与える影響


  • 起業初期は固定費をなるべく抑えることが重要。東京で港区・新宿区等の高家賃エリアにオフィス兼住居を構えると、それだけで毎月十万円〜数十万円の差が出る。大阪の中心部・郊外を利用すれば、その差を節約できる。
  • 住居コストが上がると、それだけ可処分所得が減る。従業員の賃金や福利厚生に割ける余裕も小さくなる可能性。




人材募集・維持コストとの関連



  • 若手社員やスタートアップ関係のスタッフは住居コストを重視する傾向が強い。東京で高家賃のために通勤時間が長くなったり、住居が狭くなったりするなら、大阪という選択肢が魅力的。
  • 大阪なら比較的住まいに余裕を持たせられることが多く、住環境の満足度が高まれば、離職率が低くなる可能性。




法務・契約リスクの観点



  • 高級な物件を借りる場合、敷金・礼金・保証金など初期費用がさらに膨らむ。東京・人気エリアではこれらの費用が高額。キャッシュフローを圧迫する要因となる。
  • 入居契約の内容、更新料の有無・負担条件などがエリアやオーナーにより異なるため、家賃だけでなく契約条項を精査すべき。

大阪を拠点にするメリット(家賃の視点より)

東京と比べたとき、大阪で拠点を置いたり住居を構えたりすることには次のようなメリットがあります。

  1. 初期コストの低さ
     家賃が抑えられる分、起業準備段階のオフィス兼住居など固定費を抑えられるため、資金繰りの余裕が生まれやすい。
  2. 生活の余裕
     同じ家賃を支払うなら、大阪の方が住居の面積、駅からの距離、築年数などで条件が良い物件を選べる可能性が高い。
  3. 従業員・スタッフへの配慮
     東京での給料が高くても、住居コストの高さで手取りの満足感が低くなる。大阪拠点ならスタッフの生活の質を保ちやすく、採用時の魅力になり得る。
  4. 柔軟な契約戦略が取りやすい
     郊外や中心地以外の物件が充実しており、条件交渉や初期費用での妥協がしやすいケースが多い。東京だと人気地域・高競争で交渉の余地が小さいことが多い。

注意点・デメリット

ただし、家賃が安いからと言って無条件で大阪が有利というわけではありません。以下の点も考慮が必要です。

  • 家賃以外の交通費や時間コストの増加(通勤距離・アクセス)
  • 利便性・ブランド力・取引先・顧客アクセスの点で、東京中心部に近い地域を選ぶと家賃差が縮まる
  • 不動産市場や契約慣行の違いにより、更新料・管理費・共益費など諸経費が家賃以外でかさむことがある

弁護士としてのアドバイス:契約チェックのポイント

家賃交渉・物件選びの段階で、以下の法務チェックを忘れないようにしてください:

  • 敷金・礼金・保証金などの初期費用の条件
  • 更新料・更新時の賃料見直し条項
  • 契約期間・解約通知期間・解約違約金
  • 退去時の原状回復義務の範囲/費用負担
  • 管理費・共益費・修繕積立金など賃料以外の費用項目の明記
  • 建物・設備の状態・築年数・耐震性・法令遵守(防火・建築基準など)

これらを契約前にしっかり確認できていれば、家賃を抑えるメリットを最大化しつつ、後のトラブルを防ぐことができます。

結論

東京と大阪の家賃を比較すると、東京が大阪より 20〜30%程度高いケースが多く、特に都心・人気エリアほど差が大きくなっています。

起業家やスタートアップにとっては、この差は非常に重要で、固定費を抑え、キャッシュフロー・利益率を改善する大きな要素となります。

もし事業モデルや生活スタイルが許せば、大阪を拠点とすることで住居コストを抑えながら、快適で実用的な暮らしをすることが可能です。東京を選ぶ場合も、郊外や駅から少し離れた場所を選ぶなど、家賃のバランスを取る工夫をすることで、住みやすさと働きやすさを両立できます。