叔母の三回忌だった


叔母はいつもてきぱきとしていて、

段取りめいたことや、難しいことは

叔母に任せておけば安心、

というような人だった


だから

叔父と2人の従兄弟は

ちょっと間の抜けた、というか、

いわゆる、ぐーたらな人だった


でも叔母が亡くなって

3人ともずいぶんしっかりした

と思う



今年の9月の3回忌、

もう秋口だというのに、異様に暑い日だった。

セミが再び鳴いていた。


親戚たちは遅れて集まり、

お経も定刻で始まらず、

食事どころも予約がなく、

といった具合にぐだぐだで終わってしまった。

もう秋口だというのに、異様に暑い日だった。

セミが再び鳴いていた。



祖母が言った


あのこがいたら、今日の3回忌も

もっと段取りよくすすんだのにね。

自転車をこいでいる音がする。

僕のペダルか。君のペダルか。


金色の空に向かって、走っていた。

絡まるチェーンはパスタ。

サドルはブロッコリー、もしくは、カリフラワー。

ブレーキは、ネギ。

でもまだここは、光もなく。

安全ライトだけが照らす流れる石たち。

海底だ。さながら。


結局、僕らは、

夜と夜中と夜明けの間に、

体力を消耗した。



もう十五年の昔の話。

どうして急に思い出したのだろうか。


気にもせず、老けてしまった君が、

海鮮サラダを食べている。

ドラえもんみたいに

あたし

都合のいい女でいいや



彼女は、思った。

レストランで食事をした。

客は、僕たちを入れて4組だった。

みな夫婦か、恋人同士だった。

店は音楽もかかっていなかったから、

やたら静かだった。

ナイフでローストビースをちょこっと切る時ですら

音を立てないよう気を遣わなければならなかった。


しかし、一番奥の席のカップルだけだ、

そんなことはお構いなしに、大きな声で話をしていた。



男が言う。


もう一生会わないってことは、君が死んだってことと同じじゃないか。



女が言う。


じゃあ死ぬってことは、君ともう別れる、ってのと同じ程度のものなのね。



ごく。ごく。ごく。ごく。

そこにいた全ての男が、グラスの酒を飲み干したようだ。

強烈な音楽がかかっている


ホールの前半分は

踊りくるうたくさんのひとたち

ホールの後ろ半分は

ぎょうかい関係者のひとたち


そのまた後ろにいる僕らは

冷静なふりしてかなりぽかーんです


次の曲いく瞬間の、一瞬の、なにもない、その、あれが、

僕らを真空にするのです


まっさらです

計算のできない脳みそ

というか脳みそが消えてしまったのかも

しれない


その証拠にほら、

Tシャツの背中にストライプの線が。

よっかかった空調ダクトが汚れていたようです

メールぽちぽち

わたしは本日たんじょうび

だから会いにきて

返事

あれ、こないだもそんなこと言ってなかった?

そんなことないですー

の日々です


わたしは毎日たんじょうび

そしたらほんとのたんじょうび

忘れました

あぁ肩パット

言い訳してもしかたないんだけどさ

今はないんだねみんな

ひさびさにこういうとこ来たからさ

知らなかったよそうゆうの

パッションな色はまぁ

ぎりぎり目をつぶれるとしても

というかするしかない

だけどねだけどね

あぁ肩パット


とびっきり幸せになる呪文、教えてください。


と、女の子は、裏山にある大きな石に、お願いするのでした。



そんで答えがないまま、30年経ちました。

今年で35歳の男

24歳の女を

つれて街にきたサーカスみたいなのを見に行った


「わたしは、脳みそをとりました

 いまこの右手にあるのが、そう、それ」


そんなわけないじゃん

と 思いながら、男はあえてここは純粋な顔してみる

へー、脳みそって、結構カラフルなんだね

あー、ほんとだー

その笑顔が気持ち悪いと女は思った