僕が愛したすべての君へ ハヤカワ文庫

作者 乙野四方字

 

あらすじ

 

並行世界の存在が実証された世界。

両親の離婚を経て母親と暮らす高崎暦(たかさき こよみ)は、地元の進学校に入学した。

 

勉強一色の雰囲気と元からの不器用さで友人をつくれない暦だが、突然クラスメイトの瀧川和音(たきがわ かずね)に声をかけられる。

 

彼女は85番目の世界から移動してきており、そこでの暦と和音は恋人同士だというのだが……並行世界の自分は自分なのか。

『君を愛したひとりの僕へ』と同時刊行。

 

感想~ネタバレなし~

君を愛したひとりの僕へと一緒に購入し、『君愛』→『僕愛』の順番で読みました。

君愛と違い、こちらでは母親と共に暮らすこと選んだ暦の幼少期から物語が始まります。

この物語では「並行世界の自分は自分なのか」というテーマで話が構成されていると感じました。

並行世界の存在が、ごく普通の恋愛の色を変えてしまう。

ひとつ隣の世界の彼女を、元の世界の彼女と同一視出来るのか。

ひとつ隣の世界の僕を彼女が同じように愛するなら、それを受け入れることが出来るのか。

現実世界なら生まれえないそんな疑問に真剣に向き合う主人公の姿に、自分だったらどうかと思わず重ね合わせていました。

 

『君愛』→『僕愛』の順に読むと、張られていた伏線がうまく回収されていき、何度も二つの作品を行き来してしまいました(^^)

 

とても読みやすいので、是非二つ合わせて読んでみてください。

 

 

 

この後はネタバレありの感想になります。

 

 

 

同一の人物でもいくつか離れた世界では全く別の人生を歩んでいる。

その人を同じように見て、同じように愛せるのかという問題は非常に難しいと感じました。

 

作中でも結婚式ではIPをロックしたいという涼に暦は自身が悩み考え出した、可能性ごと愛するという話を聞かせていました。

 

それは、その世界ではなかなかできる考え方ではないと思うし、わたくしにはおそらく出来ないと思います。

 

『君愛』で並行世界の存在が当たり前の世界に触れ、『僕愛』でその世界での当たり前の疑問を、深く当たり前のように考えることが出来、とても楽しめました。(^^)

二作で完結する、とても素晴らしい作品でした。

 

二作を通してタイトルの【君】は和音だったということも予想をいい意味で裏切られました。

 

両作の251ページでタイトルが出てくるのですが、無理やり感は無く、自然でかつ印象的に書かれていて、最後の最後まで楽しむことが出来ました。

 

周りにおすすめしたい作品です(^^)

 

同作者の小説感想です↓

ラテラル~水平思考推理の天使~感想

君を愛したひとりの僕へ感想