フリーランス法違反 初勧告〜公正取引委員会が、小学館と光文社に | 大阪の弁護士•長野智子(智聖法律事務所)

フリーランス法違反 初勧告〜公正取引委員会が、小学館と光文社に




2024年11月1日に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(通称:フリーランス法)は、フリーランスの取引環境を適正化し、保護することを目的としています。この法律に基づき、公正取引委員会は、初の勧告として小学館と光文社に対し、報酬の不払いに関する指導を行いました。これは、出版業界におけるフリーランス作家との契約慣行に対する重要な指摘とされています。


目的:取引における不公正な行為からフリーランスを保護し、報酬・契約条件の明確化を義務づけること

対象:「特定受託事業者」と呼ばれる、労働者に該当しない個人の業務委託先

適用関係:下請法や独占禁止法で十分に保護されてこなかった個人委託(フリーランス)との取引に焦点

🔎【具体的な適用条文×事例解説】

第3条【契約内容の明示義務】

事業者がフリーランスに業務を委託する際は、「報酬額・支払期日・納期」等の契約条件を書面又は電子メール等で明示しなければならない。

📝 事例1:曖昧な委託メール

X出版社がYライターに「来月までに原稿1万字お願い」とだけメール依頼し、報酬額や支払日を明示しなかった。

納品後も支払いがなされず、フリーランス法違反を主張して公取委に相談。

解説:このケースは、契約条件の明示義務違反。メール等で報酬額・納期・支払日を明記する必要があり、違反は勧告・公表・命令の対象となります(※命令違反には50万円以下の罰金)。

第4条【報酬の支払義務】

納品が済んだにも関わらず、報酬を「不当に遅延・不払い」することは禁止。

事例2:成果物を利用しながら報酬未払い

Z社はAデザイナーからロゴデザインを納品後、既に社内で使用を開始。

しかし「クオリティが期待より低い」と支払いを渋り、結局半年以上未払い。

解説:成果物を利用している以上、報酬支払いの正当な遅延理由とはならない。民法上の債務不履行+**フリーランス法違反(不払い)**として、報告命令・是正勧告の対象になります。

第5条【不当な発注取消・返品の禁止】

正当な理由なく一方的に発注を取り消したり、納品済みの成果物を返品する行為は禁止。

📝 事例3:直前キャンセルによる損害

BカメラマンがC広告代理店の指示で撮影準備を進め、機材レンタル等に費用をかけていた。

前日になって「予算削減で案件中止」と連絡が入り、支払い拒否。

解説:委託内容に着手していた場合、正当な理由なき取消はフリーランス法違反+民法709条の不法行為責任も成立し得る。公正取引委員会への申告で是正指導を受ける可能性あり。