こんにちは。 永松昌泰です。
続きです。
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うつ病患者が激増した真の理由
みずからも精神科医である著者は、
慎重に言葉を選んでいるので、私が意訳しよう。
つまり、巨大製薬会社が、巧妙なうつ病キャンペーンを仕掛けて、
新たな”うつ病マーケット”を世界中に生み出してきた。
そこで新薬を売りさばいて2兆円以上もの暴利をむさぼってきた副産物こそ、
うつ病患者の激増という世界的な現象ではないのかというのである。
にわかに信じがたいかもしれない。
しかし、著者は欧米の論文や報道を渉猟し、
読み込んだ末に、かような結論に至った。
日本のメディアではほとんど伝えられないが、
この問題は、欧米でたびたび大論争を巻き起こしている。
それゆえイギリスでは軽傷のうつ病には、
日本で最も売れている「パキシル」のような抗うつ剤を
最初から使ってはならないという方針が、
はっきりと打ち出されているのである。
しかし、著者は抗うつ剤の効果を否定しているわけではない。
うつ病を減らすための方策も具体的にいくつか提案しており、
そのひとつが企業の「残業対策」で、
まずは残業時間を減らすことというのは、
なにやらリアルな説得力がある。
NHK取材班著 「NHKスペシャル うつ病治療 常識が変わる」(宝島社1200円)
は、話題になったテレビ番組の取材をもとに書き下ろしたドキュメントだ。
ここでも、うつ病治療の問題点が列挙されているが、
一番ショッキングなのは、日本の治療現場の惨状である。
ひとことで言えば、
抗うつ剤の使いすぎと
それに反比例するかのような診療時間の短さが、
目に余るのである。
手っ取り早く稼ごうと、
”駅前クリニック”開業へとなだれ込む精神科医たちの姿には、
怒りを通り越して、情けなさすら感じる。
ちなみに、ダメ医者の見分け方が5つあげられているので、
ご紹介しよう。
①薬の処方や副作用について説明しない。
②いきなり3種類以上の抗うつ剤を出す(初診、あるいは最初の処方で)。
③薬がどんどん増える。
④薬について質問すると不機嫌になる。
⑤薬以外の対応法を知らないようだ。
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ふーーーーーー とため息をつきたくなるような、記述です。
今まで、たくさん、こういう惨状の犠牲者のクライアントに会ってきました。
そして、暗澹たる思いがあります。
しかし、当然ながら、そんな惨状ばかりがあるわけではありません。
素晴らしい先生方もいらっしゃいます。
残念ながら、多いとは言えないところもありますが・・・・・
この後の書評では、旧知の神田橋先生が登場します。
つづく