君を愛したひとりの僕へ ハヤカワ文庫
作者 乙野四方字
あらすじ
並行世界の存在が実証された世界。
両親の離婚を経て父親と暮らす日高暦(ひだか こよみ)は、父の勤務する虚質科学研究所で佐藤栞という少女に出会う。
互いにほのかな恋心を抱くふたりだったが、親同士の再婚話がすべてを一変させた。
もう結ばれないと思い込んだ暦と栞は、兄弟にならない世界へ跳ぼうとするが……彼女がいない世界に意味はなかった。
『僕が愛したすべての君へ』と同時刊行。
感想~ネタバレなし~
先に書いた僕が愛したすべての君へと並べて平詰みされていたの発見し、表紙のきれいさと帯に書かれた「あなたはどちらから読む?」の文字と、並行世界を題材にした内容に迷わず購入。(^^)
特に下調べもせず、こちらから読み始めました。
どちらから読んでも内容は同じですが、読後感が違うと思いました。
おすすめは『君愛』→『僕愛』ですかね。スッキリと終われると思います。
ただ、わたくしはもう一生味わえない『僕愛』→『君愛』で読める方々を羨む気持ちもありますが(^_^;)
元の世界から分岐した並行世界がいくつも存在し、それは泡のように分裂して増えていく。
一つ二つ隣の世界では元の世界との差異はほとんどなく、朝食にパンを選んだか、ご飯を選んだか程度だが大きく移動すると、まるで違う人生を歩んだ自分の意識に入ってしまう。
普段の生活では数個隣への移動はたまに起こるが、大きく移動することはほとんどない。
そんな中、虚質科学研究所では並行世界間移動を可能にした装置の開発が進められていた。
一見すると難しそうな設定だが、よく作り込まれていて違和感なくこの世界間へ没入することが出来ました。
幼い主人公たちの恋愛にほのぼのする前半と、その後起きたある事故をきっかけに並行世界の研究に没頭し、最後に大きな決断をする主人公。
上手にもう一作へとつなげる最後でした。
是非二つ合わせて読んでいただきたいです。(^^)
この後はネタバレ有りの感想になります。
大分県を舞台にしており、二人の行く場所に馴染みある場所が多くて楽しく読めました(^^)
設定もしっかりしていると感じたし、並行世界が現実のもののように感じられました。
交差点の幽霊になってしまった栞のために奮闘する暦。その姿は純愛そのもので、何とか助けたいと思い研究を進めに進めた結果、栞と出会わないことが栞を救う唯一の手段だと気付いた時には切ない気持ちになりました。
まさかタイトルの【君】が栞ではなく和音だとは思わなかったけど、栞と出会わない世界の、和音を愛したひとりの僕へと思いを託す最後のシーンはとても好きなシーンになりました。
この世界の和音は人生の全てを暦の研究に捧げていて、暦が時間移動する世界では和音を愛しているとは聞かされなかったが、おそらくどちらの和音も幸せだったんじゃないかと思いました。
和音の人生にはどんな形にせよ暦がいて、それはどれだけ大きく並行世界を移動しても変わらないのではないかと。
また『君愛』を読み返したくなりました(^^)
同作者の小説感想です↓
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