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novels by naecha

「明治東亰恋伽」の小説を書いています
初心者ですが、温かい目で見てください

翌朝、春草様の様子を見に祭壇の間に行くと、扉を開けるや否や何かが飛びかかってきた。服に爪を立てて必死にしがみつくのは春草様の使い魔である。いや、この場合は使い魔に意識を移した春草様と言った方が正しい
「外に出してくれるんだろ?」
春草様はさも当たり前のように尋ねる。こうなっては仕方ないと私は渋々、子猫を抱き上げた



とは言うものの。私にも罪悪感という物はあるわけで
「春草様、戻りませんか?」
制服に着替える間も、城の庭を通る間も、今こうして通りを歩いている間も、私は迷っていた。鞄の中で丸くなっている子猫に話しかけたが、子猫は知らないとばかりにあくびをする。これ以上押し問答を続けていると、私が遅刻してしまう。諦めて校門への道を再び辿りだした
教室へ入るや否や、春草様は鞄から顔を出してきょろきょろと物珍しそうに辺りを見回していた。それを目敏く見つけたのが、私の友達である
「芽衣、その子猫どうしたの?すごく可愛い!」
「え?え~と、……………そう!知り合いから1日世話してほしいって預かったの」
当たらずとも遠からず。冷や汗をかきながら弁明した私に友達はしゃがみこみ春草様と目線を合わせた
「へえ~……触ってもいい?」
「え、う、うん…たぶん」
嫌がるかなと思っていたけど、春草様は大人しかった。頭を撫でられて気持ちよさそうに目を細める。子猫の周りにはいつしか人だかりができていた
このままだと春草様が押しつぶされる。そう直感した私は子猫を机の上に下ろした。お行儀よく座る子猫に女子たちはメロメロだ。名前を尋ねられて、私は全く考えていなかったことに今さら思い至り、慌てた
「えーと……ハル!」
春草様のお名前からとって『ハル』。何のひねりもないネーミングセンスに春草様が一瞬ジトッとした視線を送る。即興で考えたのだから仕方がないということを理解してほしい
「ハル~、おいで~」
甘い声で誘い出す友達の元に春草様はトコトコと歩いた。すりすりと頭を寄せる可愛らしい仕草に女子たちはさらに夢中になる
始業の鐘が鳴っても女子たちは春草様と戯れていた。教師が入ってくるとようやく自分たちの席に戻り、春草様はやれやれといった様子で私の膝の上で丸くなった
『疲れた……』
私の頭の中に春草様の声が直接響く。声を出したら怪しまれるからだろう。それだけ言うと春草様は眠ってしまった





HRが終わると生徒達はぞろぞろと移動し始める。1時間目は特別教室で使い魔を扱う授業を行うのだ
「春草様、食べちゃ駄目ですよ」
さっきまで寝ていたはずなのに。いつの間にか目を覚まして使い魔に与える餌を春草様がじっと見ている。ついつい心配になって声をかけたら、春草様はフンと鼻を鳴らすと顔を背けた
『真面目に授業を受けないと落第するよ』
よけいなお世話だ。こうなったら優等生かと思うくらいに真面目に話を聞いて、春草様を見返したい。私はいつになく真剣な面もちで教師の顔を見た
「今日は実際に使い魔を創り出してみましょう。くれぐれも人間は創らないように」
教師の言葉に皆くすくすと笑う。さすがに誰もそんなことしないだろう。私の足下で春草様が耳をぴくぴく動かしていた
「まずはそれぞれ自分の創りたい動物を創ってみましょう。創れなくても結構です」
『元から創れない動物もいるけど』
教師の言葉に合わせるように春草様がぼそっと付け足した。目でどういうことかを問うと彼はゆらりと尻尾を揺らす
『さあ?やってみれば分かるんじゃない?』
むう、春草様には教師の言葉の意味が分かっているらしい。それが何なのか気になるけど、でもやってみたら分かるらしいから、私は精神を集中させた
(う~ん、何にしよう?猫にしようかな??猫、猫………春草様とお揃いの白猫……)
頭の中で念じながら魔法陣を創っていると、ばふっと黒い煙を上げて魔法陣が壊れてしまった。何があったのか分からずに呆然とする私の周りでも時々黒い煙が上がる。その一方で小鳥だったりトカゲだったり、うまくいった人もいる。全員が一通り終えた頃、教師がニヤニヤとした顔で教室を見回した。彼はわざとらしくポンと手を打つ
「ああ、1つ言いそびれていましたが、大きな動物や哺乳類は難易度が高いですよ。挑戦するのも自由ですけど、無理せずに自分の力に合った動物を創ってくださいね」
騙されたとばかりに生徒達はぶーぶー文句を言う。特に女子達は猫や犬、そして兎などといった可愛い生き物を創ろうとしていたらしく男子よりも失敗した人が多かった
私はと言えば、ちょっと悲しかった。春草様が初めて使い魔を創りだしたのは今の私よりも少しだけ年下だった頃で、最初から苦もなく子猫を創っていた。春草様の魔法がとても強いことは知っていたけど、今回のことで彼との力の差を改めて知らされた
しょぼんと俯くと翡翠色をした子猫と目が合う。明らかに落ち込んだ様子の私を見て春草様はため息を吐いた
『………リス』
「え?」
『君の場合、頑張ればリスぐらいは創れると思う。リスが嫌ならネズミでもいいけど』
「本当ですか?それとも、春草様が手伝ってくれるんですか?」
『俺は手伝うつもりなんてないから』
挑戦的に見上げられて俄然やる気になった。さっきよりも力を込めて魔法陣を創ると次第に光が集まりだした。もう一押し、と更に力を込めると光が強くなり、やがてぱっと弾けた。手を下ろすと、そこには手のひらに乗るくらいの小さなリスがちょこんと座っていた
「………で、きた」
呆然としたように呟く私の視線を辿った友人がわっと声を上げる
「芽衣すごーい!」
「え?なになに…可愛い!」
皆に見守られながら、感動の面もちで自分の使い魔に手を差し伸べると___ガリッと指を噛まれた
「痛ーーーい!!」
「芽衣ちゃん大丈夫!?」
「うわっ、血出てるよ……」
『創れても嫌われてるんじゃ意味ないよね』
心配する友人の声に混じって、すごく楽しそうな春草様の声が聞こえた