「働く個人」にこそ法人を──弁護士が解説する『新・貧乏はお金持ち』に学ぶマイクロ法人のすすめ
はじめに:なぜ今、起業家こそ“法人設立”を考えるべきか?
日本社会では、雇われることで安定を得るという昭和的モデルが崩れつつあります。手取りが減り、社会保険料や税負担は増す一方。そんな中で、いかにして“自分自身”を守り、資産を最大化し、自由に生きるかが最大のテーマです。橘玲さんの『新・貧乏はお金持ち』は、まさにその答えを提示する一冊です。
新・貧乏はお金持ち』とは?
橘玲さんは、2009年に刊行した『貧乏はお金持ち』の内容を、2025年の現在の制度や社会情勢に合わせて全面改訂し、「令和スペシャルエディション」として再出版しました 。
本書が指摘する日本の構造的課題は次の通りです
- 正社員モデルの崩壊、年金制度の不透明さ、非正規雇用の拡大
- インフレや社会保険料の増加で、額面給与が上昇しても「手取り」が減っている現実 。
その背景のもと、橘さんが提示する “生存戦略” が、「雇われない生き方」──特に「マイクロ法人」の活用です 。
マイクロ法人とは? なぜ今“有利”なのか?
1. マイクロ法人とは?
「マイクロ法人」とは、著者が提唱する、事実上“1人”またはごく少人数で運営する小さな法人のことです。法人という“もう一人の人格”を持つことで、個人と法人それぞれの制度的メリットを享受できます 。
2. 税制メリットの逆転
2009年当時は法人税率が高く、あえて法人を赤字化して個人で納税するのが主流でしたが、現在では法人税率が引き下げられた結果(たとえば800万円以下で15%程度)、法人で納税する方が個人より有利な場合が多いのです 。
3. 社会保険料の節約
かつては法人化によって社会保険の負担が増え、個人事業主のほうが有利とされました。しかし2010年代以降の制度改変により、マイクロ法人でも扶養家族や報酬調整によって社会保険料を抑えられるメリットが生まれています 。
「磯野家の節税」──わかりやすい“法人活用”の事例
本書では、『サザエさん』の磯野家を例に、マイクロ法人のメリットをユーモラスかつ具体的に解説しています。たとえば、波平さんが自宅で小さな法人を設立し、家族を役員として迎え入れることで、法人と個人の負担を最適化するといった構成です 。
このような身近な事例は、制度や理論だけでなく「自分もやれそう」と感じさせてくれる点が魅力です。
起業家・フリーランスへ──、弁護士として説得力を持って後押しする理由
- 法的な安心感
法人には独立した「法的主体」としての地位があり、個人財産の分離や対外信用を高める力があります。 - 制度設計の柔軟性
役員報酬を調整し、制度的に最もコスト効率の良い形で所得をコントロールできます。 - 節税・資金調達の可能性
補助金や融資制度の多くが法人向けに整備されています。本書でも「補助金を受け取る」コラムが追加されています 。 - 長期的な信頼構築
法人名義での信用蓄積が可能で、将来のパートナーやクライアントからの信頼獲得にもつながります。
具体的アドバイス:法人設立前に弁護士として確認すべきポイント
- 法人の目的・ビジネス内容を明確に
将来の業務形態に合わせた形態選択(株式会社、合同会社など)を。 - 報酬・分配設計
社会保険料と税負担のバランスを考えた最適設計を。 - 役員構成の設計
家族やパートナーを取締役に据える場合の法的リスクとルールを整理。 - 会計・申告体制の整備
法人としての帳簿、決算、税務申告を確実に運用する体制づくり。
まとめ:法人設立は、起業家の“生きる道具”になる
橘玲さんの本気の提案──「法人という別人格を持ち、“雇われない生き方”を手にする」──は、単なる節税術にあらず、現代における自由と生存を獲得する手段です。税制や社会制度の変化を冷静に取り込み、戦略的に活用することこそが、賢い選択です。
弁護士として強く後押しします――起業しようとしている方、ご自身の「自由」と「未来」のために、“法人設立”という選択肢をぜひ検討してください。
