【激動の日米関税交渉】に学ぶ、交渉術と意思決定の極意
こんにちは。弁護士の長野智子です。
今日は、8月4日の日経新聞朝刊に掲載された記事「激動 日米関税交渉」をもとに、起業家の皆さんに向けて、交渉の場でのヒントや注意点をお伝えしたいと思います。
■ 何が起きたのか?──日米交渉の現場から
記事によれば、現在の政権下、赤沢亮正経済大臣(64)が、米国側と関税問題で激しい交渉を繰り広げました。
- 米国閣僚から「関税を下げろ」「大統領の言っていることがわからないのか」と怒号が飛ぶ
- それに対し、赤沢大臣は「関税より投資だ」と譲らず
- アポなしでワシントンに押しかけ、交渉担当者(ベツセント、ラトニック)との面会を重ねる
- 「来週また来る」と言って訪問を繰り返し、信頼を築いた
- 狙いは“権限を持つトランプ大統領”。その周辺のキーパーソン「ラトニック」への集中戦略で交渉を進めた
- 合意は成立したものの、文書化されておらず、内容に食い違いも残る
■ 起業家が学ぶべき3つの教訓
この交渉の流れには、企業経営や事業交渉に通じる重要なエッセンスが詰まっています。
1. 【本当のキーマンを見極める眼力】
「ラトニック一本槍作戦」という表現に象徴されるように、赤沢大臣は形式的な権限より、実質的に決裁を通す人物に的を絞りました。
👉これは、ビジネス交渉でも重要です。
「名刺の肩書」ではなく、「実際に話を通す人物」は誰かを見極める力が成果を左右します。
2. 【根回しと信頼構築は地道な往復から】
「来週また来る」「また来たのか」と言われながらも足繁く通い、関係を築いた姿勢は、まさに**“地道な関係構築”の王道**。
👉メール一本、オンラインMTG一回で契約が取れる時代だからこそ、
**「一貫性」「誠実さ」「熱意」**は信頼を勝ち取る最大の武器になります。
3. 【合意書を作らないリスク:口頭合意はトラブルのもと】
今回の交渉では合意文書が作成されていないため、「双方の説明に食い違いが残る危うい状況」に。
👉ビジネスでもよくあります。「言った・言わない」「そんな合意はしていない」
だからこそ、どんなに関係性が良くても、合意内容は必ず書面化する。
これは契約実務の鉄則です。
■ 最後に:強気と誠実のバランス
赤沢大臣のように「一歩も引かない」姿勢は時に必要です。
しかしそれが成立するのは、狙いが明確で、関係構築があり、着地点を見据えている場合に限ります。
起業家の皆さんが、交渉や契約の場で誠実かつ冷静に、そして戦略的に動けるよう、
こうした実例をヒントにしていただければと思います。
ご不明な点や、交渉・契約に関するご相談があれば、いつでもお声がけください。
弁護士 長野智子
ビジネス法務歴26年
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